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フランスで同性婚したカップルが、役場が婚姻届を不受理とする根拠を問い、家裁に申立てを行ないました
2018年にフランスで結婚した日本人とフランス人の同性カップルが、本籍地である兵庫県尼崎市で婚姻届が受理されず、「同性婚を禁止した法律はなく、婚姻届を不受理とする明確な根拠がないため不当だ」として、神戸家裁尼崎支部に申立てを行ないました。
2016年からフランスで映画や舞台の俳優として活動する渡邉プロスペル礼さんと、脚本・演出家、映画監督の渡邉プロスペルコガリさん(ともに30代)。礼さんは関西の大学を卒業した後、英国の大学院で演劇を学んでいたときにコガリさんと知り合い、おつきあいするようになり、将来ともに生活することを考え、2018年12月、フランスで結婚しました。お二人の結婚式にはコガリさんの親戚や共通の友人が集まり、祝ってくれたそうです。「国に、そして大好きな人の家族に、私も家族の一員だと認められたことがうれしかった」と礼さんは語ります。結婚すると、家族手帳が手渡され、配偶者として滞在許可が発行されることはもちろん、病院に行くときも「私の妻です」とコガリさんが言えば、フランス語のコミュニケーションがスムーズではない礼さんへの付き添いも認められます。「法的に守られている感覚がいつもある」といいます。
一方、同性婚が認められていない日本では、礼さんは法的に「独身」で、コガリさんは「他人」として扱われてしまいます。一時帰国するときはいつも、コガリさんの身に手術など緊急の判断を要することが起きたらどうしようと考えてしまい、「楽しいはずの時間のそばにいつも不安がある」といいます。
昨年、日本で知人に「フランスで私たちは結婚しているんです」とコガリさんを紹介したところ、複数の人に冗談として受け流されたそうです。「衝撃でした。フランスでは一度も経験したことがなかった」。礼さんは深く傷つきました。「日本では法律で同性婚が認められていないからだ。ニュースなどで性的少数者に関する知識は増えても、同性婚が国民の共通認識や常識になっていない」
フランスでは2013年5月に「みんなのための結婚」と呼ばれる法が制定され、婚姻平等が実現しました。コガリさんは「フランスもまだ完璧とは言えません。しかし、制度は確実に人々の意識や生活を変えています」と語ります。
お二人は将来、子どもを持つことも考えています。しかし、日本に戻れば、お二人の子とコガリさんの親子関係はないことにされてしまいます。礼さんは「結婚を認めてもらうことがゴールではない。私たちの子どもが帰国したとき、『あなたの国だよ』と安心して暮らせるようにしたい」と語ります。
お二人は今年、日本の法令に基づき、礼さんの本籍地である尼崎市にフランスの婚姻証書と婚姻届を提出しましたが、受理されませんでした。尼崎市はその理由について、「民法は男女間を当然の前提としていて、受理は相当ではない」とした2014年の法務省の見解を根拠にしたそうです。市の対応を受けて、お二人は「同性婚を禁止した法律はなく、婚姻届を不受理とする明確な根拠がないため不当だ」として、神戸家裁尼崎支部に申立てを行ないました。
日本での婚姻平等(同性婚法制化)の実現を促すためです。
「結婚の自由をすべての人に」訴訟は5つの地方での一審判決が出揃い、現在は二審(高裁)と東京二次訴訟が進められているところです。すでに何十組の同性カップルが原告として参加していますが、今回のお二人のように、海外在住で原告にはなれないような方もいます。それでも何かできることをしたいと願い、こうして申立てというかたちで一石を投じたのだと思われます。いろんな方たちがそのように行動し、社会に議論を喚起していくことの意義は、決して小さくないと言えるでしょう。
京都産業大学法学部の渡邉泰彦教授(家族法)は「日本では、海外で同性婚をした日本人とパートナーの処遇について、実質放置されてきた」と指摘します。婚姻平等が実現した国では、すでに同性カップルの子どものことが議論の中心になっており、「日本の対応は周回遅れどころではない状況になっている」とも語っています。
参考記事:
「同性婚を禁止した法律はない」フランスで結婚の同性カップル 尼崎市が婚姻届受理せず裁判所に申し立てへ(関西テレビ)
https://www.fnn.jp/articles/-/598552
フランスで同性婚、帰国すると私は独身 消える「法で守られた感覚」
https://digital.asahi.com/articles/ASRB70535R99TLVB001.html