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【同性パートナーシップ証明制度】山梨県や板橋区が11月から導入、山口市が来年4月に導入へ
山梨県が「パートナーシップ宣誓制度」を11月から導入することを明らかにしました。制度を利用した県職員が扶養手当を申請した場合は支給する考えも示しました。
宣誓書受領証(パートナーシップ証明書)が交付されたカップルは、公営住宅に入居したり、医療機関で病状の説明を一緒に受けたりできるよう調整しているそうです。
長崎知事は「導入を皮切りに、性的マイノリティの方々への理解促進やサービスの拡大、安心した生活基盤の構築を図りたい」と述べました。
都道府県としてはすでに全国で14の都府県が制度を導入しています。また、同性パートナーがいる職員への扶養手当は、東京都や岩手県、鳥取県など11都県で認められています。山梨県もこれに続くことになります。
先日、同性パートナーを持つ北海道職員が扶養手当の支給などを求めた訴訟の一審で札幌地裁が原告側の訴えを退けるという残念な判決が下りましたが、そうした情勢も踏まえての判断だと思われます。
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10月1日から「パートナーシップ宣誓制度」を導入することを発表した香川県の池田知事は、14日の記者会見で、制度導入に伴う新たな県の施策として、宣誓書受領証(パートナーシップ証明書)の交付を受けたカップルが県営住宅に入居できるようにするなど婚姻関係に相当するものとして取り扱うこと、引っ越しをした場合に手続きが簡略化されるように市町と連携すること、民間事業者の自主性は尊重しつつも性的マイノリティへの職場での配慮などについて民間事業者等への普及啓発を行なうことをすることを発表しました。
県職員が宣誓を行なった場合は、県職員や教職員向けの住宅への入居を可能とするそうです。
役割分担を明確にするために、県は証明書の発行業務は行なわず、引き続き市町が担当するとしています。県は市や町の証明書を元に支援を行なう方針です。
県で宣誓した方たちはお住まいの各市町の行政サービスを受けられるようになるのか、逆に、すでに市や町で宣誓した方たちは県の行政サービスを受けられるのか(市や町で宣誓した県職員の方も県職員や教職員向けの住宅への入居が認められるのか)、県で宣誓した方がパートナーシップ証明の必要に迫られた場合、どのようにすればよいのか、といった疑問が浮かぶ方もいらっしゃることでしょう。おそらく後日、詳しいことが発表されたり、県の公式サイトに掲載されるのではないでしょうか。
ちなみに、朝日新聞の報道によると、香川県は同性パートナーを持つ県職員への扶養手当の支給を認めていないそうです。
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その他、全国の動きについて、北から順にお伝えします。
今年6月、北海道旭川市とその周辺の東神楽町、美瑛町、東川町、鷹栖町、当麻町、比布町、上川町、愛別町の上川中部8町が一斉に「パートナーシップ宣誓制度」を導入するとお伝えしました。旭川市が来年1月の導入を予定していたため、周辺の町も同じ時期に導入することで「圏域全体で理解があるという雰囲気をつくることができれば」という趣旨で全国的にも珍しい一斉導入が実現することになったものです。この8町は基本的に旭川市と同じ来年1月の導入を目指していますが、上川町は少し遅れるようです。
上川町の佐藤町長は13日、町議会で「職員や住民の理解を深め、来年4月の導入に向け準備する」と述べました。きれいに足並みが揃うことにはなりませんでしたが、すでに圏域全体での導入や連携の体勢ができていますし、少し遅れるとしても大勢には影響は及ぼさないのではないでしょうか。
なお、北海道根室市の9月定例議会で、市は来年度からジェンダーやLGBTQに関する専任部署を市民生活部内に新たに設置する考えを明らかにしました。専任部署の設置によって「道とのスムーズな連携を図る」そうです。根室市ではまだ同性パートナーシップ証明制度は導入されていませんが、これを機に、気運が高まるのではないかと思われます。
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東京都板橋区は14日、11月1日から「パートナーシップ宣誓制度」を導入すると発表しました。既にある都の制度に加え、区でも導入することで、区営住宅への入居などを可能にするそうです。坂本健区長が記者会見で明らかにしました。
また、東京都の制度で使える区民サービスを、区の制度で宣誓した場合も利用できるようにするそうです。さらに、来年度以降、宣誓したカップルが区営住宅へ入居申込みをできるようにするなど、使えるサービスの拡充を目指します。
区では2021年から制度導入の検討を始め、区民アンケートなどで当事者らから導入を求める声があったといいます。
坂本区長は「制度の周知や適用できる区民サービスの拡充を図ることで、多様性を生かし合う豊かな社会を目指したい」と述べました。
区の担当者は「自分たちの街で応援する姿勢を表現したい」と話しているそうです。
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山口市の伊藤和貴市長は11日の市議会一般質問で、来年4月に「パートナーシップ宣誓制度」を導入することを目指す考えを示しました。同居を要件としないことや自治体間の相互連携を可能とするなど「当事者の実情に沿った内容になるよう整理した」と説明しました。
当事者団体が7月に制度の導入を要請した際、カミングアウトせずに暮らす人も多く、不動産を貸す側の理解が進んでいないため、パートナーと同居しているとは限らないという実情があるため、同居要件を外すよう求めていたそうです。
山口市は2021年にパートナー制度を導入した宇部市を参考にしてきたが、宇部市は同居要件があるため、今後の連携にあたって調整していく考えです。
山口市は、市人権施策推進審議会や市議会に素案を示しており、11月に市民から意見を募るパブリックコメントを実施し、そのうえで審議会に諮り、来年4月の施行を目指します。
伊藤市長は一般質問の答弁で「市民一人ひとりが互いを尊重し、多様性を認め合いながら誰もが自分らしく活躍できる街づくりを目指して参りたい」と述べました。
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長崎県立五島高校の2年生3人が「探求学習」の一環でLGBTQについて研究するなかで、同性パートナーシップ証明制度の導入などについて考えるLGBTQセミナーの開催に至ったというニュースがありました。
五島市の女性支援コミュニティ「らしさLabo(ラボ)」によると、同校の探求学習は、自分の興味のある課題を深めていき、課題研究を通して主体性を持って多様な人々と協働して学ぶという総合学習なのですが、この3人は、「多様性を認め合い、暮らしやすい島にしよう」との思いでLGBTQをテーマに選んだんだそうです。長崎県では長崎市が2019年に「パートナーシップ宣誓制度」を導入し、大村市は今年10月に導入予定ですが、五島市はどうなのかと思い、市役所や高齢世代への聞き取りなどを行なったところ、LGBTQについて理解が進んでいない現状を知ったといいます。そこで3人は、若い世代への啓発を目的に教育用動画や絵本の制作を始めたり、8月には「らしさLabo(ラボ)」が開いたLGBTQセミナーに参加、市内でミックスバーを経営するゲイのばびさんからお話を聞きました。ばびさんは「パートナーシップ制度が広まることで(LGBTQへの)理解が進むのでは」と話しました。
探求学習の成果は10月に発表予定で、セミナーでの議論をヒントに、アライであることを示すステッカーなどの制作も検討しているそうです。班長の山本響子さんは「五島で市民の理解が進み、意識を変えることができたらうれしい」と語っています。
三重県では高校生の有志が「パートナーシップ制度を実現する三重の高校生の会」を立ち上げ、県に制度導入を求める1330人分の署名提出していますし、山形県酒田市では高校生が「パートナーシップ宣誓制度」を実現したり、パレードを開催したりしています。今や、高校生の方たちの真っ直ぐな想いや行動が世の中を変えていく時代です。感慨深いものがありますね。
参考記事:
性的マイノリティーのカップル 婚姻相当の「パートナーシップ宣誓制度」11月から導入 山梨県(テレビ山梨)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/uty/718965
パートナー制度 県11月導入 扶養手当支給も(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230914/ddl/k19/040/109000c
香川県、認定同性カップル 県営住宅入居可能に(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC146AJ0U3A910C2000000/
パートナー制24年4月導入 上川町長「理解深め準備」(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/908486/
パートナーシップ宣誓制度、板橋区が導入 区営住宅の入居も可能に(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR9G4VTTR9GOXIE01L.html
「区営住宅へ門戸」 パートナー制度、板橋区も導入 11月(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230915/ddl/k13/010/004000c
山口市、パートナーシップ制度の来春導入を検討 同居は要件にせず(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR9C72G7R9CTZNB00J.html
多様性認め 暮らしやすい島に 五島高2年生3人 LGBTQ+題材の動画、絵本制作(長崎新聞)
https://nordot.app/1074867129015714754