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　コミュニケーションスキルなどの向上を目指す「トーストマスターズ」のスピーチコンテストで、横浜市在住でレズビアンの 田畑葉子さんが全国優勝しました。ある高校生から「普通だったらよかったのにと思ったことはありますか？」と聞かれたことをきっかけに、「普通の人々」と題し、同性婚の権利についてスピーチしました。


 「トーストマスターズ」は世界144カ国で活動する米国発祥の非営利団体で、日本でも全国で224クラブ（今年6月時点）が活動しており、5月に大会が開催されました。田畑さんは2020年5月からLGBTQと支援者のための「東京レインボートーストマスターズクラブ」に所属し、スピーチの内容を練るために自分に向き合う面白さを感じていたといいます。コンテストは初挑戦で、地域代表11人の中から1位に選ばれました。
　参加を決め、「何を話そうか」と考えた時に浮かんだのは、パートナーの須田きくみさんが同性婚の法制化を求める当事者として登壇したイベントで参加者の高校生から「お話ありがとうございます。でも、やっぱり、男女が結婚して夫婦になるのが普通だと思うんですが、自分も普通だったら良かったのにと思ったことはありますか」と聞かれたことでした。須田さんは「普通って何？」と戸惑い、とっさに答えられなかったそうです。「私たちはまるで『普通じゃない』方の箱に入れられているよう」と田畑さんは感じたそうです。
　世界では35の国が同性婚を認めているなか、日本は（「結婚の自由をすべての人に」訴訟で違憲判決が出て、国会での議論を求められているにもかかわらず）国会で議論が進んでいないという現実があります。スピーチでは「普通」とは何なのかを問いかけることにしました。
　田畑さんは正直な気持ちとして「同性婚がなぜダメなのかわからなくて、怒りの感情がある」そうですが、コンテストの審査員や聴衆の多くは異性愛者であると想定されるため、同性カップルの権利保障というイシューになじみのない人もいるだろう、そういう人たちにどう伝えたら届くのか…と考えながらスピーチ原稿を練ったそうです。
　田畑さんは「私には一緒になって15年の妻がいます」と語り出し、須田さんが経験したエピソードを冒頭で紹介し、事実婚の家庭、親が外国籍の子ども、社会参加が阻まれた時代があった女性の例を挙げ、「普通」の基準は人や家庭、時代によって異なると述べました。「誰にでも少数派の一面があるはず」「目玉焼きにかけるものは、塩こしょうか、ハラペーニョソースか」と身近なことをユーモアを交えて語るなど、工夫を凝らしました。高校生の質問に対しては「自分のことをとても普通だと思っていて、ありのままの自分に満足している」と答えました。さらに、「妻と出会えたことは、人生の意味が変わった、大きな大きな出来事」「もし、異性愛者として生まれていたら彼女と歩む人生がなかったと思うと、今の日本の法律に合わせるためだけに、異性愛者だったら良かったとは思えない」とも語りました。最後は、互いの“普通”を認め、尊重しあうことで「新しい発見が生まれ、人生を豊かにしてくれる」と結びました

　スピーチを聴いていた会員からは「メッセージが明快で力強かった」「とても考えさせられた」など肯定的なコメントが多く寄せられたといいます。
　大会優勝者のスピーチ映像は、団体の公式YouTubeチャンネルで公開されるため、田畑さんにとっては初めてのカミングアウトとなりました。以下がYouTubeに公開されたスピーチ映像です。


　田畑さんは大会出場をきっかけに、勤務先の社内LGBTQ啓発イベントで当事者として登壇することも考えているそうです。「顔が見えたほうがポジティブな反応を引き出せると思う。年を重ねると性的指向のことでひどい扱いを受けることは少なくなり、多少のことでは動じなくなった。年齢と出場機会のタイミングが合った」「少しでもこの課題に関心を持つ人が増えれば」

　このニュースを伝えた毎日新聞の記事では、家族らを招いてお二人の関係を披露した際の白無垢姿の美しい写真や、旅行先の群馬県沼田市の吹割の滝で撮影した思い出の写真なども公開されていて、とても素敵です。また、お二人が「Marriage For All Japan」Tシャツを着てインタビューに答える映像も公開されています。田畑さんは「つきあい始めた頃は、同性婚の具体的な歩みが目に見えるかたちで進むなんて思っていませんでした。こうなってくれば、なんとか一日も早く実現してほしいと思いますね」と語っていました。
　


参考記事：
「普通が良かった?」　スピーチコンテスト優勝のレズビアンの答えは（毎日新聞）
https://mainichi.jp/articles/20230810/k00/00m/040/198000c