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【同性パートナーシップ証明制度】愛知県、鳥取県が制度導入へ

 愛知県の大村秀章知事が3日、事実婚や性的マイノリティなどのカップルが社会的な不利益などを受けないよう、今年度中に同性パートナーシップ証明制度を盛り込んだ県条例の制定を目指す考えを表明しました。都道府県では12府県がパートナーシップ宣誓などの制度を「要綱」で定めていますが、「条例」に盛り込んでいるのは東京都だけで、愛知県がそれに続くことになりそうです。

 大村知事は同日、国に対し、少子化対策の一環として事実婚のカップルにも子どもの共同親権を認めるなど、婚姻関係にある夫婦と同じような法的な保護が受けられるよう法整備を求めました。(先月、事実婚のカップルにも婚姻に準じた法的保護を与える制度の新設を国に要請する意向を表明していました)
 齋藤法務大臣と面会した大村知事は、フランスではPACSによって事実婚のカップルにも婚姻関係に準じた法的な保護が与えられていて、それが出生率の高さにつながっているというデータもある、日本でも安心して子どもを産み育てられる社会の実現のためにあらゆる対策を講じる必要があるとして要請書を手渡しました。要請書では、事実婚のカップルにも子どもの共同親権を認めるなど、婚姻関係にある夫婦と同じような法的な保護が受けられるように法整備を行なうことや、事実婚のカップルやその子どもへの差別意識を根絶するため教育の啓発や社会の理解促進に取り組むことなどを求めています。
 これに対して齋藤大臣は「少子化対策や子育てをしやすい社会の実現は課題でもあるので、しっかり勉強したい」と述べました。
 要請を終えたあと、大村知事は記者団に対して、「事実婚の子どもたちの法的地位を安定させるということは少子化対策の後押しになる。引き続き、機運の醸成をしていきたい」と述べました。また、「今年度中にできるだけ早く、パートナーシップ制度について日本でいちばん進んだ条例をつくっていきたい」とも述べました。
 
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 鳥取県も独自の同性パートナーシップ証明制度の導入を目指すそうです。
 鳥取県の平井伸治知事は8日、性的マイノリティが安心して暮らせる社会を作るため、県独自の「パートナーシップ制度」を導入すると発表しました。平井知事は、「大都市であれば匿名性のある社会になるが、なかなかその匿名性を獲得しにくいのが地方の状況です」と語り、多くの自治体で採用されている「宣誓制度」ではなく、役場に出向くことなく、電子申請や郵送、窓口への持参などで済ませられる「届出制」とすることを検討しているそうです。また、子どもの迎えや親の入院・介護など、付き添いに不便があるといった声もあることから、同性カップルの子どもや親も届出対象にするということです。情報は、県の人権尊重社会推進局で一元管理し、届け出た人へは証明書や携帯カードを発行します。 
 制度は10月から開始予定で、県は今後、市町村にも協力を依頼し、県内全域で事実婚と同様の行政サービスが受けられる体制を目指します。

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 今年2月に制度の検討を表明した和歌山県の動きも伝えられました。
 和歌山県では橋本市と那智勝浦町で制度が導入済みで、県や複数の市町村も導入を検討しているところです。
 昨年10月に県内で初めて制度を導入した橋本市は、今年10月に制度を拡充し、「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」とするそうです。那智勝浦町は今年4月、「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を導入しました。
 県青少年・男女共同参画課によると、複数の市町村が導入の検討を進めているといいます。LGBT理解増進法が施行されたことも後押しになっているそうです。県は、市町村と連携がとれるような仕組みを作る方針です。しかし、制度には法的拘束力がないため、税や相続での優遇措置などは受けられません。また、宣誓には役場の窓口に二人で出向く必要があり、周囲にカミングアウトしていない方などが躊躇するケースもあります。
 和歌山県で古くから活動するLGBTQ支援団体「チーム紀伊水道」の倉嶋麻理奈理事長は、「同性カップルが対象だったパートナーシップ制度が、その子どもなどの家族、婚姻を選択しない・できない事実婚の男女も対象に認め、ウィングを広げていくことは良いことだ。性的少数者がより生きやすい社会になることにもつながる。岸本知事は県のパートナーシップ制度導入を実現してくれるでしょう。さらに県に求めたいことは、性の多様性について理解を広げる条例づくり。三重県などで先行例がある。県内ではまだ2市町だが、生活により身近な市町村単位でパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入を進めてほしい」と語りました。

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 同性カップルも婚姻相当と承認する制度を導入した自治体が人口カバー率で7割を超え、まだまだ制度導入の動きが全国に広まりつつありますが、複数の新聞社が、この制度の意義を改めて認識し、同性婚の実現につなげたい、とする社説を掲載しています。

 東京新聞「<社説>パートナー制度 婚姻平等への一里塚に」では、「パートナーシップ制度には法的拘束力がないため効力は限られるが、公営住宅への入居など行政サービスを受けやすくなったり、病院で家族として扱ってもらえたりするなど一定の効力は期待できる」「パートナーシップ宣誓カップルが法律婚と同様の福利厚生が受けられるようにするなどの取り組みは、民間企業にも広がっている」「同性婚や夫婦別姓を認めていない日本には、婚姻の平等をどう実現するかという課題が残る」「パートナーシップ制度を導入して多様な家族の形を認める自治体が増えれば、差別しない意識を社会全体で共有するための力になり得る」としたうえで、「LGBTQ理解増進法には「すべての国民が安心して生活することができるよう、留意する」との文言が加えられ、LGBTQへの理解を広げるための法律でありながら、多数派への配慮も求める内容になった。パートナーシップ制度が「自治体の行き過ぎた取り組み」とみなされて普及が規制されることがあってはならない。人権を蔑ろにする動きが広がらないよう注視する必要がある」と述べられています。

 信濃毎日新聞「〈社説〉パートナー制度 社会的な認知を広げたい」では、「制度の意義を改めて認識し、同性婚の実現につなげたい」として、長野県が1日から「県パートナーシップ届出制度」の運用を始めたこと、届出を行なった県職員に対して休暇や手当を法律婚とほぼ同様に認める対応を始めたこと、制度は全国で急速に広がっており、すでに300超の自治体が導入したことに触れながら、「大きな意義は、二人の関係が社会的に認められることだ。導入した自治体の多くは当事者の要望を受けた。同性婚の実現が見通せない中で、当事者は最低限の救済を求めているといえる」と制度の意義を評価しつつ、「ただし、制度には限界があるのも事実だ。法的夫婦には認められる税制控除や相続などは受けられない。制度を導入していない自治体に転居すれば認定も無効だ」「解決するには国が同性婚を導入するしかない。同性婚を認めないのは憲法違反として、当事者らが国を訴えた裁判でも違憲判決が相次ぐ。同性を好きになる人の人権は、異性を好きになる人と同じであることを前提に、政府と国会は実現に向けて迅速に動くべきだ」と述べられています。

 全国の7割超の自治体が、同性カップルも婚姻相当であると承認し、パートナーシップ証明の制度を整えてくれています。日本社会はすでに同性でも結婚できるようになるべきだというふうに変わっています。裁判でも同性婚が認められないのは違憲だとする判決が相次いでいます。国は同性婚の法制化に向けた議論を進めることが求められています。同性婚実現に間に合わず、亡くなってしまう方もいらっしゃいます。一日も早く、結婚の権利を認めていただきたいです。

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 なお、同性婚に関係して、6月に尼崎市の神社で結婚式を挙げたゲイカップルに密着したサンテレビの番組が放送されました。とてもいい内容ですので、ぜひご覧ください。

  
参考記事:
愛知県、パートナーシップ制度の条例化目指す 「本年度中に」大村秀章知事(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/741892
「事実婚に法的保護を」愛知・大村知事が国に要請(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20230803/3000030840.html

LGBTQ・性的マイノリティが事実婚と同様サービス受けられるように 鳥取県が独自のパートナーシップ制度導入目指す(山陰放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/651338?display=1
LGBTQ「パートナーシップ制度」 独自の鳥取県型導入へ 匿名性重視、郵送申請OK(日本海新聞)
https://www.nnn.co.jp/articles/-/111726

和歌山で導入進む「パートナーシップ宣誓制度」…同性カップル公認の動き広まる(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20230805-OYO1T50021/
和歌山で2例目のファミリーシップ制度 事実婚の男女や子など対象に(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR815WJ6R7MPXLB00X.html

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