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米インディード、トランスジェンダー従業員の転居を支援へ
リクルートホールディングス傘下の米求人検索サイト「Indeed(インディード)」は、トランスジェンダーの従業員やトランスジェンダーの子を持つ従業員に1万ドル(約146万円)の転居支援金を支給する制度を導入しました。米国の保守的な州でアンチLGBTQの州法の制定が相次ぎ、当事者の生活の安全が脅かされつつあることに鑑み、この7月から導入したものです。LGBTQへのバックラッシュに対する民間企業の抵抗が、新しい局面を迎えました。
昨年、フロリダ州で「ゲイと言ってはいけない法」が成立し、企業なども巻き込んで大きな反対運動が起きました。それだけでなく、未成年のトランスジェンダーへのジェンダー・アファーメーション・ケアを禁止する州法がこれまでに20以上の州で成立しており、トランスジェンダーの生徒のスポーツ参加を規制する州法も続々と成立、挙げ句の果てにはドラァグクイーンのショーを禁止する州まで…ヒューマン・ライツ・キャンペーンが初の「非常事態宣言」を出しているほどです。
カナダ政府は29日、米国への渡航について「いくつかの州にはLGBTQに影響を与える法律や政策がある」「詳細な情報を把握したうえで行き先を決断してほしい」と注意を呼びかけました(まるでLGBTQを犯罪者のように見なす中東やアフリカの国のよう…)
特にトランスジェンダーの従業員やトランスジェンダーの子を持つ従業員が苦境に陥っているの事態を重く見たインディードは、この7月に転居支援プログラムを導入したそうです。社内で発表されてすぐ、シニア・コンテンツ・クリエイターのサム・バーガーさんは地元のテキサス州を離れ、コロラド州に引っ越したといいます。テキサス州では、州知事が昨年、未成年への性別適合治療を”児童虐待”だと非難し、ついに今年、禁止する州法が成立してしまいました。コロラド州は、ジャレッド・ポリス州知事がオープンリー・ゲイで、アンチLGBTQの州法がない(たとえ州議会で成立しても知事が署名を拒否できるので、強い)のです。インディードからの支援金を転居費用に充てることができたバーガーさんは、「お金をもらえるとわかったとたん、重荷が降りたような気がした」と語りました。多くのトランスジェンダーが同じような選択肢を持っていないことを認識しているそうです。
今年のプライド月間も数えきれないくらいたくさんの企業がLGBTQ支援のキャンペーンを行ないましたが、そのなかで、ターゲットやバド・ライトなどがアンチ派の攻撃にさらされ、バドライトに対しては不買運動なども起こり、売上が減少してトップの座から降りることになったと報じられました。しかし、売上減少の直接の要因は、そうした攻撃にひるんで支援策を撤回してしまい、LGBTQコミュニティからの支持を失ったことにあるということがわかってきました(こちらの記事に詳しいです)
ゴールドマン・サックス・グループの元コミュニケーション担当幹部で、トランスジェンダーであることをカムアウトした経験をつづった著書のあるメーブ・デュバリー氏は、インディードの例に倣う企業は、たとえアンチLGBTQの標的になったとしても毅然と構え、「前言を撤回するようなことは望ましくない」と述べています。
インディードは、日本では、TRPに協賛しているほか、働くLGBTQの声を集めた『BE』という雑誌を発行するなど、ユニークな活動を展開しています。
参考記事:
米インディード、転居希望のトランスジェンダー社員に1万ドルを支援(ブルームバーグ)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-08-30/S07JRFDWRGG001
カナダ、性的少数者にアメリカ渡航のリスクを警告(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/66656041