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【サッカー女子W杯】選手たちが様々な方法でレインボーカラーをピッチに持ち込み、LGBTQを支援

 今回のサッカー女子W杯オーストラリア・ニュージーランド大会は、カムアウトした選手が過去最多の96名に上り(以前のニュースでは94名とお伝えしていましたが、Outsportsによると、最終的に96名となったそうです)、史上初めてノンバイナリーの選手が出場するなど、LGBTQ視点でも素晴らしい大会になっています。FIFAの方針で相変わらずレインボーカラーの腕章は禁止されていますが、選手や開催国がさまざまな方法でレインボーカラーをピッチに持ち込み、LGBTQ支援のメッセージを発信しているというニュースもありました。
 
  
 昨年、カタールで開催されたFIFA男子ワールドカップでレインボーカラーの腕章の着用禁止措置がとられ、抗議運動などが起きました。同性愛が法律で禁止されているカタールでプレーするにあたり、欧州のチームのキャプテンたちが「One Love(ひとつの愛)」と描かれたレインボーカラーの腕章を着けたいと申請したところ、FIFAがそれを禁じ、ドイツの選手たちが写真撮影で口を覆う、FIFAに提供された腕章を見えない位置につける、といったパフォーマンスで抗議を行ないました。
 今回のW杯では、各チームの主将が「Unite for ○○(○○のために団結しよう)」と書かれ、ハートマークがあしらわれた、以下の8種類のキャプテンマーク(腕章)から1つを選んで巻いています。①インクルージョン、②先住民、③ジェンダー平等、④全ての人に教育を、⑤女性への暴力の撲滅、⑥平和、⑦飢餓ゼロ、⑧サッカーは喜び、平和、希望、情熱
 ①は「インクルージョンのために団結しよう」というメッセージで、レインボーカラーではないものの、それを想起させるような6色のストライプがあしらわれたハートマークがデザインされています。
 国際プロサッカー選手会(FIFPRO)のスタッフ・辻翔子さんによると、女子W杯に出場する欧州勢から今春、メッセージ性のある腕章を着用したいと選手会に相談があり、FIFAに要望すると、「特に女性に影響のあるテーマにした」「これは国連と提携しているテーマだ」など、具体的な文言とその理由も示したうえで、8種類を提案してきたそうです。選手側も半数ほどが「このテーマなら選べると思う」と賛意を示し、実現に至りました。辻さんは「まだ完璧ではないが、プロセスに選手が加わり、意見交換の場があったのはプラス。女子サッカーは男女平等や待遇改善などいろんな問題と闘っており、選手は何かを発信したい気持ちがある。こういった形(腕章着用)でできたのはよかった」と語っています。
 なでしこリーグ「大和シルフィード」所属でオープンリー・レズビアンの下山田志帆選手は、「一番望ましいのは明確にスタンスを表明できることだと思うが、そこに向けて一歩前進している状態」と好意的にとらえています。「FIFAから『一緒にやっていこう』と声が上がったことは、良い意味で女子サッカーが(男子と)違うと見られていることを示している」。米国や欧州ではジェンダー平等など女子サッカー界の発信から社会の変化が起こっており、その流れを今回、感じ取れたといいます。「いろんな人が集まって一致団結する空間を作れるのはスポーツの強みで魅力。『この場所は誰も排除しないよ』『どんな偏見、差別も許さないよ』とその場で発信することは、悩んでいる人たちに『自分の居場所が世の中に存在するんだ』と示すことになる」「当事者だけ声を上げても世の中は変わらない。大きな世界大会の場で発信されることは、マジョリティ側の人たちが『確かにそういう違いもあるんだね』『自分も居心地の良い場所を作る一人でありたい』と思えるきっかけ作りになる」

 ただ、8種類のなかに明確にLGBTQ支援を示すものはありません。同性愛を禁じている国などにFIFAが”配慮”したためだそうです。FIFAが今回、自ら提案してきた8種類の腕章のデザインについては、レインボーカラー(LGBTQ支援)という保守的な国に敬遠されるメッセージを腕章に使うことを避けるための打開策だという冷ややかな反応も出ているそうです。

 FIFAがレインボーカラーを禁じる姿勢はまだ続いているにしても、今大会では、少なくとも96名の選手がカミングアウトしており、出場選手全体の13%(約8人に1人)を占めています。 国際規模の大きなスポーツ大会として過去最多です。
 そんななか、腕章はダメでも、なんとかLGBTQ支援の思いを表明したいと、様々なかたちでレインボーカラーやトランスジェンダーカラーを身に着ける選手も現れました。
 W杯開催の前にレインボーカラーの腕章を着けられたら「光栄だ」と米CNNに語っていたニュージーランド代表のアリー・ライリー主将は、左手のネイルをレインボーカラーに、右手のネイルを水色、ピンク、白(トランスジェンダー支援)に施して試合に臨みました。米ハリウッド俳優のジェニファー・ガーナーはこのさりげないアピールをSNSで賞賛しています。
 南アフリカのテンビ・カトラナ選手は、側頭部のヘアをレインボーカラーにして試合に参加しました。南アフリカはアフリカで唯一、憲法でLGBTQ差別を禁じ、婚姻平等を実現した国ですが、2021年にはヘイトクライムによる憎悪殺人が24件確認されるなど、未だに残るLGBTQへの暴力が問題になっています。
 選手だけでなく、開催国もレインボーカラーをピッチに登場させています。7月22日にオーストラリアのブリスベンで行なわれたイングランドvsハイチ戦では、ハーフタイム中にスタジアム側が屋根付近をレインボーカラーにライトアップしました。

 FIFPROの辻翔子さんによると、最近ネット上の誹謗中傷を分析したところ、男子のカテゴリーでは「人種差別」、女子のカテゴリーでは「LGBTQ」に関する誹謗中傷の割合が非常に高いことがわかったそうです。「当然ですがLGBTQに限らず、FIFPROではあらゆる差別は、選手の労働環境、プレー環境を極めて疎外する重大な問題だと認識しています。根絶に向けて、選手たちと協力して取り組んでいきたいと思っています」

 腕章についても一歩前進がありましたし、LGBTQの選手の参加は過去最高となり、昨年のカタール大会とはガラリと変わる、意義ある大会になりました。今後も差別をなくすための取組みが進んでいくことが期待されます。
 
 
 

参考記事:
【女子W杯】「禁止のレインボー」を選手たちが『ネイル』や『ヘア』で取り入れる(フロントロウ )
https://front-row.jp/_ct/17645310

サッカー女子W杯“多様性”腕章めぐるFIFAとの攻防(NHK)
https://www.nhk.or.jp/minplus/0029/topic129.html
8人に1人が性的少数者 サッカー女子W杯が発信に積極的な理由(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230817/k00/00m/050/160000c
LGBTQの当事者にサッカー女子W杯はどう映ったのか(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230817/k00/00m/050/185000c

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