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LGBTQが安全に旅行できる国とフレンドリー都市のランキングが発表されました

 プライド月間である6月、LGBTQが安全に旅行できる国のランキング「ゲイ・トラベル・インデックス」と、「世界で最もLGBTQフレンドリーな都市」ランキングが相次いで発表されました。それぞれマルタとニューヨークが世界一と認定されています。 

 
 ドイツの老舗ゲイ旅行ガイド『スパルタカス』誌は、2012年から203の国や地域を対象にLGBTQ+の観光客が安全に旅行できるかどうかを調査し、「ゲイ・トラベル・インデックス」として公開しています(2019年版はこちらでご紹介しています)
 「ゲイ・トラベル・インデックス」は全部で14の指標(3カテゴリー)で評価されています。カテゴリー1は市民権に関するもので、LGBT差別禁止法の有無、同性婚や同性パートナー法の有無、同性カップルの養子縁組の権利など。カテゴリー2は差別についてで、HIV感染者の入国制限、プライドパレードや集会の禁止など。カテゴリー3は告発や投獄、死刑などによって同性愛者を脅かしているかどうかです。各国の状況については、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、国連の自由と平等キャンペーン、そしてLGBTへの差別・暴力についてのニュースを参考にしています。ポジティブな動きはプラスポイント、ネガティブな動きはマイナスポイントとしてカウントされますが、死刑制度に関しては例外で、同性間の性行為に対する死刑が施行されている場合はマイナス5ポイントとなり、リストの最下位(最も危険な国・地域)に位置することになります。
 2023年版のランキングでは、LGBTQツーリストにとって最も安全でオープンな国は地中海の島国・マルタであるとされました。マルタは2017年に婚姻平等を達成しただけでなく、2015年にはトランスジェンダーが法的に性別を変更するにあたり性別適合手術や医師の診断を不要とする法律が成立しており、世界的に見ても進んだ国となっていました。反同性愛法、宗教的影響、プライドの禁止などといった差別による減点もなく、1位となりました。
 2位はカナダとスイス(スイスはこうした調査で上位に来ることは最近までありませんでしたが、昨年同性婚が認められたことが奏功しました。同様に最近同性婚が認められたキューバがランクアップしています)、オーストラリア、デンマーク、ニュージランド、ポルトガル、ウルグアイが同率4位、ドイツ、アイスランド、スペイン、イギリスが同率9位でした。
 日本はというと、アルバニアやボリビアなどと並んで62位でした。「トランスジェンダーの権利」「LGBTQマーケティング」でプラス1がつきましたが、同性カップルの権利保障、ノンバイナリーの権利保障(戸籍やパスポートなどの性別欄にサードジェンダー表記を認める)、コンバージョンセラピーの禁止などで減点とされ、トータルでマイナス2ポイントでした(LGBT理解増進法がトランスジェンダーへのヘイトを容認する根拠として運用された場合、日本は差別禁止法があると見なされないどころか、「トランスジェンダーの権利」のポイントも奪われ、さらにランクを下げる可能性がありそうです)
 アジアで最も高く評価されたのは言うまでもなく台湾で、堂々13位となっています。LGBTQ差別禁止法があり、最高裁が同性婚法制化の検討を始めているインドが43位に上がっています。逆に、刑法で同性間性交渉が禁止されたインドネシアは、117位から159位へと転落してしまいました(地図上で赤色で示される「危険な国」の一群となってしまいました)
 『スパルタカス』の「ゲイ・トラベル・インデックス」はこちらに掲載されています(もしサイトにつながらず、見ることができない場合、Wikipediaにも見やすく掲載されていますので、そちらをご覧ください)

 
 
 それから、英国のクルーズ船旅行会社「Planet Cruise」が実施した「世界で最もLGBTQフレンドリーな都市」に関する調査で、ニューヨークが1位に選ばれました。
 同社によると、過去1年間で「LGBTQフレンドリーな旅行先」を検索する数が91%増加したことを受け、ランキングを発表するに至りました。評価指標は「同性婚」「同性カップルの養子縁組」「安全性」「LGBTQのバーの数」です。(今回はリゾート地などではなく都市のランキングですので、魅力的なナイトシーンがあるかどうかは、とても重要です)
 ニューヨークが1位になったのは、同性カップルの婚姻と養子縁組の権利が保障されていることに加え、LGBTQのバーが27店舗あることがプラスポイントとなったためだそうです。
(このランキングに台北が入っていないのは不思議ですよね。権利保障もなされているし、安全だし、LGBTQのバーも30軒以上あります。安全性の指標で用いれられている「LGBTQ+ Travel Safety Index」で台湾が48位とやや低めになっているせいかもしれません。このランキングではトランスジェンダーの殺害件数が世界最多レベルであるブラジルが台湾より上位になっていたりするので、評価方法にちょっと問題があるのではないでしょうか…)



 海外のLGBTQが旅行先を決めるにあたり、このようなランキングがどのくらい影響するかはわかりませんが、日本がこのようなランキングの上位に入るためには、LGBTQ差別禁止法や婚姻平等(同性婚)の実現が必須だということは確かです。ただ、今般の大阪でのIGLTA総会開催決定の報は、きっと海外のLGBTQコミュニティに安全な旅行先としての好印象を与え、関心を高め(ゲイバーの数なども注目されることでしょう)、名誉挽回につながるのではないかと期待されます。
 
 

参考記事:
LGBTQ+トラベラーが安全に旅できる国はどこ? ドイツの専門旅行ガイド「ゲイ・トラベル・インデックス2023」発表(やまとごころ編集部)
https://yamatogokoro.jp/inbound_data/50587/

NY市、LGBTQ+にフレンドリー 同性婚などの合法化、ゲイバー数も評価(Daily Sun)
https://www.dailysunny.com/2023/06/15/nynews230615-2/

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