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東京都現代美術館が「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」を毅然と擁護

 7月23日に東京都現代美術館で行われる「あ、共感とかじゃなくて。」展の関連事業のひとつとして企画された「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー ~ドラァグクイーンによるこどものための絵本読み聞かせ~」。LGBTQコミュニティでも世間的に人気を博しているエスムラルダさんとレイチェル・ダムールさんが登場し、子どもたちも大喜びするに違いない、素敵な企画なのですが、Twitterでイベントの告知をした東京都現代美術館の投稿に対して(昨今の米国のドラァグクイーンへの攻撃とそっくりな)「子どもたちへのグルーミングだ」などといった偏見や差別に基づく攻撃的なコメントもたくさん寄せられました。
 これを受けて7月4日、東京都現代美術館は「様々なご意見が寄せられ、厳しいご意見のほか、激励のお言葉を頂戴しています」として、「「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」に関する美術館の見解につきまして」と題する声明を発表しました。
 まず、読み聞かせの趣旨として「展覧会のメインターゲットである10代より年齢の低い方に対象を広げ、こどもたちに馴染み深い絵本を通して、世界と人々のあり方の幅広さや違いについて考える機会を提供する企画です」と説明されています。また、もともと「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」が2015年にサンフランシスコで始まり、世界各地で行われるようになり、日本でも2018年から公的機関を含む様々な場所で実施されてきたことも説明し、そして「読み聞かせを行うドラァグクイーンは、いずれもアーティストとして活動実績があるパフォーマーで、対象年齢に合わせた言葉遣いや安全配慮などのトレーニングを受けています。読み聞かせをする絵本は、一般的に市販されているものの中から、それを読むドラァグクイーンと幼児教育専門家とで選んだものを使用します。こどもたちの安全に配慮し、尖ったピンヒールや露出が多い衣装は避け、大人を対象にしたショーで行うようなパフォーマンスやダンスは一切含みません。また、性的な話題を取り上げたり、性的な行為を想起させるような表現を用いることもありません。対象年齢3歳から8歳とし、保護者の同伴を必須としていますが、これはこどもたちがその年齢からすでに「女の子だから」、「男の子だから」という固定されたジェンダー概念に触れることが多い現状を踏まえています。今回の展覧会は主に10代に向けてのものですが、もっと小さなこどもやその保護者を含む幅広い年代の方が、ジェンダーや個性の多様性に触れ、自分らしさを肯定する機会となることを意図し、本プログラムを関連イベントとして実施します」としています。さらに、「海外で発生している「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」に対する反対運動などについては、美術館でも事例を把握しており、実施にあたっては、参加者の安全を第一に対応したいと考えております」と述べ、差別者におもねるのではなく、過激化する懸念もあるアンチの人たちから参加者を守ると宣言しています。最後に、「あらゆる鑑賞者に開かれた美術館として、多様なプログラムがあることを知っていただき、その中から自由に選択できるようにすることで、幅広い価値観に出会える可能性を提供していきたいと考えております」と結んでいます。
 
 SNSでは、「差別者の圧力に屈しない東京都現代美術館の姿勢を強く支持します。立派」「毅然とした言葉で主旨を提示して見解を明示されてますね。大人の対応」「差別者の無理筋なクレームに屈することなく真っ当なステートメントを出した美術館を支持しま」「都現美を全面的に応援します」といった激賞のコメントが並んでいます。
 LGBT理解増進法案の議論の高まりとも連動してここ数ヵ月(カルト教団関係者や米国宗教右派の協力者ではないかと疑われるような)トランスジェンダー(やドラァグクイーン)への差別的発言・ヘイトスピーチが増大し、コミュニティの多くの人々が傷つき、疲弊してきたわけですが、こうして東京都現代美術館が毅然と差別者に対峙し、開かれた場として表現の自由や参加者を守ると表明してくれたこと、本当に素晴らしいです。これがアライというものです。拍手!
 
 ちなみに、早速このことを記事にしたTokyo Art Beatは、プライド月間にロンドンのテート・ブリテンでクィア・アートのイベントが大々的に行なわれたことや、昨年同地で2つのクィア・アートスペースが誕生したことに触れながら「「開かれた場所」としての美術館を推し進める活動は近年大きな動きを見せている。今回の企画は、日本におけるそうした動向の萌芽のひとつとして応援していきたい」としています。素敵な記事でした。
 


参考記事:
「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」について東京都現代美術館が見解を発表。「幅広い価値観に出会える可能性を提供していきたい」(Tokyo Art Beat)
https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/drag-queen-story-hour-statement-news-202307

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