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ダニエル・ラドクリフが「世界は男女二元論にあまりにも依存している」「LGBTQの若者の自殺を根本的に食い止めるためには同性婚を認めるべきだ」と語りました

 3月31日の国際トランスジェンダー可視化の日、俳優のダニエル・ラドクリフが6人のLGBTQユースとの座談会に参加し、ジェンダーユーフォリア※や代名詞の尊重、自己発見、アライシップなどについて話し合いました。その中でダニエルは「世界は男女二元論にあまりにも依存している」と指摘し、また、「LGBTQの若者の自殺を根本的に食い止めるためには同性婚を認めるべきだ」ともコメントしました。

※自身のジェンダーを肯定されたことで得られる幸福や心地よさ

  『ハリー・ポッター』シリーズ以降、大人の俳優へと華麗に変貌を遂げたダニエルは、LGBTQユースの自殺を防止するための24時間ホットラインの運営などに取り組む「The Trevor Project」のコントリビューターを務めています。2010年、米国で10代のゲイの少年の自殺が相次ぎ、社会問題になった際も、亡くなった一人ひとりの名前を読み上げながら追悼し、全国の当事者に「もしもあなたが今、同じようなことで苦しんでいるのでしたら、どうか一人で悩まず、『Trevor Lifeline』に電話してみてください。あなたの話を真剣に聞いてくれます」と呼びかけています(詳細はこちら
 欧米では毎年180万人ものLGBTQのティーンエイジャーが自殺もしくは自殺未遂を図っているといいます。その大きな要因は、学校での陰湿ないじめです。こうした現状に胸を痛めた活動家の方たちによって1998年、LAのゲイタウン、ウェストハリウッドで「The Trevor Project」が創設され、ダニエルは2009年からの『Trevor Lifeline』の運営資金の援助等を担うコントリビューターとして、さまざまな取組みを行なってきました。
「私は、日々尊い若い命を守るという重大な使命を担うトレヴァー・プロジェクトに参加できることをとても光栄に思います。2009年の若者の三大死因の一つが自殺であることは非常に痛ましく、過去に自殺を図ったことのあるLGBTQの若者は、そうでない若者の4倍にものぼります。この事実は、もはや衝撃以外の何ものでもありません」


 3月31日の「国際トランスジェンダー可視化の日」、同団体はダニエル・ラドクリフをモデレーターに迎え、トランスジェンダーやノンバイナリー、クィアの6人の若者と語る座談会動画「Sharing Space」を公開しました(英語ですが、YouTubeの自動翻訳機能をオンにすれば日本語字幕つきで観ることができます)。参加者は、それぞれの人生経験や、何らかのかたちで自分のジェンダーを肯定されたことで得られる多幸感(ジェンダー・ユーフォリア)、「自分は自分である」という考えにポジティブな影響を与えた人々やジェンダー代名詞などについて話し合いました。
 その中でラドクリフは、「多くの人たちがトランスジェンダーの若者について議論を行い、ニュースでもその話題をよく耳にしますが、実際に当事者である若者たちから直接話を聞くことは非常に稀です」「トランスジェンダーの若者について語るのであれば、実際に彼らの声に耳を傾けるのが最も有効なのではないでしょうか」「世の中には、この会話に誠意を持って関わろうとしない人たちがいます。その多くは、若いトランスジェンダーを知らないがために、自分たちの頭の中だけで完結した理論的概念があるんだと思います」「世界が男女二元論に無意識のうちにあまりにも依存しているのです」と語りました。
 さらに、自分を「アライ」と呼ぶことにためらいがある、「誰かが自分をアライだと自称するのを聞くと、僕はいつも『怪しいな』と思ってしまう」と語ったダニエルは、「君たちがアライだと思っている人たちはどのような人ですか?」と言う質問を若者たちに投げかけました。参加者の一人、メテオ・ルイスは、「(アライを名乗るであれば)私たちが考えるようなアライシップに本当の意味で踏み込む必要があると思います。それは、相手の立場になって理解するということです。ほとんど場合、私たちは自分の目線でしか物事を見ておらず、相手の目線に立って物事を見ることがないからです」と語りました。ディアティ・ザ・ウェイは、「このコミュニティでは、たとえアライであっても、私たちにとって何が心地良くて、何が境界線なのかをちゃんと伝えなければなりません。アライと呼ばれる人たちが最初に考えるのは、『私はあなたのことを信じています。あなたが見てほしいようにあなたのことを見ます。自分は間違うはずがありません』ということです。(アライ=味方になるということは)相手を尊敬することではなく、説明責任を負うということです。誰かを傷つけたり、誰かの気分を悪くさせたりしてしまったときに、腰を据えて誤ちを認めることができなければ、トランスジェンダーやシスジェンダーはもちろん、誰にとってもアライであることはできないのです」と語りました。

 昨今、LGBTQユースの自殺防止に取り組む団体は世界的に増えています。英国では、2018年に世界初となる自殺防止担当相が保健省内に新設され、国をあげて対策に乗り出しましたが、コロナ禍によって自殺者数は増加し、さらに、英国のLGBTQ団体の調べによると、日々11,000人もの人が自殺関連のウェブサイトにアクセスしていることも判明しました。
 若者の自殺を根本的に食い止めるためには、結婚と家庭のありかたを今一度見直すべきだ、つまり、同性婚を認めるべきだとラドクリフは主張します。彼が求めるのは日本を含めた、まだ法制化が進まない世界中の国々での同性婚実現です。
「父親と母親が結婚したから自分がいる、と子どもは理解します。でも、夫婦同然の暮らしを続けているのに、同性というだけで法的に結婚が認められないなんて、子どもたちはどう思うでしょう。同性にせよ異性間にせよ、結婚というのはその関係性を象徴的に祝福することです。ひいては、婚姻関係にある二人があらゆる面で平等であることを規定する制度であるはずです。私は、世界中のLGBTQの人権は法的に保護されるべきだと思います。そしてそれこそが、LGBTQの若者が不当な罪悪感や被害者意識を抱くことなく、世間からの偏見にも苛まれることなく生きるための鍵となるのです」

 
 ちなみに2020年、『ハリー・ポッター』シリーズの生みの親であるJ.K.ローリングのトランスジェンダーをめぐる発言が炎上した際も、ダニエルは、「いくつかのメディアはこの一件をJ.K.ローリングと僕の対立のように描きたがるかもしれませんが、そうではありませんし、大切なのはそういうことではありません」と前置きしたうえで、「トランスジェンダー女性は女性です。これに反する意見は、トランスジェンダーの方々のアイデンティティや尊厳を傷つけ、この問題についてジョー(※J.K.ローリングの愛称)や僕よりも遥かに専門性を有する医療の専門家たちのあらゆる助言と対立するものです」と語り、J.K.ローリングの主張に反論する声明を出すなど、LGBTQ+コミュニティに寄り添ってきました。
(詳細はこちら



参考記事:
「世界は男女二元論にあまりにも依存している」──俳優ダニエル・ラドクリフが希求するLGBTQユースの未来【社会変化を率いるセレブたち】(Vogue Japan)
https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/celebrities-driving-social-change-daniel-radcliffe

ダニエル・ラドクリフが自分をLGBTQを理解・支援する「アライ」と呼ぶことをためらう理由(フロントロウ )
https://front-row.jp/_ct/17618770/

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