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埼玉神政連が昨年、同性愛が“精神疾患”で”治癒”可能だとする文書を配布し、LGBTQ条例への反対を呼びかけていたことが明らかになりました
1週間前、神社本庁の政治団体である神政連が統一地方選の候補にLGBT法への反対を求める公約書(政策協定)を送っていたことが明らかになりました。公約書の存在を明らかにした埼玉県の田村県議は、昨年の埼玉県の「性の多様性条例」の制定の際、県の神社庁(神政連埼玉県本部)から個別に呼ばれて批判や苦情を言われた議員がいたとも語っていました。
さらに本日、昨年の埼玉県の「性の多様性条例」について、県議会での審議を前に意見募集をした際、埼玉県神社庁の関連団体・神政連埼玉県本部が下部団体に反対意見を投稿するよう呼びかけ、「LGBTQは何れも、精神疾患であることが明らかになりつつある」などと記した文書を配っていたことが明らかになりました。
LGBTQを差別から守るための条例の成立を許してはいけないと、“精神疾患”だとする事実無根のデマを流してLGBTQへの無用な偏見や差別を助長し、下部団体に反対意見を投稿させるという旧統一教会ばりの裏工作を行なっていた実態に、神社関係者からも批判の声が上がっています。
『東洋経済』誌によると、文書は2022年4月、神道政治連盟埼玉県本部によって県内各支部に送られました。
「埼玉県 性の多様性に係る理解増進に関する条例(仮称)の骨子案 問題点・疑問点(事務局作成)」とのタイトルが付けられており、自民党埼玉県連が作成した条例の骨子案に対する神政連埼玉県本部の見解を示しています。そのなかで同性愛や両性愛について「生まれつき同性愛・両性愛である人はいなく、環境要因に基づくことが明らかになっている」と記載し、LGBTQについては「幼少期での虐待、性的虐待、家庭内暴力、両親の不仲、親の薬物依存、アルコール依存、思春期での同性愛行為など環境要因による精神疾患(統合失調症や双極性障害等)であることが明らかになりつつある」「行動療法や宗教などで『治癒』する」などと、科学的に全く誤った説明がなされていました。
神政連の中央本部は2022年6月にも同性愛を「精神の障害、または依存症」などと記した冊子を国会議員に配布していたことで物議を醸しましたが、当時、神政連は『東洋経済』誌の取材に対し、冊子は大学教授の講演録を掲載しただけであり「神政連の意図に基づくものではない」と回答していたそうですが、それは真っ赤なうそだったのです。同誌はあらためて神政連中央本部に「2022年の取材時には『LGBTQを精神の障害や依存症とする意図は神政連にはない』と回答していたが、今回の文書を読む限り、神政連も精神の障害であると認識しているのではないか」と質問したそうですが、「回答は致しかねる」という返答だったそうです。
文書を受け取った埼玉県内の神職の方は、「かつて神政連はマスコミからの非難をかわすため『冊子の論考の内容は神政連の見解ではない』などと弁解していた。しかし、文面を読むと真っ赤なうそだったことがわかる」と語っています。
神社関係者のLGBTQの方は、「神政連は、『神道にはLGBTQを差別する考えはない』と公式には述べている。神政連は、明治以降の家父長的な家族形態を勝手に『日本の伝統』だと思い込み、明治の価値観にそぐわないLGBTQや姓名の多様なあり方をないものとして扱おうとしている。伝統であれば差別が許されるわけではないし、ましてや、いつの時代にもあったはずの多様性を無視した偏向的な伝統観にこだわって、差別を扇動するなどあってはならない」と憤りをあらわにしています。
2021年に実施された衆議院選挙の際、200人以上が神政連から推薦を受けているそうですが、こうした議員がLGBTQの権利擁護に反対している可能性は高いと思われます。旧統一教会の問題と同様、神政連と政策協定を結んでいる議員が誰なのか、政界への関与の実態が明らかにされるべきではないでしょうか。(神道自体は仏教と並び、いにしえからの日本の由緒ある宗教ですので、神道自体が旧統一教会のようなカルトだと見なされないようにするためにも、神政連の行ないが白日の下にさらされ、まともになっていくことを願います)
【追記】2023.5.2
今回の件を含めた一連の動向についてLGBT法連合会が、「性的指向・性自認を「治療」可能な「病理」と位置付ける言説について」という声明を発表しました。2022年6月に神道政治連盟で配布された冊子における、統一教会関係団体の機関紙「世界日報」の転載記事と、現在の国会における法整備への反対論が、そのトピックをほぼ同じくしていることも含め、一連の動向に強い懸念を持つとともに、注意喚起と最大限の遺憾の意を表明します、と述べられています。
また、性的マイノリティを精神疾患と位置付けることについて、国連人権高等弁務官事務所の、性的指向・性自認による差別と暴力からの保護についての独立専門家の報告では、性的指向や性自認の「治療」を試みる「転向療法」を受けたことによる深刻な被害が語られています。加えて、同報告には、国連の反拷問機構は「転向療法」が拷問や、残酷で、非人道的、または屈辱的な扱いに相当し得る、と結論づけたことも掲載されています。とのことです。
詳しくはこちらをご覧ください。
参考記事:
神政連がLGBTQを「精神疾患」と条例反対呼びかけ(東洋経済)
https://toyokeizai.net/articles/-/669659