NEWS

　G7広島サミットに向け、LGBTQ+の課題を議論し、提言する市民組織「Pride7（P7）」が21日、サミットでの議論促進などを求めるコミュニケ（政策提言）をLGBT理解増進担当の森雅子首相補佐官に提出しました。

　提言は、G7のうち日、米、英、独、カナダの5ヵ国にタイ、ベトナム、メキシコを加えた8ヵ国の計11団体でまとめられ、日本からはLGBT法連合会、Marriage For All Japan—結婚の自由をすべての人に、ヒューマン・ライツ・ウオッチの3団体が参加しています。
　3月30日のP7サミットでの議論を経てまとめられたコミュニケには、G7広島サミットの成果文書にLGBTQの課題を含めること、あらゆる政策分野において必要な法的、財政的、教育的措置を講じること、差別禁止法や婚姻の平等を保障する法律の制定など11項目への取組みを求めています。


　この日はまた、LGBTQ関連の法整備を求める5万6千筆の署名も森雅子首相補佐官に提出されました。
　呼びかけ人の松岡宗嗣さんは、「やっぱり一刻も早く法律を作らなければいけないって思いますし、G7までに作るのであれば、議論が始まっていなきゃいけない状況なので」と語りました。
　面会の中で森補佐官は「政府としても専門性をもって取り組まなければならない問題だと考えている。提言書は必ず総理に手渡します」と話したそうです。

　同日、超党派のLGBT議連は、衆院議員会館で役員会を開き、米国の同性婚実現の父とも称されるエヴァン・ウォルフソン弁護士と意見交換を行ないました。氏は「日本の全ての人々に婚姻の自由が実現されるよう、ぜひサポートしたい」と述べました。
　LGBT理解増進法案の今国会成立を目指して機運を高めるのがねらいだったそうです。

　こうしてTRPの前日に、国会周りでたくさんの動きがありました。
　果たしてコミュニティやアライの議員さんたちの願いが届き、政府は法整備に動いてくれるでしょうか。

　日刊ゲンダイの記事では、自民中堅議員の「選挙後に先送りを決め込んだ」との発言が紹介されています。また、自民ベテラン議員は「2年前の党内議論はシッチャカメッチャカだった。サミットというタイムリミットが近づいているのに、平場でイチから話し合おうものなら収拾がつかない。選挙が終わればすぐ連休。官邸は『差別は許されない』抜きの法案を出させ、GW明けに一気にまとめる腹のようです」と話したそうです。LGBT理解増進法案は2年前にLGBT議連での与野党の攻防のなかで「差別は許されない」という一文を入れることでギリギリの合意を見たのであって（詳細はこちら）、「差別は許されない」の一文が抜かれるというのはまさに「骨抜き」にされることを意味し、当事者が差別から守られない、実効性のない法案になってしまいます。作ったとしても、国際社会から何の評価も得られないでしょう。

　北海道新聞は、法案がたなざらしになっている現状について、「自民が議論にさえ及び腰なのは、統一選や衆参5補選が続く中、党内対立の激化は避けたい事情がある。首相は「自民の議論の進み具合を注視していく」と述べ、選挙後の進展に期待するが、議連幹部は「4月末から議論を始めてもサミット前の法案成立は難しい」と嘆いた」と指摘しています。
　
　毎日新聞で佐藤千矢子記者は、当事者団体が総理と面会したことや、性的マイノリティの子を持つ親たちの有志が「差別の禁止」を明記した法整備を求める要望書を提出した際のことを振り返り、「あの時、首相と面会した若者は、先週の記者会見で「勇気を振り絞って伝えたことが無意味だと思うぐらい、政府は『やってる感』を出している」と語った」と綴り、「首相らの行動は、単なるパフォーマンスだったのだろうか。「やってる感」さえ、今や薄れてきているように感じる」と訴えていました。
　

　
　

参考記事：
森補佐官へLGBT当事者団体が5.6万件の署名提出　G7広島サミット前の法整備訴え（TBS）
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/448717
LGBTQの差別禁止、婚姻の平等保障を　G7広島サミットに向け市民組織「Pride7」が日本政府に提言（東京新聞）
https://www.tokyo-np.co.jp/article/245464

「同性婚の父」と意見交換　超党派議連、機運醸成狙い（時事通信）
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023042100876

薄っぺらすぎる岸田首相の人権感覚…「LGBT法案」サミット直前やっつけ成立でお茶濁し（日刊ゲンダイ）
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321947

迫るＧ７広島サミット　ＬＧＢＴ法案たなざらし　自民・政府の本気度見えず（北海道新聞）
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/835056

首相の「やってる感」＝佐藤千矢子（毎日新聞）
https://mainichi.jp/articles/20230421/dde/012/070/003000c