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性的マイノリティの子を持つ親の有志の会が森まさこ氏に要望書を手渡しました
先月末、性的マイノリティの子を持つ親の有志の会が明確に差別の禁止を規定した「子どもたちの命を守る法整備」を要望したというニュースをお伝えしておりましたが、本日、有志の会代表の親御さん3人が参院議員会館を訪れ、政府のLGBT理解増進担当の森雅子首相補佐官と面会し、差別禁止規定を盛り込んだ法律の制定を求める要望書を手渡しました。息子がゲイである松岡成子さんは「子どもは大きくなるにつれて、親が守りきれなくなっていきます。今の社会では、打ち砕かれてしまう子も少なくありません。子どもの未来を守るため、差別禁止が必要です」と訴えました。
要望書は、「性的マイノリティの子どもたちの多くが、社会の深刻な差別によって被害を受け、苦しんでいる。自ら命を絶ってしまう人たちもいる。差別をしてはならないという基本的なルールの整備を」と訴える内容です。
親御さんたちと森補佐官との面会は報道陣には公開されませんでしたが、親御さんたちは森補佐官に、性的マイノリティの子どもたちの命を守るために「性的指向や性自認を理由とする差別的取扱いをしてはならない」と禁止規定を盛り込んだうえで、社会全体に対する理解を広げる法律の制定を一刻も早く実現することを要望しました。また、性的マイノリティの子どもたちについて、社会の深刻な差別によって苦しみ、自ら命を絶ってしまう人もいること、親や保護者にこそカミングアウトしづらい現状があり、家族から性のあり方を否定されてしまう人も少なくない、といった実情についても説明しました。
松岡さんは面会後、「森さんは『国会の議論を見守る』という立場だと話されましたが、ご自身も保護者ということで共感はしていただけたように思います。法整備に賛同するLGBTQ当事者の親や知人らからのメッセージをお伝えし、『子どもたちに将来に対しての希望や安全みたいなものを用意してほしい』などと伝えた際には、涙を流し聞いてくださる一幕もありました」と話しました。
トランスジェンダーの子がいる浦狩知子さんは、「当事者だとカミングアウトしたら、家族や身近な大人からも心ないことを言われる現状がまだある。差別を禁止する法律が必要だと伝えました」と語りました。
この差別禁止規定を盛り込んだ法の整備の要望に対する賛同者は2月下旬からの1ヵ月で1858人に上り、LGBTQの親や友人、教師や医師らから早急な改善を求めるメッセージが寄せられたといいます。その一部がハフポストの記事で紹介されています。
・先日の立場ある方の差別発言には心底失望しました。あなた方は自分の子供が性的マイノリティでも同じことが言えるのですか?と。これからを生きていく子ども達の為に法整備を含め、生きやすい社会となるよう心から願います。(親)
・息子たちがどのような性的指向なのか今のところ分かりませんが、可能性があると感じています。堂々と生きてもらいたい、その為にも法整備は必要だと思っています。(親)
・当事者である幼い子供(未就学)ですら「次に生まれてくる時(生まれ変わったら)女の子で産まれるしかないよね?(性が一致した身体で)」と今の人生を諦めるようなこの世の中を優しい世界に変えて行きたいです。(親)
・8才のトランスジェンダーの子をもつ母親です。校長先生から「私の理解が追いついていない」と、差別を受けていました。結果的に学校に通えなくなり転校しました。「理解増進」などという生ぬるい法案ではこの国の人権差別は何も変わりません。是非とも、この国の子供たちのために、「差別禁止法案」を作ってください。平気で人を差別して苦しめるような人間ばかりの日本であっていいのでしょうか。トランスジェンダーは酷い言葉を浴びせられたり差別されても我慢しなければならない存在なのでしょうか?それは絶対に違います。誰一人、差別をされて良い人間などいないのです。この国も、他の先進国同様に法律で守ってください。どうか、よろしくお願い申し上げます。(親)
・「理解」という言葉に違和感を感じています。理解されようがされまいが、基本的人権は守らなければならないのに。法律で差別を明確に禁止することに強く賛成します!(友人)
・ゲイの友人が、自身の性的指向を家族に打ち明けられず苦しんでいました。今、こうして当事者の子を持つ親がこのような活動を立ち上げていることに大きな希望を感じると共に、強く賛同します。私も1人の大人として、子どもたちの命を守りたいです。(友人)
・トランスジェンダーをめぐる昨今の言論を見るに、「差別はしてはいけません、でも…」と前置きさえすれば後に何を続けても許される風潮があると痛感させられます。どのような事情、言い訳があろうと差別は差別であると拒む枠組みの必要性を感じています。(友人)
・学校現場でも、家族に打ち明けられず悩んでいる生徒がいます。教員の中でも、カミングアウトされていないことから、自分の学校には、いないと思っている教員もいます。一刻も早く法の整備をお願いします。(教員)
・世の中には正当な差別などありません。全ての差別は不当です。子どもたちが自己肯定感を持って暮らせるためにも、差別を容認しないという姿勢を明示した法律の制定を、是非ともお願いします!(教員)
・性別違和を抱える方の診療を行なっています。当事者の多くが学校生活に困難を感じており、中にはそれを理由に不登校となることも少なくありません。学校の対応にもバラつきがあるように感じます。この現状の早急な改善を求めます。(医者)
一方、国会では本日、参院予算委員会で辻元清美議員が、G7サミット前にLGBTQ差別禁止法を制定し、議長国としてコミュニケにもLGBTQの権利について盛り込むべきだとして岸田総理に質問を行なう場面がありました。
昨年のエルマウサミットでのコミュニケには「我々は、女性と男性、トランスジェンダー及びノンバイナリーの人々の間の平等を実現することに持続的に焦点を当て、性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、 誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全なコミットメントを再確認する」と書かれていますが、辻元議員は「差別や暴力からの保護と書かれている。差別禁止ですよ。理解増進ではない。これより後退することはできないのではないか」と問いました。総理は「政府としては、引き続き、多様性が尊重され、全ての人が互いの人権や尊厳を大切にする社会を実現していくということであり、G7サミットに向けて議論を整理していかなければいけない。差別禁止法案については、すでに議員立法として国会に提出されていると承知している、超党派議連で合意された理解増進法については、自民党を含め議論の途上にあり、議論を政府として見守る所存である」と答弁しました。
辻元議員は「理解増進法では笑われますよ。だから日本以外のG7各国が書簡を出したのです。こちらは読みましたか?」と質問し、総理は「手紙について、やりとりがあったかどうか申し上げることは控えている」と答えました。
さらに、「エマニュエル米国大使は先月の記者会見で、性的マイノリティを保護するための明確で曖昧さのない法律を制定することを望んでいる、この問題に関する岸田首相のリーダーシップに完全な信頼を寄せていると語っています。これは差別禁止法を望んでいるという意味でしょう」と質問し、総理は「G7の首脳コミュニケについては、昨年の成果を踏まえて、関係国と議論を行ない、内容を確定していきたい。大きな方向性は明らかであると認識している。国内における取組みは、そういう方向性に基づいて議論したい」と答えました。
その後も辻元議員は、バイデン政権で約200人ものLGBTQが働いていること、英国のロングボトム大使が、長女が同性婚したことに触れてて「LGBTQの権利保護の早期実現で日本に協力したい」と語ったこと、経団連会長の発言や経団連が6年前に行なった提言などを踏まえながら、「総理、G7のコミュニケ、去年よりも後退はさせないですよね。性的指向・性自認による差別の禁止が国際社会のスタンダードだと踏まえてください」「差別禁止法を成立させた方が議長国として堂々とやれますよ」と問いました。総理は「関係国と調整。いまは確定的に言えない」「性的指向・性自認による差別はあってはならない。多様性が尊重され、全ての人が互いの人権や尊厳を大切にする社会を実現する方向で取組みを進めていく所存。その中で、現実の課題について、丁寧に取り組んでいきたい」と答えました。(こちらの3/28予算委員会の動画にやりとりが記録されています)
内外でこれだけ法整備を求める声が上がっているにもかかわらず、差別禁止法についても理解増進法についてもG7サミットまでに成立させるつもりがないとの答弁でした。そして、G7議長国として発するコミュニケで昨年のエルマウで合意された内容よりも後退させるこはないという確約もなく(日本以外の国がLGBTQの権利保護を求めているのは明らかであるにもかかわらず)、また、G6+EU大使からの書簡を受け取ったかどうかも明言を避けるという、残念な答弁でした。
参考記事:
「性的マイノリティー差別を禁止する法律を」当事者の子を持つ親たちが要望書 森雅子首相補佐官に届ける(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/240697
自殺する子もいる、理解増進では生ぬるい。LGBTQへの差別禁止を求めた要望、森まさこ補佐官の反応は(ハフポスト日本版)
https://nordot.app/1013388340433862656?c=516798125649773665
G7サミット成果文書にLGBTQ権利保護盛り込む意向 首相「大きな方向性は明らか」と強調 参院予算委(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/240695