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格闘家が、脅迫で中止になりかけたドラァグ・イベントの警備を申し出ました
信じがたいことに、米国では今、ドラァグクイーンのショーを規制しようとする動きがあります。2015年に婚姻平等(同性婚)が実現して以降、アンチLGBTQ勢力が攻撃のターゲットをトランスジェンダーに変え、共和党の政治家が多数を占めるような保守的な州で、自認性でのトイレ利用を禁止したりスポーツ参加を禁止したり若いトランスジェンダーに二次性徴抑制剤や性ホルモン剤を処方することを禁じるなどのいやがらせのような州法を定めようとする動きが激しくなっています。こうしたアンチLGBTQの流れの一環として、ドラァグ・ショーも“子どもに悪影響”だなどとして規制しようとする動きが出ているそうです。
全米で初めて、テネシー州のビル・リー知事(共和党)は3月2日、ドラァグ・ショーを制限する法案に署名しました。法案は、公共施設や「成人でない人が見る」可能性のある会場でのドラァグ・ショーを禁止しており、公共の場でドラァグ・パフォーマンスを行った者は軽犯罪、繰り返し行なった場合は重罪の対象となるとされています。7月1日に施行されるこの法律に初めて違反した場合、最高で11ヵ月の禁固刑と2500ドル(約34万円)の罰金が、さらに違反した場合は1年〜6年の禁固刑と最高で3000ドル(約40万円)の罰金が科せられる可能性があるそうです。この法案には「ドラァグ・ショー」とは明記されておらず、「大人のキャバレー公演」を制限するもので、「男性や女性に扮すること」と「トップレスダンサー、ゴーゴーダンサー、エキゾチックダンサー(および)ストリッパー」が出演するイベントと定義されているそうです。
共和党のジャック・ジョンソン州上院議員は、この法案は「未成年の観客には不適切な、性的に露骨なドラァグ・ショーから子どもたちを守る」ことを目的としていると述べています。このようなアンチLGBTQの論者の主張に応じたかたちで、2023年に、自由の国アメリカで「女装罪」が成立したことに驚愕させられますし、暗澹たる気持ちにさせられます。
人権団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」は、ドラァグ・ショーをストリップクラブになぞらえLGBTQに「危険な存在」というレッテルを貼ろうとするものだと批判しています。「ドラァグ・パフォーマンスを含むLGBTQのイベント、スペース、文化を禁止するという危険な行為は、LGBTQコミュニティに対する大規模な攻撃の一部である」
ここ数週間、ドラァグ・パフォーマンスを禁止しようとする動きが活発化していて、その矛先は米国を拠点とする非営利団体が主催するドラァグ・クイーンによる絵本の読み聞かせイベントに集中しているそうです。アンチ勢力は、このイベントが“子どもを性的な目で見るものだ”という意味不明な主張をしているそうです。
同様の法案は、テキサス、アリゾナ、オクラホマ、ノースダコタ、カンザスの州議会にも提出されているといいます。
こうしたなか、ウェストバージニア州で企画されていたドラァグクイーン・イベントが脅迫に遭って中止に追い込まれそうになり、ストレートの格闘家のみなさんがイベントでの警備を申し出るという出来事がありました。
ペンシルベニア州を中心にドラァグ・ショーなどを開催している「S&S Productions」が2月末、お隣りのウェストバージニア州のウィーリングという街でドラァグ・ブランチ(日中に飲食をしながらドラァグクイーンのショーを楽しむイベント)を企画していたところ、「(会場の)Primantis、エンターテイナー、そして一部のお客さまに対する脅迫が相次いだため、関係者全員の安全のためにイベントを中止することにしました」とFacebookでアナウンスされました。この報せを聞いて、ウェストバージニア州で総合格闘技ジム「Ohio Valley MMA」を運営するプロボクサーのジョニー・ハートが立ち上がり、「俺らイジメは嫌いなんだよね…」「人々が自由に好きなことができるように、俺らファイターたちが警備に立ちます」とFacebookにコメント、ジムのメンバーたちがボランティアでセキュリティを買って出るとオファーしました。
その後、地元のテレビ局からの取材を受けたジョニー・ハートは、「ドラァグ・ショーは、ブロードウェイのショーやスタンダップコメディと同じで、不快なものじゃない。要するに、両方のミックスなんだ」と説明。彼のもとには書き込みの後、匿名の脅迫電話がかかってきて「お前もドラァグクイーンか」というようなことを言われたようですが、「俺は確かに素晴らしい脚とお尻をしてるが、ドラァグ・ショーに出られるようなメイクの技術はないんだ」と、余裕のジョークを飛ばしたそうです。
本当にカッコいい兄貴たち。拍手!です。
このような、ドラァグクイーンやトランスジェンダーを守ってくれる方たちがたくさん現れたら、「世の中捨てたもんじゃない」と思えるし、実際に世の中がいい方向に変わっていきそうですね。
参考記事:
テネシー、ドラァグショーを規制する最初の州となる(Forbes JAPAN)
https://forbesjapan.com/articles/detail/61387
「イジメは嫌いなんだよね...」格闘家たちが脅迫相次いだドラァグショーの警備を申し出る(フロントロウ編集部)
https://front-row.jp/_ct/17611108