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【同性パートナーシップ証明制度】島根県は10月から、室蘭市、別海町、石巻市、南丹市も導入へ、杉並区で条例制定など
今年中に「パートナーシップ宣誓制度」を導入するとしていた島根県ですが、丸山達也知事が14日の定例会見で「多様な性への県民の理解を進めるとともに、性的マイノリティのカップルが抱える困りごとが少しでも解消され、誰もが自分らしく暮らせる社会の実現を目指したい」と述べ、今年10月1日に制度をスタートさせると発表しました。
成年に達していて、いずれか一方が県内在住または転入予定であれば、事実婚カップルを含め、宣誓することができ、松江市か浜田市の人権啓発推進センターで宣誓を行なうと、島根県パートナーシップ宣誓書受領カード等が交付され、公営住宅の入居申込みや病院での面会・病状説明などが認められるようになります。また、今後その内容を拡充していくとしています。
県によると、県内すべての自治体が協力する意向を示していて、利用開始に向けた調整が行なわれるそうです。また、県は民間の不動産契約や金融機関での住宅ローン契約などについても、制度利用者が契約できるよう働きかけていくそうです。
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和歌山県の岸本周平知事は先月22日にも「基本的人権、憲法13条の問題だと思っている。全ての個人に幸福追求の権利がある以上、同性婚も認められるべきだと考えている」として「パートナーシップ宣誓制度」の導入に向けて前向きに検討する方針を示していましたが、要綱ではなく条例の制定を検討するなど、さらに詳しい情報が届きました。
県の「パートナーシップ宣誓制度」は、現在の法律上では婚姻できない同性カップルや、姓を変えたくないなどの理由で事実婚を選んでいるカップルをパートナーとして公的に認めるものです。制度が導入されると、パートナーが公立病院に入院した際に病状の説明などを受けられるほか、公営住宅に入る場合に家族として認められます。
岸本知事は、憲法13条の幸福追求権にもとづき、「LGBTQの皆さんの権利をどのようにしたら守れるかという観点で検討したい。(制度も)一つのやり方だ」と語りました。岸本氏は、性的少数者の人権を尊重し、守っていくための条例についても、県が制定していない障害者差別解消条例などとあわせて検討したいとしています。
県内では橋本市が「パートナーシップ宣誓制度」を2022年から導入しており、那智勝浦町も4月から導入予定です。
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徳島県議会では7日、同性のカップルをパートナーとして認める制度の導入を県に求める請願が全会一致で採択されました。
請願は「レインボーとくしまの会」が県議会に提出していたもので、同性のカップルを結婚に相当する関係と公的に認め、カップルと一緒に暮らす子どもも家族として公的に認めることを県に求めています。
請願の採択を受けて、飯泉知事は「多様な個性や価値観が重用される社会の実現が求められている。採択を重く受け止め、制度の創設に向け対応を進めていきたい」と語りました。
「レインボーとくしまの会」の長坂航代表は、「請願が採択され、やっとスタートラインに立てたと思っている。県は議会の採択を深く受け止め制度を導入してほしい」と語りました。
パートナーシップ制度に詳しい鳴門教育大学の葛西真記子教授は、県民を代表する議会で請願が採択されたことは重いと評価したうえで、「徳島県内には制度の導入を待ち焦がれている人がいる。県の実行力はとても重要だ」と話し、すべての市町村が導入できるよう、県が後押しすべきだと語りました。
徳島県では徳島市、阿南市、鳴門市など9つの市と町で制度が導入されています。
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岐阜県では2020年に古田肇知事が制度導入を検討していく考えを示しました。その後、特に進展は聞かれなかったのですが、10日の県議会で古田知事が一般質問に答えて「導入した場合の制度的な課題を検討したい」として、議論を続ける方針を示しました。
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今月1日から「県パートナーシップ宣誓制度」がスタートした富山県では、10日間で4組の宣誓があったそうです。13日の県議会で、新田八朗知事が質問に答えて明らかにしたものです。
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北海道室蘭市が9日、同性パートナーシップ証明制度を2024年度にも導入する考えを明らかにしました。今年度中に制度導入に向けた検討委員会をつくり、協議を進めるそうです。
市は当初「市民理解が深まっていない」などとして導入に消極的でしたが、他自治体の動向も考慮し、昨年3月の定例市議会で導入に向け検討を進める考えを示していました。
道内ではすでに札幌、帯広、苫小牧など7市で導入されています。
同じく北海道の別海町でも13日、「パートナーシップ宣誓制度」導入を検討するとされました。町議会での質問に対し、佐藤次春副町長が「制度を設ける自治体の例が増えている。積極的に調査研究を進め、前向きに検討したい」と答弁したものです。
一方、曽根興三町長は「小さな町では制度利用者の身元が特定されやすく、不利益が生じることも考えられる。さまざまな課題を念頭に検討することが必要だ」と述べ、「現時点で導入予定はない」としました。
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宮城県石巻市が、制度導入に前向きな姿勢を示しました。14日の市議会で質問を受けた斎藤正美市長が「石巻のためになるといろいろな角度から思う」と述べたものです。
市は前年度に市民意識調査を実施しましたが、その結果、性的少数者やLGBTという言葉の認知度は高かったものの、内容の理解度が低かったと説明し、まずは研修や啓発事業で意識の醸成を図るとし、斎藤市長は「一歩も二歩も前に進める」と語りました。
宮城県は実は、制度を導入済みの自治体も、導入すると表明した自治体もない、全国で唯一の県です(仙台市では2021年に男女共同参画推進審議会が制度の検討を求めましたが、市からはまだ前向きな回答が得られていません)
石巻市議会で質問した議員は「市でいち早く検討すべきだ」と求めました。
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こちらのニュースでもお伝えしていたように、山形市では今年、制度導入を求める団体「やまがたパートナーシップ制度を求める会」が発足し、署名を集めるなどの活動をしてきましたが、13日、同会のメンバー9名が山形市役所を訪れ、佐藤孝弘市長に制度導入を求める要望書と、要望に賛同する県内外467人の署名を手渡しました。
要望書では、市に対し、制度を導入し、公営住宅への入居やパートナーの公立病院での手術への同意などを可能とすることで、性的マイノリティの人たちが住みやすい街にするよう求めています。
佐藤市長は「多様性を尊重する社会が非常に大切なことだと思い、市でも今、まさに当事者の声を聞く取組みをしている。制度の導入について今調べているので、中身をしっかりと検討していきたい」と話しました。
団体の代表を務める池田弘乃山形大准教授は、「県内では酒田市が先駆けとなるが、山形市もリーダーシップを発揮してもらって進んでもらえたら非常にうれしい。当事者が具体的にどんなニーズをかかえてるのか広く知られていない。今回の要望をきっかけに、今後の政策にぜひ反映してほしい」と語りました。
また、山形大4年の田近莉沙さんは、「(卒業後は)山形をいったん離れるが、また戻ってきたいなと思える山形にしてもらいたい」と訴えました。
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京都新聞は「Our Voices ~性を考える~」という特集記事で、SNSで出会った19歳と23歳の女性カップルをフィーチャーしています。お二人は京都府亀岡市の「パートナーシップ宣誓制度」を利用し、人生の新たなスタートを切ったそうです。
その記事のなかで、京都府内では京都市、亀岡市、長岡京市、向日市、福知山市で制度が導入され、府内全体で122組(2月末時点)が宣誓したと伝えられていました。
また、丹波地域の南丹市でも2023年度から制度の導入を議論することになっているそうです。西村良平市長が市議会の代表質問で「前向きに検討したい」と発言、審議会で課題提起するとのことでした。
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昨年9月、岸本聡子区長が所信表明演説で「杉並区版パートナーシップ制度の年度内の条例化を目指して準備を進めていきたい」と述べていた東京都杉並区ですが、「杉並区パートナーシップ制度」だけでなく「性の多様性条例」の骨子案も12月に示され、区民向け説明会やパブリックコメントを経て、3月15日、区議会で賛成多数で成立しました。めでたしめでたし、で終われたらよかったのですが、実はこの条例に対し、(他の自治体でも同様の動きがあったり、一部の議員などがこのようなデマに踊らされてトランス排除言説をしてしまっていますが)“性自認の差別禁止を認めると女装した男性が女湯に入ってくるようになる”などと言って区役所前などで条例に反対するアンチの街宣活動が行なわれてきました。12月の区民向け説明会では「典型的なヘイトスピーチであり、トランスジェンダーの当事者をひどく傷つけ、脅かすものである。区はこれをやめさせることはできないのか」といった意見が相次ぎました。
杉並区が素晴らしかったのは、岸本区長誕生を応援していた市民や野党系の区議などアライの方たちが「杉並から差別をなくす会」を立ち上げ、ヘイト街宣に対してカウンターを行なったり、3月10日には「性の多様性条例」「杉並区パートナーシップ制度」に賛同する街宣を区役所前で行ない(賛同者が3日間で126人も集まりました)、条例制定への思いを語り、チラシを配るなど、さまざまなかたちでLGBTQを支援する活動を展開したことです。hrkさんという方の投稿によると、3月6日の予算特別委員会での審議で、トランスヘイトの問題について複数の区議の方が質問し、条例制定によってトランスジェンダーによる性犯罪が増えるわけではないこと、犯罪を抑止し取り締まる法の運用も変わるわけではないことが確認され、区の担当の方が「トランスジェンダーの人たちについて、属性をもって犯罪と結びつけることは合理性に欠ける」「「性自認」は性のあり方の一形態と捉えており、尊重されるべきもの。条文に載せて尊重する」「差別的言動が現在区内で行なわれていることを受け止め、条例の主旨に沿って、性の多様性が尊重される地域社会の実現に向けてきちんと区民の理解、協力が得られるように、啓発に取り組んでいく」と答弁し、最後に区長も「性の多様性を尊重する条例が制定されたあとは、組織横断的に差別に対する取組みを今後益々充実させていく」と語りました。区長は議会での条例の成立後、「区民に心配や誤解があるので条例をきっかけに解消していきたい」とも語っています。
あまりメディアには取り上げられていませんが、驚くほどたくさんのアライの方が、トランスジェンダーのこともきちんと理解したうえで、差別をやめさせ、条例制定を後押しするために活動してくださっていて、頭が下がる思いでした。
参考記事:
県が「パートナーシップ宣誓制度」10月に導入へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/matsue/20230315/4030015508.html
「パートナーシップ宣誓制度」10月からスタートへ 島根県(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/378209?display=1
島根県がパートナーシップ制度導入へ 10月から、全市町村とも連携(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR3G6SMKR3GPTIB00D.html
パートナーシップ宣誓制度導入「前向きに検討」 和歌山県知事(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR396R21R39PXLB003.html
同性カップルパートナー制度導入 県に求める請願 県議会採択(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tokushima/20230307/8020016971.html
パートナーシップ「制度の課題検討」 県議会で知事、議論続ける方針(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/651515
10日間4組宣誓 県パートナーシップ制度(北日本新聞)
https://webun.jp/articles/-/363678
室蘭市、パートナー制度24年度にも導入 検討委設置し協議(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/813820/
パートナー制度「積極的に研究」 別海副町長(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/815395/
石巻市議会 性的少数者パートナーシップ制度導入、市長前向き(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20230315khn000015.html
「パートナーシップ制度」の導入求め山形市長に要望書(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yamagata/20230313/6020016943.html
「パートナーシップ制度導入を」山形市長に要望書を提出(山形放送)
https://www.ybc.co.jp/news/?news_id=news119tk0sg6k7byni5oi5
山形市長にパートナーシップ制度導入を要望「住みやすい街に」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR3F71RTR3FUZHB00X.html
パートナーシップ制度の創設求め、山形市に市民団体要望書(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20230314khn000071.html
特集「Our Voices ~性を考える~」SNSで出会った19歳と23歳の同性婚、宣誓制度の存在で住む場所決めた(京都新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/983484
パートナーシップ制度 杉並区が4月から導入(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/238296