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荒井氏更迭後も批判の声が続々、署名も立ち上がりました

荒井氏更迭後も批判の声が続々、署名も立ち上がりました

 荒井総理秘書官の差別発言をめぐり、更迭後も「これで幕引きするのは許されない」との批判の声や、法整備を求める声が上がっています。各方面から上がった声をまとめてご紹介します。併せて、有志の方たちが立ち上げたオンライン署名もご紹介します。

 
 一般社団法人fair代表の松岡宗嗣さんは、「こんなド直球の差別発言が政権中枢から出てくることに衝撃を受けた」「(秘書官室もみんな反対するという発言もあったことについて)「政権中枢が同じような考え方で固められているということ。根深い差別感情を感じる」「政権がこのような人権感覚では、5月に主要7カ国首脳会議(G7サミット)を開催する資格は到底ない。改めて国民に『性的少数者の差別は許されない』というメッセージを出すとともに、当事者の権利を保護する法整備を進める必要がある」と語りました。
 
 「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟の原告であるこうぞうさんは、「紛れもない差別的な言葉。その言葉の刃の先には、僕自身も、大切なパートナーも、僕たちが法律上でも家族になることを願ってくれている家族もいる。むき出しの悪意に触れて、涙が流れました」と語りました。今回の発言は失言ではなく、(政権中枢で)日常的に差別的な発言があったのではないか」「僕らが望んでいるのは特別な権利ではなく、当たり前の穏やかな暮らしです」

 「結婚の自由をすべての人に」東京訴訟の原告で、同性パートナーと子育てしながら暮らす小野春さんは、「胸が苦しくなり、生活が脅かされているような気持ちになった」と語りました。「性的少数者を見たことがないから奇妙なものを想像しているのかもしれない」とした上で、「私たちの実態も知ってほしい」

 NPO法人カラフルブランケッツ理事長で、全国で「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」を開催してきた井上ひとみさんは、「ただ生きていることすらだめと言われたのと同義だ。当事者は本当に身近にいるのに可視化されていない現状がある」と語りました。
 
 NPO法人虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さんは、「今回の発言にはあきれ返っており、ハラスメントというよりは差別発言だ」「人権は等しくみなにあるはずなのに、日本のトップはそれすら理解していない」「首相がこういった差別発言を言える環境、雰囲気をつくっている」と語りました。

 大阪大の牟田和恵名誉教授(社会学)は、「差別発言であり、許されない」と述べ、「(岸田首相の「社会が変わってしまう」発言に触れて)首相の発言があったからこそ、迎合するような気持ちで発言した可能性がある」とも指摘しました。

 三重県伊賀市でさまざまに活動している嶋田全宏さん&加納克典さんのカップルは、「またか、と脱力感に襲われた」「当事者じゃない人にも知ってもらおうと地道な努力を積み上げている。この発言はしんどい」「自分の性を否定して苦しんでいる未成年が希望を失ってしまわないか」と語っていました。

 名古屋のNPO法人プラウド・ライフ代表理事で、以前虹色どまんなかパレードを主催していた安間優希さんは、「(LGBTQへの)否定的な価値観を『好意的に受け入れてくれる人たちもいる』という考えが根底にある」と指摘し、「いくら表面的に制度を整えても、人々の意識が変わらなければ、生きづらさは解消されない」と語りました。

 北海道の当事者団体「江別SOGIの会」の舘内孝夫会長は、「失礼極まりない発言で、怒りを超えてあきれた」「すでに多くの当事者が同性婚を求めて海外へ流出しており、全く逆の話をしている。LGBTQに対する不勉強が差別発言につながったのではないか」と非難しています。

 「北海道LGBTネットワーク」の桑木昭嗣代表は、「政府の要職にある人がこんな人権感覚を持っている人ばかりなのではないかと、恐ろしさを覚える」と語りました。

 レズビアンであることをカムアウトしたタレントの一ノ瀬文香さんは、毎日新聞の取材に対して次のように語りました。
「同性愛カップルは結婚が法的に認められないため、パートナーが亡くなったときに2人で購入した自宅まで遺族に取り上げられたケースなど、現在に至るまで大変な理不尽な目に遭い、悲しい思いをしている性的少数者の人たちがいる。差別的な発言を決して許してはいけない。
 あらゆる人々が自己受容でき、さまざまな他者を尊重することで、誰にとっても幸せな社会になってほしいと思う。(同性婚を認めても)同性愛者にとって幸せな選択肢が増えるだけで、同性愛者でない人にとっては何も変化はない。何を恐れているのだろうか。
 政権を担う与党には、現実を直視し、家族の在り方に寛容な保守であってほしいと思う。自民党内にも、まだ一部ではあるが、LGBTQの実情に詳しく、社会の世論と党内とのギャップを感じている人もいる。党全体で学び、行動してもらいたい。
 LGBTQに関する講演を各地でしていると、LGBTQに対して悪意を持ち「差別してやろう」と思っている人は少ないと感じる。多いのは「無自覚の差別」だ。男や女はこうあるべき、幸せな生き方はこうあるべき、理想的な姿は皆同じだ、という「思い込み」の強さからくるものだ。その思い込みがなくなれば「自分はこんなはずじゃなかった」と、理想とのギャップで苦しむ人もいなくなる」
 
 石川大我参院議員は4日、「孤立した人たちをさらに追い込むことになり、許されない発言だ」とのコメントを発表しました。
「荒井秘書官は総理のスピーチなどの原稿を担当しているという。「社会が変わってしまう」という予算委員会での岸田総理の裏にはこうした考えがあったということが国民の前に明らかになった。全国にはLGBTの当事者であることすら周囲に言えず苦しむ当事者が多くいる。こうした孤立した人たちをさらに追い込むことになり許されない発言だ。「岸田内閣は多様性を認め包摂的な社会を目指す」とするのであれば、同性婚について法制審に諮問するなど具体的な行動で示すべきだ。
 総理も同性婚制度を導入すべきとの質問に「社会が変わってしまう」というのであれば、どう変わるのか、説明する責任がある。
 5月にG7を控えている。G7で同性同士のパートナーに法的保障を与えていないのは日本だけだ。欧米各国は同性婚を人権の問題として捉えている。こうした発言が政権中枢から聞こえてくる中、果たして議長が務まるのか。
 杉田水脈氏を政務官に任命し、「同性愛は種の保存に背く」と発言したとされる簗和夫副大臣を続投させるなど、岸田政権はLGBT嫌悪が抜けきれていない。荒井氏は「秘書官室もみんな反対」と話しており、他の秘書官が荒井氏のような差別的考えを持っているのであれば秘書官の総取替えが必要ではないか。
 「同性婚について社会的にマイナス」「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」「見るのも嫌」など、同性婚に6割以上の人が賛成している日本で、同性愛嫌悪をここまで明らかにする人は珍しい。LGBTに否定的な自民党政権を忖度(そんたく)してそのような発言をしたのか、自身の考えなのか、説明すべきだ。
 「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」というが本当にそうか?日本で同性婚が認められないので、仕方なく外国人パートナーのいる外国に行く人は何人も知っているが、異性愛者が自分とは関係ない同性婚制度があるから国を捨てるなど、同性婚を導入した国で聞いたことがない。荒唐無稽な言いぶりで差別を煽るやり方で悪質だ」

 NPO法人レインボーハートプロジェクトokinawaのの竹内清文理事長は、「生きているだけで疎まれるんだと思うと、ぐさっと来る。全然平気じゃない」と語りました。

 ピンクドット沖縄の高倉直久代表理事は、岸田首相が多様性を政策に掲げるが、周囲に浸透させきれていないと指摘し、「意識が低過ぎる。ちゃんと理解していればあのような発言にはならない。政策は口先だけのパフォーマンスと思われても仕方ない」「(同性婚制度などの問題について)あまり勉強されておらず関心がないのでは。苦しんでいる人はたくさんいる。そういう人に手を差し伸べるのが誰一人取り残さない社会ではないのか」と語りました。

 ジェンダー法に詳しい琉球大法科大学院の矢野恵美教授は、荒井氏だけでなく、政権全体に根深い差別意識があるのではないかと疑いの目を向け「首相は、G7で日本だけ(同性カップルの)制度がないことをどう考えているのか。制度化することで社会が悪い方向に変わると考えているのなら、その根拠を示すべきだ」と指摘しました。



 新聞社も社説やコラムで批判しています。
 毎日新聞は「同性婚巡る差別発言 露呈した政権の人権感覚」と題した社説を掲載し、「「多様性を認め合う社会を目指す」との政権の姿勢は、口先だけだったと言われても仕方がない」「(荒井氏の発言は)社会に根強く残る偏見に苦しんでいる人たちを傷つけるものであり、人権感覚の欠如が甚だしい」「そもそもの発端は、首相の国会答弁だ」「国民の不安感をあおるような発言である。当事者への配慮も欠いている」「背景には、保守派を中心とした自民党内の根強い反対論がある。LGBTQなど性的少数者に対する国民の理解を深める法案も、たなざらしになっている」「多様性を掲げるなら、日本も法制化に乗り出すべきだ。あらゆる人の権利が尊重される社会にしなければならない」と訴えました。
 
 朝日新聞も「側近の差別発言 「包摂社会」は口だけか」と題した社説を掲載し、「耳を疑う差別発言」「政権の人権意識の欠如が厳しく問われねばならない」「首相の側近といっていい、重い公的な立場にある者の、差別意識丸出しの放言に、驚きあきれるほかない」「首相は昨年夏の内閣改造で、性的少数者を差別したり、ジェンダー平等を否定したりする言動を繰り返していた杉田水脈衆院議員を、総務省の政務官に起用。昨年末に更迭せざるをえない状況に追い込まれるまで、かばい続けた。これでは、首相自身の人権感覚が疑われる」と述べました。

 沖縄タイムスの社説「首相秘書官差別発言 人権感覚を疑う暴言だ」も舌鋒鋭いです。「偏見と差別に基づく許しがたい暴言だ。政権中枢での発言であり、岸田文雄政権の人権意識が問われる」「更迭で済む話ではない」「荒井氏の発言は元々、首相の答弁を受けたものだったという点も看過できない」「首相は発言を糾弾するなら、自身と政権の認識も説明すべきだ」と述べたあと、「岸田政権では、性的少数者への偏見・差別発言が取り沙汰された議員の登用が相次いだ」として、杉田水脈氏や「生物学上、種の保存に背く。生物学の根幹にあらがう」と述べた簗和生氏を登用してきた「首相の人権感覚に疑問符が付く」と述べています。「公的な立場からの差別発言が、社会に与える影響は大きい。表に出なければ、偏見や差別を持ち続けてもいいという間違ったメッセージで社会を分断する危険性もある」「問題は政権の中にこそあると言わざるを得ない。首相の任命責任が問われる」

 中國新聞の社説「首相秘書官更迭 政権の感覚が問われる」では、「首相はきのう、全ての人々の人権や尊厳を大切にする共生社会の実現に取り組む、とも口にした。これは社会を変えるという意味ではないのか」と指摘されています。「週明けの国会では、政権の姿勢がただされるのは避けられまい。首相は原点を見つめ直し、人権や多様性をどう守っていくのか、きちんと説明することから始めるべきだ」

 北海道新聞の社説「荒井秘書官更迭 政権の差別体質を疑う」では、「取り返しのつかない問題発言だ」「首相が性的少数者の人権を軽んじていると受け取られても仕方がない。政権の体質が図らずも現れた差別発言と疑わざるを得ない」と指摘されています。「首相の言う「多様性の尊重」の本気度が問われている。首相は「任命責任を重く受け止める」と述べた。ならば、自らの答弁も含め、政権が掲げる方針との整合性を説明する必要がある」

 秋田魁新報のコラム「北斗星(2月5日付)」では、こう述べられています。「性的指向による差別に世界の視線は厳しい」「首相も1日の衆院予算委員会で「社会が変わってしまう」と制度化に否定的な考えを示したばかり。多様性が尊重される社会を目指すという政府方針は看板倒れか」「差別や偏見をなくそうという動きは各地に広がる。だが政権中枢からの差別発言は国全体の人権意識が疑われても仕方がない。政府が足を引っ張ってどうするのか」
 
 東京新聞のコラム「筆洗<顔も見たくないほどあなたに嫌われるなんて>」はユニークです。弘田三枝子さんのヒット曲「人形の家」の歌詞「顔も見たくないほどあなたに嫌われるなんて」には、作詞家のなかにし礼さんが満州から引き揚げる際に国に見捨てられたときの思いが反映されていたというエピソードを引用しながら、「発言とその言葉の主が国家の中枢にいる人物であることに切ない歌詞を思い、くやしくなる」「秘書官が多様性を尊重するどころか、性的少数者を敵視している。公僕たる官僚が、である」と述べ、「発言は性的少数者への憎悪をあおる危険もある。更迭は当然だが、起用した岸田さんも嫌われ、さらに支持を失うだろう。<顔も見たくないほど>にか」と結んでいます。
 
 
 それから、有志によるオンライン署名が立ち上げられたことをお伝えします。岸田政権にLGBTQの権利を保障するよう求めるものです。よろしければ拡散、ご協力をお願いいたします。
 ひとつは、「更迭だけで終わらせない! #岸田政権にLGBTQの人権を守る法整備を求めます」で、LGBT差別禁止法(性的指向や性自認に関する差別的取扱いを禁止する法律)や、同性婚(婚姻の平等)、法的性別変更に関する非人道的な要件の撤廃(性同一性障害特例法の改正または新設)について、早急な法整備の実現を求める内容です。
 もうひとつは、「今こそ同性婚を認めさせよう あらゆる差別をなくすために連帯 荒井総理大臣秘書官の差別発言を受けて」で、岸田首相や荒井秘書官の発言に抗議しながら、LGBTQコミュニティに連帯を呼びかけ、岸田政権に同性婚(婚姻の平等)等の実現を求める内容です。
 
 

参考記事:
悪意に涙、穏やかな暮らし望む 秘書官差別発言、当事者は(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15547681.html
「あきれた」「許されない」 荒井首相秘書官発言に性的少数者ら(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023020400427
秘書官発言に性的少数者ら失望、憤り 「またか」「価値観が周回遅れ」(中日新聞) 
https://www.chunichi.co.jp/article/630470
「寛容な保守であって」 タレント・一ノ瀬文香さん、自民へ直言(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230205/k00/00m/040/112000c
同性愛公表の石川大我参院議員「孤立した人さらに追い込み許されず」荒井秘書官発言でコメント(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202302040000791.html
「生きているだけで疎まれるんだ…」首相秘書官の同姓婚巡る差別発言、沖縄の当事者も反発(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1659036.html

<社説>同性婚巡る差別発言 露呈した政権の人権感覚(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230205/ddm/005/070/068000c
(社説)側近の差別発言 「包摂社会」は口だけか(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15547594.html
[社説]首相秘書官差別発言 人権感覚を疑う暴言だ(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1098862
首相秘書官更迭 政権の感覚が問われる(中國新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/267317
北斗星(2月5日付)(秋田魁新報)
https://www.sakigake.jp/news/article/20230205AK0016/
<コラム 筆洗><顔も見たくないほどあなたに嫌われるなんて>。弘田三枝子さ…(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/229410

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