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日経の世論調査でも同性婚への賛成が65%に上りました

 2月26日に開催された自民党大会で岸田総理は、改憲や皇位継承には言及しましたが、LGBTQの人権保障法制には触れませんでした。超党派のLGBT議連がまとめた理解増進法案の国会提出に向けた準備を指示したにもかかわらず、党大会では一切触れなかったのは、「差別は許されない」との文言にすら異を唱える党内保守派の支持をつなぎ留めるためと見られています。

 これについて朝日新聞は社説「自民党大会 教団問題もう忘れたか」で、旧統一教会との関係の清算や、LGBTQに全く触れられなかったことを批判しています。「運動方針には「多様性を認め合い、包摂的な社会の実現を目指す」という一文がある。しかし、差別発言をした首相秘書官の更迭を受け、党内論議を再開するとしたLGBT理解増進法案への取り組みについて、大会中、言及は一切なかった。首相は演説で、自民党は「国民政党」だと胸を張った。ならば、国民の意識の変化を敏感にくみ取り、政策に生かすべきだろう。選択的夫婦別姓や同性婚の法制化に、国民の理解は確実に広がっている。党内外の保守派の意向を優先し、多くの人々の思いとずれるようでは、その自画像から遠ざかるだけだ」

 同様に毎日新聞も社説で「世論調査では若い世代を中心に同性婚を認めるべきだとの声が広がる。一方、自民保守派の反対を前に、政権は身動きが取れない。「自民は国民政党である」と首相は訴えた。そうであるならば一部保守派だけでなく、性的少数者を含む幅広い国民の声に耳を傾けるべきだ」と訴えています。

 同様に北海道新聞も、「首相演説、運動方針ともLGBTなど性的少数者への理解増進法案の対応には言及がなかった。差別発言で元首相秘書官が更迭されたことへの反省が見えない」と厳しく指摘しました。「運動方針で「女性活躍」の推進を打ち出したが、選択的夫婦別姓には何も触れていない。旧統一教会は同性婚などに拒否感を示してきた。その影響はないのか検証が欠かせない。首相は演説で「時代は憲法の早期改正を求めていると感じている。野党の力も借り、国会の議論を一層積極的に行う」と述べた。国民の不信解消の道筋も見えないのに、国論を二分する改憲に突き進む姿勢に強い違和感を覚える。改憲論議よりも、優先すべきことがあるはずだ」
 
 週刊朝日の記事では、「結婚の自由をすべての人に」の寺原真希子弁護士がこのように語っています。
「「慎重な検討を要する」と言いながら、この8年間、政府は同性間の婚姻について検討を開始すらしていません。19年6月に野党から同性間の婚姻の法制化のための「婚姻平等法案」も出ていますが、そちらも審議されずに放置されています。
「多くの世論調査では7割近くが同性間の婚姻に賛成していて」「実は日本では、同性間の婚姻が法制化された海外よりも、賛成割合が高いのです」
「法律の制定・改正を担う国会や政府では高齢男性議員の影響力が大きいことが、世論との乖離が生じている一因かと思います」
「同性間の婚姻が認められていないことは、国が、「同性カップルは異性カップルと同等の保護を与える必要のない劣った存在だ」という誤ったメッセージを日々発信し続けているのと同じで、それは差別・偏見を助長し、再生産します。自殺を考えるほどに生き悩む性的マイノリティも少なくなく、これは命の問題でもあるのです」
「岸田首相は「多様性を尊重し包摂性のある社会を目指す」と繰り返し表明しています。そうであれば、同性間の婚姻の法制化にただちに着手していただきたい。首相の立場としてそれを行う義務がありますし、また一人の親として、自分の子や孫が例えば同性愛者であった場合に、「同性愛者だから結婚できなくても仕方がない」と、はたして面と向かって言えるのでしょうか」


 世論調査への言及がありましたが、2週間前に共同通信が同性婚についての世論調査の結果を発表して以降、たくさんのメディアが世論調査を実施し、そのほとんどで賛成が6割を超える結果(最高72%)となっています。
 27日には日経新聞も同性婚に関する世論調査の結果を公表し、賛成が65%、自民支持層でも58%に上ったことがわかりました。「男性や女性同士で結婚する同性婚を法的に認めること」について「賛成だ」との回答が65%、「反対だ」が24%。支持政党別に見ると、自民党支持層でも「賛成だ」が58%、立憲民主党支持層は6割強、日本維新の会支持層では7割となりました。18〜39歳の若い世代では賛成が83%に上りました。
 若年層では8割超、自民党支持層でも賛成が過半数というのはそれ以前の調査でも同様の結果が出ており、確実なデータと見なしてよさそうです。

 
 同日、『GQ JAPAN』には、差別や人権侵害を許容してしまう日本社会の背景に何があるのか?をめぐる松岡宗嗣さんの論考が掲載されました。同誌3月号の記事で、荒井秘書官差別発言以前に書かれたものだと思われますが、それでも日本の人権軽視の本質を鋭く突く主張は現在の状況にもそのまま当てはまるものです。
 「サッカーW杯での抗議行動」と「杉田水脈総務大臣政務官の事実上の更迭」という2つのニュースに共通する、この国の「人権」の軽さ。「いま目の前で起きている人権侵害に対して「今はサッカーに集中すべき」「職責を果たす能力がある」などと軽視し、許容してしまう」問題。こうした問題はプロスポーツや国会という場に限らず、職場など、私たちの日常のあらゆる場面で起きているものではないかと松岡さんは指摘します。「そもそも「人権」は、「能力」や「実績」などと天秤にかけるものではない。人権が守られていなければ働くことはできず、サッカーを安全にプレーできず、サポーターも試合を見ることはできない。いま危険を感じずに試合を楽しめているとすれば、それは差別や偏見による被害を受けずに済む立場にいるからだ」「差別や人権侵害を許容してしまう姿勢の背景には、「自分だけ助かれば、差別されなければ、楽しめれば、それでいい」とする考えがないだろうか」「それは、もし自分がいざ排除される立場になった時、容赦なく見捨てられることと地続きだという自覚はあるだろうか。果たしてそんな社会でいいのだろうか。私はそうであってほしくないと思う」

 杉田議員に関しては25日、札幌市で杉田議員の差別発言に抗議する集会が開かれ、アイヌ民族や性的マイノリティなど約120人が参加し、マイノリティの人権尊重に向けてよりいっそう連帯していくことを確認したとのニュースがありました。
 アイヌ民族や性的マイノリティなど約20の団体・個人が順番に「差別は絶対に許されない」「謝ってほしい」などと、杉田氏や政府を批判する意見を述べ、集会の最後に、杉田氏の総務政務官への起用(昨年12月に更迭)について岸田総理に謝罪と説明を求めることなどを盛り込んだ集会声明を採択しました。
 

 もう一つ、国に先行してLGBTQの権利を守るルールを作ってきた地方自治体にスポットを当てる記事が東京新聞に掲載されました。
 町田市では、4年半前の2018年9月、市議会で緊張しながら一般質問に臨み「私は34年間、誰のことも恋愛対象として好きになったことはありません」とカムアウトした東友美市議のおかげで、市のLGBTQ施策が始まったというお話や、初当選の99年当時はカミングできなかったという文京区の元区議・前田邦博さんのお話が紹介されました。尾辻かな子元衆院議員が代表理事を務める「LGBT政策情報センター」(大阪市)によると、自らを性的マイノリティであるとカムアウトしている地方議員は現在11人だそうです。
 駒沢大法学部の大山礼子教授(政治制度論)は、「性的少数者だけでなく、女性や若者など、さまざまな立場の人が議会にいることが重要」と述べています。

  


参考記事:
自民党大会で岸田首相が示した保守派への配慮 改憲や皇位継承に言及、LGBTQの人権保障に触れず(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/233405

(社説)自民党大会 教団問題もう忘れたか(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15566565.html
社説 自民地方議員と教団 党の実態調査が不可欠だ(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230228/ddm/005/070/101000c
<社説>自民党大会 不信拭う意志が見えぬ(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/807600
岸田政権の人権意識に物申す! 弁護士「性的少数者への根本的な偏見に憤り」(週刊朝日)
https://dot.asahi.com/wa/2023022200079.html

同性婚に賛成65% 自民支持層でも58% 本社世論調査(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA253J70V20C23A2000000/

人権が「軽い」この国で──プロスポーツと国会での事例を通して考える(GQ)
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20230227-soshi-matsuoka-column

杉田水脈氏の侮蔑的発言 アイヌ民族が札幌で抗議集会(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/807285

LGBT差別禁止のルール作りは地方自治体が国に先行 それでも議会の多様性を見てみると…(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/233375

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