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「同性婚気持ち悪い」などの差別発言を繰り返す愛知県議の議員辞職勧告決議を求める要望が出されました

 昨年9月、SNS上で「同性結婚なんて気持ち悪いことは大反対」と、今年1月にも「同性婚が気持ち悪いと言って何がいけないのか。世の中同性婚を気持ち悪いと思う人がほとんどだ」などと書き込んだ愛知県の渡辺昇県議(元自民党、現無所属)に対して議員辞職勧告決議をするよう、「性別や性的指向・性自認に基づく差別を根絶する愛知アクション」のメンバーが27日、県議会各会派に要望書を提出しました。渡辺県議が「処分は全く受けてない」などと開き直って発言をエスカレートさせているにもかかわらず、県議会が何も対応してこなかったためです。

 
 渡辺昇愛知県議は昨年9月、キューバで同性婚が認められたというニュースをFacebookに投稿した井田奈穂さんに対して「同性結婚なんて気持ち悪い事は大反対!」とコメントして非難を浴び、謝罪を求める署名も立ち上げられました。10月には井田奈穂さんやLGBTQの方たちが県議に面会して抗議し、渡辺氏は「勉強不足だった」「今後はどんな場でも、あのような発言はしないことをお約束する」と謝罪しました。その後、県議会や当時所属していた(現在は離党しています)自民党から何ら罰則や処分、具体的な防止策の提示がなかったため、愛知県内のLGBTQの方たちが中心となって「性別や性的指向・性自認に基づく差別を根絶する愛知アクション」を立ち上げ、11月、愛知県議会議長・自民党県議団団長・愛知県人権推進課長・男女共同参画推進課長らに対し、県内の当事者の話を聞く勉強会の実施や条例の制定など再発防止策を求める共同声明を手渡しました。
 ところが、今年1月、渡辺県議が東京都西東京市の納田さおり市議のFacebookのアカウント上で(星さんという西東京市のゲイの方のコメントに返すかたちで)「同性婚が気持ち悪いと言って何がいけないんですか」「私はまともな人が思う事をありのままにSNSに投稿しただけ」「抗議に来たが処分は全く受けてない」「同性がキスをしたりするのは私のようなまともな人が見たらどう想うかおわかりですよね」「同性婚は気持ち悪いと想う人が沢山いるのに、そう言って何がいけない」などと、前回を上回るひどい発言をしました。「処分は全く受けてない」などと開き直って発言をエスカレートさせ、反省の様子が窺えません。これに対して井田奈穂さんは、昨年のコメントが問題になった際、県議会や自民党が適切な対応をしなかったために「差別発言が公認化された」ことで引き起こされたものだと指摘、「これまでも県議会や自民党、愛知県に対して、渡辺県議に厳正な処分を下し、差別発言をした人が適切な処分を受ける条例などを作ってほしいと要望してきましたが、今のところ全てゼロ回答です」と語りました。

 2月3日には、愛知県弁護士会会長が「愛知県議による差別的投稿に抗議する会長声明」を発しました。
「(渡辺県議の)投稿内容は、同性カップル等の性的マイノリティの尊厳を損なう差別的なものであり、性的指向が個人の人格的生存や幸福追求、プライバシーと密接にかかわることへの無理解を示したものである」
「そして、報道された内容を前提とすると、謝罪からわずか3か月余で、謝罪の言葉を反故にして差別的投稿を繰り返したものといえる。性的指向や性自認を理由とする差別にさらされ苦しんでいる当事者はもちろん、そうした差別の解消を願う広範な市民の憤りや落胆、不安感は言うまでもない」
「この出来事は一個人の問題ではない。昨年、同議員に抗議をした市民からは、昨年の投稿について議会や所属政党(当時)が公に処分をしなかったことが、差別的投稿をエスカレートさせた背景ではないかと指摘する声が上がっている」
「日本社会にはいまだ性的マイノリティを侮蔑や嘲笑の対象とするような差別感情が根強く残っている。愛知県議会は同議員に公の処分を課さず、結果として同議員に再度の差別的投稿を許している。このような事態からすれば、愛知県議会内にも未だ性的マイノリティに対する差別感情が存在していると評価されてもやむを得ないと思われる」
「当会は、同議員の差別的投稿に強く抗議する。さらに、同議員だけでなく、愛知県議会及び愛知県内の地方議会における全政党・全議員、県知事、県内各市町村長に対し、これを契機として、性的マイノリティに向けられる差別感情や、婚姻の平等(同性婚)など政策上の差別的課題を解消するために、差別的言動に反対する姿勢の表明や、性的マイノリティに関する研修の実施、県内外で生活する性的マイノリティがさらされる差別問題の解消に向けた同取り組み等を積極的に進めることを要望する。とりわけ、県においては、愛知県人権尊重の社会づくり条例(令和4年愛知県条例第3号)第15条が定める責務を果たすよう求める」
 
 こうした流れを踏まえ、「性別や性的指向・性自認に基づく差別を根絶する愛知アクション」のメンバーが渡辺昇県議の議員辞職勧告決議を求める要望書を提出したものです。
 会のメンバーである風間孝中京大教授は、「一度謝罪したにもかかわらず、再びの差別発言に大変怒りを覚えている。性的マイノリティの方がどれほど絶望を感じたか」「議会として明確な立場を示し、県としても何ができるか考えてほしい」「渡辺氏は処分されていないと開き直り差別発言を続けている。それは許されないと議会で示してほしい」と語っています。
 1月に差別発言を受けた当事者である星さんは、「よくないところを直していただきたい。悲しみもなく、違和感もない県にしていただきたい」と語りました。
 県議会は会の要望を真摯に受け止め、対応していただきたいです。
 
 会のメンバーは、議会に陳情した後、愛知県庁東大手庁舎の「人権あいち」に出向き、これまでの罰則のない人権条例の無効性を訴え、県内の当事者による勉強会を行なうよう再びお願いしたそうです(こちらのTwitter投稿より)。県も、県議会議員という公人による差別発言が繰り返されることを重く見て、再発防止に努めていただきたいです。

 なお、当の渡辺氏は、朝日新聞の取材に対し、「犯罪や違法行為をしたわけではない。議会ではもっと検討しないといけないことがある」などと答えました。全く反省していない様子です。

 井田奈穂さんはTwitterで「愛知県議の皆さん、沈黙は差別を助長します。ぜひ行動をお願いします」「渡辺氏は最初は謝罪しましたが、二度目以降「自分は処分を受けていない」と、謝罪も訂正も削除もしていません」と、また、渡辺氏の「犯罪や違法行為をしたわけではない。議会ではもっと検討しないといけないことがある」との発言に対しては、「公人としてあり得ない発言を繰り返すあなたが引責辞任をすれば、議会のリソースをもっと有意義に使えるのですが」とコメントしています。
 
 愛知県は昨年4月から「愛知県人権尊重の社会づくり条例」を施行し、性的マイノリティを含む人権施策推進のための取組みを行なってきましたが、LGBTQに関する条文は「差別禁止」ではなく「理解増進」であり、差別発言を取り締まったり被害者を救済するような内容が盛り込まれていないため、渡辺県議も公に処分されずにきました。このことは、現在議論されている理解増進法についても当てはまるのではないでしょうか。渡辺氏のような人物に対して何ら有効な手立てを講じることができず、「自分は処分を受けていない」などと開き直って差別発言が繰り返される(差別を放置する)ことにつながるのではないかと懸念されます。
 各地の自治体がLGBTQに関する条例を制定し、理解を求める取組みを進めているのはありがたいのですが、今回のようなケースに対処し、繰り返される差別発言に当事者が傷つけられないよう守っていくためには、やはり差別禁止を明確に謳い、被害者救済や再発防止策など具体的な差別解消に向けた内容であることが必要でしょう。そのような条例や法制度が整備されることを願います。



参考記事:
「同性婚なんて気持ち悪い…」差別発言の渡辺昇愛知県議 発言を受けた当事者などが各党に対し辞職勧告求める要望書提出(CBCテレビ)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/cbc/350142
「同性婚が気持ち悪いと言って何がいけない」…SNSに差別的投稿繰り返した県議に“辞職勧告”を市民が議会に要望(東海テレビ)
https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20230228_25586
差別投稿の県議に辞職勧告を 愛知の団体、議会へ要望(共同通信)
https://www.47news.jp/national/8994040.html
「同性婚気持ち悪い」の愛知県議 「辞職勧告を」と当事者ら要望(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR2W7257R2WOIPE00X.html
辞職勧告の要望書 渡辺県議の差別発言受け 市民団体(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230228/ddl/k23/010/146000c

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