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性的マイノリティの子を持つ親の有志の会が明確に差別の禁止を規定した「子どもたちの命を守る法整備」を要望
性的マイノリティの子を持つ親御さんたちが共同で26日、オンライン記者会見を開き、明確に差別の禁止を規定した「子どもたちの命を守る法整備」を求めました。
呼びかけ人である松岡成子さん(松岡宗嗣さんのお母様で、NPO法人ASTAで活動しています)は、「当事者の若者からしんどいという声を聞くも、私はオロオロして何もできずにいることがありました。2年前のLGBT法案のときも、ただ見守るだけで歯がゆい思いをしました。今回の荒井元秘書官による差別発言には、誰かの命を奪うトリガーになりかねない、限界だと感じました。差別をする大人もいるけど、差別を止めようとする大人もいることを表明すべきです。この国で性的マイノリティであることを自覚している若者を守るためにできることを、差別禁止を明記した法律を作ることを、同じ思いを持つ保護者のみなさんと相談し、要望することにしました」と語りました。
それから、石川県のわたなべさんは、当事者のお子さんがつくった絵本を紹介してくれました。
お子さんは3歳のとき「男の子に生まれたかった」と泣いたそうです。小学校に入ると、つらい体験をし、「死んで生まれ変わりたい」と言うようになり、学校に男子の制服を着ていいように掛け合いました。
担任の先生の提案で、お子さんは絵本をつくりました。
これをクラスの子が読んで、「どう接していいか迷っていたけど、気持ちがわかって安心した」と言ってもらえました。
わたなべさんは、「私も治ってほしいなどと思ってきたことがあり、この子を苦しめていたことに気づいた。やっと自分が差別していたことを認めることができた」と語りました。
続いて、三重県の浦狩さんが語りました(浦狩さんは、LGBTと家族と友人をつなぐ会(三重)を運営していて、三重のパレードの開催に携わったり、各地のパレードに足を運んだりもしている方です)
浦狩さんのお子さんは15歳のときに「男子として高校に行きたい、ごめんなさい」と泣きながらカムアウトしたそうです。「私も泣きながらGIDクリニックの医師に相談しました。わけもわからず、悪いことだと自分を責めましたが、勇気を出して話してくれたことに感謝し、受け容れようと思いました」
「国は、こうした性的マイノリティの子たちを、正直で、勇気があると褒めてほしいです」
福岡県のSさんが語りました。
「子どもが4歳のとき、泣きながら『どうして女の子じゃないの』と言いました。そこから、女の子になりたいと願う我が子の生きるための闘いが始まりました。幼稚園に話したのですが、難しいと言われました。先生は、周りにそんな人いないと言いました。私が、もし先生のお子さんがそうだったらどうしますか?と聞きました。『我慢するように言います』と返ってきました。我慢とかわがままではありません。子どもは仕方なく、幼稚園に行くときは男の子のパンツをはいて行き、帰ったらすぐに女の子のパンツに着替えます。髪の毛を短く切れとも言われています」
「理解増進法って何ですか? LGBTQを特別な枠組みと見なし、理解することなら、要りません。LGBTQは、いて当たり前、人権が守られて当たり前です。それを守るため、差別をされないように国が動かなければいけないのです」
神奈川県の三輪さん(仮名)が語りました。
「子どもが十数年前に性同一性障害とカムアウトしました。まだほとんど知られていない頃です。言われた時は、世界が白黒になりました。でも、私が味方にならないと死んでしまうと思ったのです。悩みましたが、誰かに相談できることもなく…。それから私は、同じように悩む親たちの相談に乗ったり、啓発にあたり、今に至っています」
「親を支えてきて思うのは、理解増進では変わらないということです。この国を仕切ってる世代は昔の意識のまま。政府の答弁を聞くたびに、全く理解されていないと悲しくなります。子は親からも社会からも偏見を受け、生きづらさを感じています。生き地獄です。国はすべての命が大切だと宣言してほしい。未来ある子どもたちが死に急ぐ社会にしないでください」
東京都の鈴木さん(仮名)が語りました。
「子どもが出生時に割り当てられた性別と異なる服装をするようになりましたが、『心配しなくても治りますよ』『止めるのが親の仕事』『子の言いなりになってはいけない』『周りを見て』といった理解のない言葉が、社会的地位のある人から発せられました。私も、我が子が当事者でなければ、理解がなかったと思います」
「差別禁止がなく、ただの理解増進法ができたとしたら、『へええ』で終わりでしょう。私は子どもに世間からの差別の言葉が届かないよう守ることしかできませんが、このままの世の中では、この子がこれから数々の攻撃にさらされるだろうと思います。子育ては一人ではできません、友人やごさん、先生、学校、国と協力しあいながらやっていくものです。どうか、この問題を、対岸の火事と思わず、考えてください。ご賛同をお願いします」
福岡県の中島さんが語りました。
「子どもは30代ですが、まだ戸籍の変更をしてないトランスジェンダーです。小一から不登校になり、綱渡りのように生きてきました。就職にも差別がありました。今は就活では、オンラインで性別を入力することが必須になっています。スタートラインにすら立てないのです。頑張って面接までたどりついても、『我が社ではトランスジェンダーは雇えない』と追い返されたり。なんとか就職しても、『トランスジェンダーをこの仕事に就かせていいのか』と言われたり、取引先から『あの人は男?女?』と言われたりという困難に直面しています。でも、そうした差別に怒っていい、相談していいと思えていませんでした。独りで耐えていませんでした」
「法整備によって差別は許されないと明確なメッセージが発信されることが必要です。次世代の子どもたちに、大丈夫だよ、安心して生きてていいよと言える法整備を求めます」
石川県の植田さんが語りました(2018年から石川県助産師会の方たちと「にじはぐ石川」というLGBTQ支援グループを立ち上げ、金沢レインボープライドの活動の礎ともなるような活動をしてきた方です)
植田さんは助産師をするなかで、「法律上の性別のスタートに関わる仕事」だと気づき、性教育を行なう際には「性は多様だよ」と必ず伝えるようにしてきたそうです。「子どもたちから寄せられる感想に、否定的な言葉は一つもありませんでした」「親にどう伝えたらいいですか、とカミングアウトの相談も受けるようになりました」「でも社会がまだ追いついてないと感じます」
「子どものためにと必死にもがいている親たちは氷山の一角で、自分一人で、誰にも知られてはいけないと、まるで犯罪者であるかのように感じる親・家族もいます。それは、その親たちの心が弱いからでしょうか? 制度で禁止すると明示しなければ」
「今日ここでお話している当事者の子を持つ家族は、大きな決断をしていると思います。お話することによって、周囲から攻撃を受けるかもしれないのに、勇気を振り絞って出ています。その気持ち受け止めてください」
親御さんたちもまた、子どもたちと一緒に差別と闘ってきたのだということがひしひしと伝わってきて、本当に身につまされるような、切実な、心からのメッセージの数々に胸を打たれました。司会の土井香苗さん(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)も涙していました。
当事者の子どもたちがこれ以上、差別を受けて苦しんだり、命を落としたりすることのないよう、勇気を出して語ってくれた親御さんたちの願いを、国に届けたいですよね。
明確に差別の禁止を規定した「子どもたちの命を守る法整備」を求める要望書の文面はこちらに載っています。同じページで、この要望書への賛同を募っています。当事者やその親という立場でなくても、どなたでも賛同できます。お名前等は公開されません。3月5日まで募集し、その後、小倉男女共同参画等担当大臣宛てに提出されることになっています。ぜひ、ご賛同をお願いいたします。
この記者会見のことは、日テレや共同通信、朝日新聞、ハフポストなどでも報道されました。以下、日テレの報道です。