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サム・スミスとキム・ペトラスがグラミー受賞、トランスジェンダーとしての快挙達成

 2月5日(現地時間)にロサンゼルスで開催された第65回グラミー賞授賞式で、サム・スミスとキム・ペトラスが『Unholy』で最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)賞に輝きました。二人はそれぞれ、同カテゴリーで受賞する史上初のノンバイナリー、トランスジェンダーのアーティストとなりました(おめでとうございます!)

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 この日、サム・スミス&キム・ペトラスはロサンゼルスのクリプト・コム・アリーナのレッドカーペットに真っ赤な衣装で現れました。ダンサーだけでなくドラァグクイーンのヴァイオレット・チャチキやゴットミックなども一緒でした。

 受賞スピーチに際して(何度もグラミーを獲っている)サムは、トランスジェンダーとして同カテゴリー初の受賞※という快挙を成し遂げたキムにマイクを渡しました。 キムは「サムは私に、この賞を受け取ってほしいと願った。なぜなら私は、この賞を獲った初めてのトランスジェンダー女性だから」と語り、会場は拍手喝采に包まれました(スタンディングオベーションする人も)。「私は、私の前でドアを蹴破って歩けるようにしてくれた全てのトランスジェンダーのレジェンドたちに感謝を捧げます。おかげで今日、私はここに立つことができました。なかでもSOPHIEに」とエモーショナルに語り、聴衆はスタンディングオベーションを捧げました。
「2年前に亡くなった私の友人は、いつかトランスジェンダーがグラミーを獲る日が来ると言い、いつも私を信じてくれました。あなたが与えてくれたインスピレーションに感謝しています。大好きでした。いつまでも私の中に生き続けています」
 SOPHIEのファンたちは感動し、あるファンは「キムが受賞スピーチでSOPHIEに感謝してくれた、歴史上最もトランスジェンダーが攻撃されているなか。ええ、そう、私は泣いています」と投稿しました。
 キムはまた、LGBTQのアイコンであり、7度もグラミーを受賞しているマドンナに感謝を捧げました。マドンナは今回、サムとキムを紹介するプレゼンターとして登場しています。「マドンナのLGBTQの権利のための闘いに感謝します。マドンナがいなかったら、ここに私はいなかったと思う」
 さらにキムは、いつも彼女を「女の子だと信じてくれた」お母さんにも感動的な謝辞を捧げました。

 プレスルームでのインタビューでキムは、ゲイクラブのことも語りました。
「みんなは私がトランスジェンダーだからニッチなアーティストになるだろうと言ってました。私の曲がかかるのはゲイクラブだけだってね」「私はゲイクラブミュージックを友達と作ってグラミーを獲りました。最高の気分です」
「私はどんなジェンダーアイデンティティだろうとも、人々がただ自分らしくいられて、ジャッジされず、レッテルも貼られない、そんな日が来ることを望みます。だって私はそのことで子どもの頃苦しんできたから」
「私はこれを見て特別だとか変わってるとか社会に居場所がないと感じれいた全ての子どもたちが、自分自身でいられるし、才能が報われると感じられることを望みます」

 感動的なスピーチの後、ソーシャルメディアは、その受賞を祝うコメントで溢れました。
「この世界は本当に恐ろしいと知ってる、でも、こういう瞬間があるから、私たちのコミュニティが決して沈黙しないと思えます」
「トランスの子どもたちが自分自身の未来を目撃しました。そのことに大きな希望を感じます」

※実は、トランス女性としてグラミーを初めて受賞したのはシンセサイザー奏者、作曲家のウェンディ・カルロスで、アルバム『スウィッチト・オン・バッハ』で1968年に3部門を受賞しています。

 受賞スピーチの後、サムとキムは会場でライブパフォーマンスを披露しました。その際にプレゼンターを務めたマドンナは、「私は新しい道を切り開く、反逆者たちに感謝するためにここにいます。あなたたちの大胆不敵な姿を、私たちは知っています、見ています。そして感謝しています。多くの批評を乗り越え、闘い、『Unholy』という美しい楽曲を誕生させた、信じられないほど才能豊かな2人、サム・スミスとキム・ペトラスです」と紹介しました。
 そしてサムとキムがステージに登場し、『Unholy』をパフォーマンス。真っ赤に染まったステージでは、サムがツノの生えた帽子をかぶって悪魔を表現し、さらに(どうしても貞子のように見えてしまいますが)ジーザスをイメージしたダンサーたちとダンスしながら熱唱しました。さらにキムは、赤いレザーのセクシーなミニドレスで登場し、オリに閉じ込められ、炎に包まれながらセクシーなダンスを披露し、圧倒的な歌唱力で歌い上げました。


 サム・スミス&キム・ペトラスのほかに賞を持ち帰ったクィア・アーティストを紹介します。
 レズビアンであることをオープンにしているブランディ・カーライルは「Broken Horses」で最優秀ロック・パフォーマンス賞とベスト・ロック・ソングを、『In These Silent Days』で最優秀アメリカーナ・アルバム賞を受賞しました。ステージ・パフォーマンスの際は、妻のキャサリン・カーライルと2人の娘がエスコートしたそうです。
 オープンリー・バイセクシュアルのスティーブ・レイシーは『Gemini Rights』で最優秀プログレッシブR&Bアルバムを受賞しました。ステージ・パフォーマンスでは「Bad Habit」を披露しています。
 それから、英国のインディ・レズビアン・デュオの「Wet Leg」が最優秀オルタナティブ・アルバムと最優秀オルタナティブ・パフォーマンスを受賞しました。
 メンバーのアンドリュー・イーがトランス女性であるアタッカ四重奏団は、最優秀小規模アンサンブル・パフォーマンス賞を受賞、アンドリュー・イーが受賞スピーチをしました。

 そして、『ルネッサンス(Renaissance)』が最優秀ダンス/エレクトロニック・ミュージック・アルバム賞を受賞したビヨンセは、グラミー獲得数が32となり、歴代最多記録を更新しました。その記念すべき受賞スピーチでビヨンセは、「ここにはいないけれど、精神的にはここにいる、亡きジョニー叔父さんに感謝しています」と語りました。『Renaissance』のライナーノーツで「ジョニーは私の名付け親であり、このアルバムのインスピレーションとなる多くの音楽と文化に、私を触れさせた最初の人物」と書かれているジョニー叔父さんは、ゲイで、エイズで亡くなっていて、かつてビヨンセは「私がこれまで生きてきたなかで最もつらい経験の一つ」と語っています。そして、クィア・コミュニティに対しても「あなたたちの愛、そしてこの世界を切り開いてくれたことに感謝します」と語りました。

参考記事:
Kim Petras makes Grammys history and fans are elated: ‘I hope every young trans person sees this’(Pink News)
https://www.thepinknews.com/2023/02/06/kim-petras-sam-smith-grammy-win-unholy-reactions/
Was the 2023 Grammy Awards the queerest ever?(MAMBA)
https://www.mambaonline.com/2023/02/06/was-the-2023-grammy-awards-the-queerest-ever/

ビヨンセ、グラミー賞の歴代最多受賞記録を更新。クィア・コミュニティに愛の言葉を贈る(VOGUE)
https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/beyonce-grammys-record-queer-community-acceptance-speech

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