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「社会が変わってしまう」発言に対し、各方面から批判の声
岸田首相が2月1日、同性婚の法制化について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ。社会全体の雰囲気にしっかり思いを巡らせた上で判断することが大事だ」と国会で発言した件について、各方面から批判の声が上がっています。諸々、まとめてご紹介します。
モデルの益若つばささんは2日、Twitterで「社会は時代によって変えていったほうが良いよね。だって今2023年だもん」「同性婚を否定しても今も昔も愛は変わらないから同性婚=少子化ではないよね」とコメントしました。
脳科学者の茂木健一郎さんも2日、Twitterで「じゃあ、世界のいろいろな国がもう変わっちゃったんだね。それは大変だ!!!」「岸田文雄首相が、『異次元の少子化対策』とか言われているのはいいんだけど、正直、同性婚とか、選択的夫婦別姓制とかで、『社会が変わってしまう』とか言っている古臭い価値観が、子供を増やすという意味においては最大の障害になっているんじゃないかと思う」「岸田さんが『社会が変わってしまう』とか大げさなことを言っている時、一体誰に対してサービスして、何を守っているのか意味不明だと思う。同性婚とか、選択的夫婦別姓制とか、とっとと認めた方が根本的な意味での少子化対策にもなると思うんだけど、岸田さんのまわりの自民党では違う考えなのだろうか」とコメントしました。
2019年にゲイであることをカムアウトしたkemioさんも3日、Twitterで「え、まだそこ?っていつも思うし普通に社会で戦うウチらの家族観はもう変わってるよ、、あなた達はいつまでそこに立ち止まってたくさんの人達を苦しめ続けるの」とコメントしました(いいねが3.2万件ついています)
2日の「大竹まこと ゴールデンラジオ」(文化放送)では、大竹まことさんが「変えないようにしたいっていう、元々の社会ってどうなんだって。家族制度だとか、昔のものを大事にしていこうって聞こえちゃうよね」と、ゲストのはるな愛さんが「昔はじゃあ、そういう方々がいなかったって事実はどこにあるんですかっていう」「なんで変わったらいけないんだろう?って。総理にもパートナーや愛するご家族がいると思うんですけど……今このときも『パートナーと幸せに暮らしたい』『同性婚を認めてほしい』って人がいて、総理たちと何も変わらない」と語りました。
小泉今日子さんは4日、ニュージーランド国会でのモーリス・ウィリアムソン議員の同性婚擁護演説を紹介しながら「このスピーチ初めて見た時から大好き。何も変わらない。ただ愛し合う人が結婚するだけ。幸せを感じる人が増えるだけ」とツイートしました。
『Vogue』誌は「世論の65%が同性婚に賛成し、先日、東京地裁が同性婚を認めないのは違憲状態であるという判断を示したにもかかわらず、日本の政治的リーダーがこのような発言をすれば、国民の声を無視していると言われてもしかたがないのでは、と思えてくる」としたうえで、5名の有識者や当事者からのメッセージを紹介しました。
東京レインボープライド共同代表の杉山文野さんは「ルール(制度)とリアル(実生活)がちぐはぐになりすぎた結果生まれている生きづらさ、これを政治が変えずに誰が変えるのでしょうか? ぜひ「雰囲気」によって左右されず「現実」に思いを巡らせて判断していただきたいと思います」と、モデルのTairaさんは「岸田首相の発言の前提に置かれている「変わってしまっては困る社会」自体が既に実体のない虚像であって、社会を構成する多種多様な人々への配慮と想像力に欠けたお言葉であった」と、2021年にパートナーのトムさんとロンドンで結婚したKanさんは「あなたたちが、時間をかけて検討している間に、僕は家族も友達も、仕事も、大好きなものも全部置いて、日本を出ざるを得ませんでした。愛する人と結婚することができないまま、家族としての法的な保障が認められないまま、今も辛い思いをしている方や亡くなられた方もいらっしゃいます。僕たちには検討する余裕なんてありません。真摯に向き合い、行動してください」と、東京大学総合文化研究科教授の清水晶子さんは、「ある人が同性の誰かと結婚したり家族を作ったりするのを認めないことで私たちの家族観や価値観がどうにか維持されているなら、そんな家族観や価値観はむしろ変わった方が良い。ある人が別の誰かと人生のある時期を共にして、互いに協力したり支え合ったり愛情を注ぎあったりしようと考える時に、その二人が同性であるというだけの理由で異性同士には与えられる法的・制度的な保障を認めない社会は、変わらなくてはならない。これは憲法に保障された平等の問題であり、変えてはならないのはむしろその原則の方です」と、紅白でのコメントも素敵だったアーティスト・僧侶の西村宏堂さんは「こうした否定的な意見がでたとき、私は物事をひっくり返して考えるのが大事だと思っています。今まで考えられていなかったことが変化していく過程では、まず反対する人がいて、それに対する賛成の声が大きくなってから実現します。これほどまでにも婚姻の自由の重要性が認知されているのに、今回のような後ろ向きな意見が出たときは、逆に応援してくれる人や、一緒に戦ってくれる人が増えるという効果もあると思います」「本来、私たちが誇りや権利を持つこと、そして人生に選択肢があることは他の同じ人間に認めてもらう必要はないはずです。政治家じゃなくても社会は変えられる、そのためにも投票に行くことが大切です。全ての人が安心して自分らしく生きられる未来を、私たちで創りましょう」と語っています。
「結婚の自由をすべての人に」訴訟・東京弁護団共同代表の上杉崇子弁護士は、「漠然とした不安感をあおるような発言は、差別の肯定だ。当事者は傷ついている。司法が国会に対応を求めている時に、根拠のない負のメッセージを与えてしまった。個人の尊重に反する全体主義的な発想だ。真摯な検討をしていないことが表れている」と批判しています。
旧統一教会問題に詳しい富山大学非常勤講師の斉藤正美さんは、「旧統一教会は神の理想を具現化する場として結婚と家庭を重要視している。家庭の役割はあくまでも子どもを産み育てることであって、男と女による法律婚しか認めない」「他の宗教右派よりも「男と女が結婚し子どもを産み育てる場」としての家庭へのこだわりが強く、子孫が残らないという理由から同性婚に反対し性的マイノリティーを認めようとしない。男と女による一夫一婦制以外を少しでも認めると婚姻制度が壊れるという考えだ」「同性愛者やトランスジェンダーなどの性的マイノリティーやジェンダー平等を求める人たちは、教会のいう「家族」から排除される」としたうえで、「保守派は旧統一教会と考えが一致していることを隠しているわけではない。ジェンダー平等政策の阻止に同意していることは明らかだ。保守派と旧統一教会などが言う「家族を大切に」という言葉は、男女共同参画、選択的夫婦別姓制度、性教育、同性婚などへの反対や、性的少数者への攻撃につながっていることをしっかり認識する必要がある」「性別や性的指向・性自認にかかわらずすべての人の人権が尊重される社会を実現するには、保守派と旧統一教会をはじめとする宗教右派との政策的なつながりを人権という観点から洗い直すことが先決だ」と鋭く指摘しています。
参考記事:
益若つばさ 同性婚に持論「今も昔も愛は変わらない」「同性婚=少子化ではないよね」(東スポ)
https://news.livedoor.com/article/detail/23641066/
茂木健一郎氏、岸田総理の同性婚「社会が変わる」にため息「古臭い価値観」が少子化最大の障害(デイリースポーツ)
https://www.daily.co.jp/gossip/2023/02/02/0016015378.shtml
ゲイ公表のkemio 慎重姿勢の政府に「ウチらの家族観はもう変わってる」「え、まだそこ?って」(スポニチアネックス)
https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12278-2146523/
岸田首相「同性婚を認めれば社会が変わってしまう」 はるな愛、大竹まことは「どうして変わったらいけないんだろう?」
番組レポ(文化放送)
https://www.joqr.co.jp/qr/article/79996/
同性婚の法制化をめぐる5つの見解──「幸せになる人が増えるだけ」(Vogue JAPAN)
https://www.vogue.co.jp/lifestyle/article/marriage-for-all
同性婚「社会変わってしまう」 首相、否定的な答弁 SNS「人権配慮ない」批判も(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15545502.html
「家族」政策を通じてつながる旧統一教会と自民党保守派(毎日新聞)
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20230202/pol/00m/010/007000c