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またしても問題発言…中曽根元外相の典型的なトランス排除言説と「訴訟が乱発」論

 22日も国会で、同性婚や、LGBTQを差別から守るための法律の整備をめぐる議論が行なわれています。
 
 岸田首相は22日の衆院予算委員会で、同性婚導入に関し「私自身、反対だとは一度も申し上げていない」と述べました。家族観に関わる問題だと指摘し、国民の意見や国会の議論を注視する必要があると重ねて訴えました。
 これに対し、SNS上では「であるならば、直ちに法整備を」「言い訳するな。家族観云々をまず撤回しろ」「でも『社会が変わる』と言って何もしないというのは、要は反対しているということだと思いました」といった声が上がっています。
 
 同日、稲田朋美元防衛大臣はTBSのCS番組「国会トークフロントライン」の収録で、LGBT=性的少数者の当事者から法整備の要望がある同性婚について、国民的な議論を行うべきだと述べました。「私は国民的な議論が必要だと思います。社会がというよりも法制度自体は大きく変わることであるので、しっかりと権利を守りつつも、そこで民法を変えていくのかということについてもしっかり議論を進めるべきだと思います」
 稲田氏はLGBT理解増進法案の早期成立の重要性を指摘し、また、同法案が同性婚導入のきっかけになり得るので反対するとの主張については、「目の前に困っている人がいるのに、見て見ぬふりをして、その議論までできないのは違う」と反論しました。

 同日、自民党の中曽根元外務大臣は所属する二階派の会合で、LGBT理解増進法案の「差別は許されない」という文言について、「理解を増進するのは当然で、法案をつくることは大賛成だが、議員立法として野党側と話し合いをしているうちにだんだん問題が出てきた。その中の一つである『差別は許されない』というひと言については、よく考えていただきたい」「例えば、男性の体をしていて、自分は女性だという性自認の人が、女性用のトイレに入ってきた場合に、施設の管理者が出て行くように言うと、差別だと言われ、裁判沙汰になりかねないが、そうした問題が全然議論されていない」と述べました。実際に自身の地元群馬県のゴルフ場でトラブルになったケースがあるとも述べました。
 これについてソーシャルメディアでは、尾辻かな子さんが「またトランスジェンダーへのヘイトスピーチ。逆説的ですが、だから法整備が必要です」と、松岡宗嗣さんが「典型的なトランス排除言説と「訴訟が乱発」論で、口裏を合わせているのだろうかと思うほど差別をなくしたくないのだろう」「経産省訴訟でもトランス女性の女性トイレ自体の利用は認めていて「自らの性自認に基づいた性別で社会生活を送ることは、法律上保護された利益」と指摘しました(「訴訟が乱発」論については松岡宗嗣さんのこちらの記事も併せてご覧ください)。ほかにも「トランスジェンダー差別の模範解答みたいな文章が出て来て天を仰いでいる」「不利益を被ってるから裁判になるんでしょ。それ、露骨な差別推進ですよ」「中曽根さん、世界日報(注:旧統一教会の機関紙)なんかによく出ている話をしゃべるんだなあ」といった声が上がっています。(もし、中曽根氏の発言がどうしてトランスジェンダーへの差別になるのかよくわからないとか、トランス女性が女子トイレを利用するのは問題なのでは?などとお考えの方は、こちらの記事を読んでみてください。そしてぜひ『トランスジェンダー問題』を読んでみてください。これから差別主義者による悪意に満ちたデマやトランス排除言説が広がっていくことも懸念されますが、ぜひ当事者の方たちの苦境を知り、声を聞き、寄り添い、味方=アライになってください。よろしくお願いいたします)
 
 一方、公明党はLGBT理解増進法案についてトランスジェンダーの方たちと意見交換しました。一般社団法人にじーずの遠藤まめた代表は、「今国会で成立させてほしいと思っています。差別をなくすことと理解を広めることは両方大切なことなので、これはぜひ与野党で合意していることなので進めてほしいと思っている」と語りました。同党はまた、LGBTQへの差別被害の現状や教育現場での教師の対応などについてヒアリングし、出席者からは「学習指導要領にLGBT理解に関する項目を入れてほしい」などの要望が出されました。
 そして、公明党の北側副代表は同日、同性婚の法制化について「党内でしっかり検討を進めたいと思います」「同性婚の制度を設けることは憲法上、問題ない」と述べました。与党からこのような声が上がるのは初めてではないでしょうか。ぜひ同性婚を認めたがらない議員の方たちを説得してほしいです。
 
 それから、立憲民主党と日本維新の会の国対委員長が会談し、法案提出のめども立っていないLGBT理解増進法案について、与野党による協議体を新設すべきとの考えで一致しました。「いわゆるLGBT理解増進法案の1日も早い成立を目指し、両党で協力して環境整備を行うということになりました」とのことです。

 
 
 毎日新聞の記事「G7を前に周回遅れの日本 世界で進むLGBTの権利保障」で、谷口洋幸青山学院大教授(国際人権法)は、「欧米ではLGBTQなど性的少数者の権利が人権として認識されている」「日本は国連からも繰り返し法整備を求められている。それでも進まないのは、この課題が「人々の意識の問題」にすり替えられているからだ。性的少数者の権利保障は人権問題であり、差別的な意識を解消するためにも、早急に法整備を進めるべきだ」と述べています。

 

 
参考記事:
首相「同性婚反対、言ってない」 反撃能力、行使例の提示調整(共同通信)
https://nordot.app/1001039866739408896

稲田元防衛大臣 同性婚は「国民的議論が必要」(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/341320

LGBT議員立法 中曽根元外相「差別は許されない」の文言に懸念(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230222/k10013988261000.html
LGBT法案「差別」で裁判沙汰=中曽根元外相が問題視(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023022201009

公明 “LGBT法案”めぐり トランスジェンダー当事者らと意見交換(テレ朝)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000288781.html
公明・北側氏、同性婚「党内で検討」 一方、LGBT「差別は許されない」に自民では…(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/343020
立憲・維新「“LGBT理解増進法案”の与野党協議体を」(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/342015

G7を前に周回遅れの日本 世界で進むLGBTの権利保障(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230220/k00/00m/030/001000c

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