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　同性カップルのパートナーを健康保険の被扶養者として認めないのは差別だとして、韓国のゲイの方が国民健康保険公団を相手取って起こした訴訟の判決で、ソウル高裁は21日、被扶養者の資格を認める裁定を下しました。LGBTQへの偏見が根強い韓国で同性カップルの法的地位が初めて認められた画期的な判決です。　

　
　ソ・ソンウクさんとキム・ヨンミンさんのカップルは2019年5月、結婚式を挙げました。二人は法的な婚姻関係を認められたわけではありませんが、翌年2月、職場の健康保険の加入者であるキムさんがパートナーのソさんを自分の被扶養者として登録しました。これに対し、国民健康保険公団は同年8月、「被扶養者認定条件に符合しない」として、ソさんの被扶養者登録を剥奪し、健康保険料を賦課しました。ソ・ソンウクさんは2021年2月、パートナーを健康保険の被扶養者として認めないのは差別だとして、国民健康保険公団を相手取って裁判を起こしました。
　昨年1月の一審判決では、婚姻は男女間で成り立つものであり「同性カップルを法的事実婚関係と認定できない」として、被扶養者の認定を求めた原告の請求を棄却しました。ソさんはこれを不服として控訴していました。今回、二審のソウル高裁は、健康保険公団は事実婚の配偶者も被扶養者として認めており、同性カップルであることを理由に対象外とするのは「差別的な待遇だ」と、同性カップルであっても、現行法で異性が前提とされている事実婚と「同程度に情緒的で経済的な生活共同体」であり「本質的に同じ集団と評価できる」と判断し、パートナーに被扶養者の資格があると認定し、保険料を課した公団の処分を取り消しました。「多数決の原則が支配する社会であるほど、少数者の権利に対する認識を保護する努力が必要だ」とも指摘しました。　
　裁判を見守っていた支援者たちは、「夫婦として最後まで幸あれ！幸あれ！幸あれ！」と叫んでいました。
　キム・ヨンミンさんは21日、記者団に対し、「平等な社会を望む全ての人たちの勝利だ」と喜びを語りました。
　

　韓国では、度々お伝えしてきたように、宗教保守勢力のLGBTQに対する攻撃がひどく、2014年のソウルのパレードでは、キリスト教保守団体と極右団体が道に寝そべったり座り込んだりして妨害を行ない、中断を余儀なくされました。2015年もアンチ勢力が市内各地のパレード開催可能な所轄警察署前に要員を常駐させ、虚偽の集会申告（道路使用許可）を取ってパレードを開催させないよう妨害工作を行ないましたが、なんとか無事に開催されました（パレードは過去最大規模で盛り上がりを見せました）
　2017年には兵役に就いていたゲイの方が、休みのプライベートの日に同性と関係を持ったことで逮捕されただけでなく、軍によるゲイの一斉摘発が行なわれるというひどい人権侵害がありました（政府が軍刑法の改正へ動きました）
　2021年には男性として入隊した後に性別適合手術を受け、軍隊に復帰した後、強制的に除隊させられたトランス女性のピョン・ヒスさんが自殺するという悲劇が起こりました。済州のクィア文化祭共同組織委員長（パレードの主催者）だったノンバイナリーのキム・ギホンさんも同時期に自死で亡くなっています。
　しかし昨年、韓国最高裁が、ソウル市東大門区と施設管理公団が性的指向を理由に団体の体育館使用を拒否したのは差別だと認める判決を下しました。最高裁が差別を差別だときちんと認め、LGBTQを守ってくれたことは、コミュニティにとって希望となったはずです。
　そうした流れのなかで、まだまだアンチ勢力の攻撃も根強い状況ではありますが、今回、画期的な判決が下り、LGBTQの方たちもさぞかし勇気づけられたことでしょう。
　
　日本では同性カップルの法的保障が一切ないため（同性パートナーシップ証明制度は自治体が独自に証明書を発行するもので、法的な効力はゼロです）、パートナーを家族として健康保険の被扶養者にすることもできません。今回の韓国のソウル高裁の判決は、同性カップルの法的な権利を初めて認める画期的なものでした。これを機に韓国では、以前から何度となく提案されてきたLGBTQ差別禁止法や同性婚法制化を求める動きが活発化するのではないでしょうか。もしかしたら日本の先を越すかもしれません（すでに今回の判決で先を越しましたが…）
　ともあれ、お隣の韓国でとても喜ばしい判決が出たことをお慶び申し上げます。おめでとうございます！
　
　
参考記事：
同性カップルの健保被扶養者資格を認める判決　韓国・ソウル高裁（TBS）
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/339914
韓国、同性カップルに法的地位を初認定　高裁判決、画期的な判断（毎日新聞）
https://mainichi.jp/articles/20230221/k00/00m/030/223000c
 
同性カップルに健康保険の被扶養者資格認める　高裁が一審覆す＝韓国（ソウル聯合ニュース）
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230221001700882

裁判所、同性カップルの健康保険被扶養者資格を認定＝韓国（wowkorea）
https://www.wowkorea.jp/news/korea/2023/0221/10384179.html