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NHK「日曜討論」で各党が論戦、全国の新聞社が当事者の声を掲載

 2月12日のNHK「日曜討論」で、LGBTQ差別を解消するための法案について各党が意見を戦わせ、自民党は党内の合意を重視して慎重に議論を進める考えを示し、公明党や野党は法案を成立させるべきだと訴えました。
 自民党の萩生田政務調査会長は「2年前には理解増進の立場から独自の法案要綱までまとめた実績もあるが、それ以降、選挙があり、党所属の国会議員も変わったので、党の考え方を改めて整理したい。不当な差別や偏見があってはならない社会をつくっていこうというのは当然で、どういう中身や書きぶりであれば理解いただき、不安を取り除くことができるか議論を前に進めていきたい」と述べました。
 これに対し、立憲民主党の長妻政務調査会長は「多様性を認めない政治が日本の足を引っ張っている。選択的夫婦別姓や同性婚、LGBTの差別禁止も、先進7か国では日本だけが実現していない。自民党では『差別は許されない』という法案の文言がダメだという議論があるやに聞くが、とんでもないことで、この国会での成立を約束してほしい」と述べました。
 公明党の高木政務調査会長は「できれば『G7広島サミット』の前に理解増進法は成立させるべきだ。法律ができたからといって不利益を被る人はおらず、不当な差別は絶対に許してはいけないという次のステップに進めるよう、各党で合意して成立させるべきだ」と述べました。
 日本維新の会の音喜多政務調査会長は「理解増進法案は理念法で、課題が全て解決されるわけではないが、第一歩として早急に成立させるべきだ。同性婚や選択的夫婦別姓は時代にあわせて法整備を進めるべきで、自民党で議論を固めて社会政策の変化を前に進めてもらいたい」と述べました。
 共産党の田村政策委員長は「理解増進法案の成立は当然だ。家族のあり方は当事者が決めるもので、夫婦別姓や同性のカップルを法制度上、認めないことがおかしい。多様な家族や同性婚を認める方向に議論を進めたい」と述べました。
 国民民主党の大塚政務調査会長は「理解増進の先にある差別禁止の条例をつくった自治体もあり、国が遅れている。一刻も早く各党が合意して、理解の増進だけでなく差別の禁止まで踏み込んだ法律をつくるべきだ」と述べました。
 れいわ新選組の大石政策審議会長は「奪われていた権利をLGBTの方々が得ると言う事はみんなの利益に繋がる。貴方はアナタのままでいいんだ。進んでいないのは自民党。旧統一教会と繋がって同性婚を差別してきた自民党の政治家。自民も我慢して賛成すべきだ。萩生田さん、賛成か?」と述べました(Twitterでもいいねがたくさんついてました)
 
 同じ12日、TBSの「サンデーモーニング」が岸田首相の「同性婚を認めれば社会が変わってしまう」発言の波紋について取り上げました。ジャーナリストの青木理氏が出演し、なぜ同性婚(をはじめLGBTQの諸権利)に反対するのかについて、こう述べました。「選択的夫妻別姓制もそうなんですがやりたい人がやる。これまで通りにしたい人はこれまで通りにすればいいんですけど。これになぜ反対するのかと言うと万世一系、男系男子で継いできた天皇っていうものを頂点とする。それを支えるのが家父長制の家族であると。日本は一大家族国家であるという価値観みたいなものを持っている一部の自民党の保守派、それを支えているのが旧統一教会であったり日本会議のような団体なんですね」「この勢力というのはやっぱり結構、声がデカイというか強いので。それをどうやって乗り越えていくかっていうのは今の政治の課題。実は岸田さんって選択的夫妻別姓制を推進する議員連盟の幹部を務めているので、この問題については自分のカラーを出して乗り越えてくれって気が僕はします」
 家父長制、「日本は一大家族国家」…ほとんど戦前の大日本帝国ですね…その価値観を、旧統一教会のような反社会的カルト教団が支え、国政に影響力を持ち、同性婚や選択的夫妻別姓の実現を妨げ、議員の差別発言にもつながっているというのは本当に恐ろしいことです。この状況を何とかしないと、ひどい方向に「社会が変わってしまう」のではないでしょうか。
 
 田中信一郎千葉商科大学基盤教育機構准教授は、論座の寄稿「同性婚差別は岸田首相と自民党のホンネだ~「個人の尊重」という憲法原則を軽視する政権」の中で、「一連の出来事から、岸田首相と自民党は、憲法13条(幸福追求権)を軽視しているのではないかと、疑わざるを得ない」「「個人の尊重」と「為政者の価値規範」のどちらを優先するのかという論点は、方向としての民主主義と権威主義の分水嶺である」と指摘しています。(『チェチェンへようこそ』のデヴィッド・フランス監督は「民主主義を守ることがLGBTQの未来の唯一の希望である」と語っています。日本がロシアや中国、北朝鮮のような国になってしまわないよう、自由と民主主義を守っていかなければ…)
 

 この日も同性婚や性的マイノリティの権利回復を訴える記事がたくさん出ていました。
 
 特に素敵だったのは、ニュージーランド国会で「この法案によって私たちがしようとしていることは、愛し合う2人の人間が、結婚という形で認められるようにすることです」「住宅ローンが膨らむことはないし、皮膚病や肌荒れを抱えることもない。ベッドにヒキガエルが出てくることもありません」「明日も太陽は昇ります」という素晴らしいスピーチをしたモーリス・ウィリアムソンさんへのインタビューです。ウィリアムソンさんは荒井元首相秘書官の発言について「ただただ、極めて不快」「まったくもってみっともない」「口にするのはすごく恥ずかしいと思うべきだ」と非難し、「同性愛について最も重要なことは、それが自然であるということだ。そのように生まれ、そのように育つ。彼女たち、彼たちにとって、それが自分たちの一部だ。『そのような選択をした悪者』ということにはならない。そう考える人こそが『悪者』だ」と語りました。ニュージーランドでも10年前の法制化の際に、「社会の終わり」「国の道徳構造に終止符が打たれる」「すべてが破壊される」「許してはならない」という声があったそうですが、それらはすべて「一方的な勘違い」だったといいます。「10年間、私たちの世界はそのままであり続けた。何も変わらなかった。いいですか。同性婚を認めても、何も変わらないんです。同性愛者でもなければ、同性と結婚を望んでいるわけでもない人に何の影響があるのか。ない。10年たって、それが事実だと明らかになった」
 ウィリアムソンさんは「日本の政治家へのメッセージ」としてこう述べました。「日本の国会議員のみなさんの選挙区には、きっと賛成しない人が大勢いるのだろう。私の選挙区でも当時、有権者の半分ほどは反対だった。ただ、同性婚の法制化が混乱を引き起こすことはない。家族に影響を与えることはないし、マンションのローンを払えなくなることも、食べ物を買えなくなることもない。誰も傷つかない。法律を変えても、世の中は動く。ニュージーランドの場合、逆に次の選挙で議席を失ったのは、法制化に猛烈に反対した数人の議員だった」「ナンセンスなこと(法制化に反対すること)は、やめた方がいい。約束する。同性婚を法制化しても、何事にも、何のインパクトも及ぼさない。むしろ、正しいことのために立ち上がる覚悟のある人だと好感を持たれるだろう」「経済、社会、道徳に何の打撃も与えない。みな、幸せに暮らしている。法案に賛成した中で『反対すればよかった』と言っている政治家は一人もいない。逆はいる。さっさと実行に移そう」

 西日本新聞は、石川大我参院議員へのインタビューを掲載しました。「(同性婚を巡り)『見るのも嫌だ』との発言の根底にはホモフォビア(同性愛嫌悪)がある。同性愛などへ偏見を持ち、嫌悪の対象にする人に使う言葉だ。過去にも国会議員ら公職者の差別発言はあったが、今回は政治の中枢の人物だっただけに多くの当事者を傷つけた。特に若い世代には当事者だと周囲に言えず思い悩む人も多い。孤立した人を追い込む発言だった」「『同性婚導入となると、国を捨てる人は結構いる』とも述べた。理解ができない。逆に、同性婚制度がないことで、泣く泣く日本を出た人は少なくない。現実を知らないのだろう」「札幌地裁は、同性婚を認めないのは法の下の平等に反し、違憲と判断した。昨年の共同通信の世論調査では、7割超が同性婚を『認める方がよい』と回答した。首相は自民党保守派ばかりに気を使うのではなく、こうした国民の声に向き合うべきだ」「理解増進法はあくまで理念法だ。努力義務ばかりで実効性に乏しい。これまで同性愛などを告白した後に、職場や学校で不当な扱いを受ける事例があった。やはり差別を禁止する法律が必要だ」「欧米はLGBTを人権問題と捉えており、今のままでは日本は人権後進国とみなされ続ける。生まれ持った性的指向や性自認で自分らしく生きられないのはつらい。そうした人が安心して暮らせるようにするのが政治の役目だ」

 nippon.comはプライドハウス東京代表の松中権さんへのインタビューを掲載しました。「岸田総理は本当にLGBTQ+の当事者に会って、何が困難で苦しいのか、という声を聞いたのか。実情を聞けば動かざるを得ない、動きたいと思うはずです」「当事者は怒りを通り越して、気持ちを抑えられず力を失っている状況です」「とにかく差別をなくす法律、差別的取り扱いをなくす法律を作ってほしいです。それは法律上、同性カップルが結婚できるということだし、トランスジェンダーの方が望まない性別適合手術を強要されないということです。その法律がない限りは、日本に住むことに不安感を持つ人がたくさんいます。実際にLGBTQ+の方々は日本を出ていってますし、日本で暮らせないと思っているのが現状です。この国を良くしたい、多様性を受け止める国にしたいと政府が思うのなら、いち早く法制度を整えてほしいと思います」

 中國新聞は政権中枢にいた人物による差別発言をめぐる問題について、LGBT法連合会の神谷悠一事務局長の「理解増進では不十分で、差別禁止の法制度が必要だ」との声を掲載しました。「許しがたい発言だ。私たちのLGBT法連合会にも性的少数者から悲しみや不安、諦めの声が届いている。秘書官に同意する自分の親の姿を見て、死にたくなったという若者もいる。カミングアウトできている当事者は一握りに過ぎない。行政府の意思決定のトップである岸田文雄首相の側近から出た発言だ。こんな感覚で政策がつくられているのかと、恐怖を覚えた。市民の感覚を捉えられていないのではないか。首相が育児休業中のリスキリング(学び直し)発言をめぐって批判を浴びたのと同じだ。LGBT法連合会は5月の広島での先進7カ国首脳会議(G7サミット)までに差別禁止法を制定するよう訴えている。G7で制度を整えていないのは日本だけで、同性婚やパートナー制度も法的に認められていない。海外では同性愛者だと公表した大臣もいる。広島サミットで各国の政府要人やスタッフも多く来日するだろう。議長国である日本の政府が「見るのも嫌」との認識を持っていると思われたままではいけない」

 名古屋で「虹色どまんなかパレード」を主催してきたNPO法人「PROUD LIFE」の代表・安間優希さんへのインタビューも毎日新聞に掲載されました。安間さんはLGBTQや同性婚のあり方をめぐる差別発言や不適切な対応が後を絶たない現状について「議論している内容が10年前から変わらない。まずは当事者の支援に力を入れ社会参加の機会を増やしていきたい」「まずは理解より当事者への支援が先。当事者が輝く社会になれば自然に理解が広がると思うから」と語りました。

 埼玉新聞では、さいたま市在住の当事者の女性(57歳)の声が紹介されていました。LGBT理解増進法の制定への動きを「ありがたい」としながら、「理念では弱い印象。私たちにとって、同性婚を法的に認めるのが一番の望み」と語りました。「秘書官と同じような考えを持った人はまだまだ多くいると思う。更迭されたことで、問題ある考えと思ってほしい。私たちはそういうこととの闘いで、あまりオープンにしてこなかった。私はたまたま恋愛対象が同性だった。こういう人間もいると、少しずつ話をしてきた」「応援する法案よりは、同性婚を認める法律が一番の望み。法的に認められれば、そういう家族がいると知ってもらえる」
 埼玉県内の自治体に同性パートナーシップ証明制度制定を求める一斉請願を行なったり、埼玉レインボープライドを開催してきたレインボーさいたまの会は8日、「性的マイノリティーや同性カップルへの明確な差別発言」と抗議する声明を発表し、「首相と政権の姿勢全般について、埼玉県の団体として強い懸念」を表明したうえで、性的指向・性自認に関する差別解消や禁止の法制化、同性婚の法制化などを求めました。

 時事通信は同性パートナーシップ証明制度やファミリーシップ制度を導入した自治体の人口カバー率が6割を超えたことに触れ、自治体首長の同性婚の法制化に向けた国の議論の進展に期待する声を紹介しています。全国で初めてファミリーシップ制度を導入した兵庫県明石市の泉房穂市長は「これからは子どもや多様性を大切にした政策が大事。市民の強いニーズがあるからこそ取り組んでいる」と、岡山県総社市の片岡聡一市長は「当事者が性的マイノリティであることを隠さずに言える環境を、地方は一生懸命つくってきた。最終的には同性婚を法的に認めるかどうかの問題であり、国は議論を着実に前に進めてほしい」と語りました。




参考記事:
LGBTの人たちへの理解増進 議員立法めぐり議論 NHK日曜討論(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230212/k10013978601000.html
LGBT法案、自民は慎重姿勢=公明や野党は成立訴え(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023021200231
LGBT法案 萩生田氏「議論を前へ」 公明、野党は早期整備訴え(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230212/k00/00m/010/040000c

「サンモニ」青木理氏、LGBT問題で天皇制に言及「この勢力は声がデカイ」(デイリースポーツ)
https://www.daily.co.jp/gossip/2023/02/12/0016044744.shtml
青木理氏 LGBT問題に「岸田さんのカラーを出して乗り越えてほしい」(東京スポーツ)
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/253769
同性婚差別は岸田首相と自民党のホンネだ~「個人の尊重」という憲法原則を軽視する政権(論座)
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2023020900001.html

NZの同性婚法制化10年 社会は変わらず、政治家の意識が変わった(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR2B62CTR26UHBI007.html
「性的マイノリティは日本では暮らせない」LGBT当事者が語る“理解増進法案”成立への切実な思い(nippon.com)
https://www.nippon.com/ja/news/fnn20230212483499/
「当事者追い込む」秘書官発言 ゲイ公表、石川参院議員に聞くLGBT(西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1052547/
性的少数者への政権中枢の差別発言 日本に突き付けられた課題とは 識者2人に聞く(中國新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/269673
NPO法人「PROUD LIFE」代表 安間優希さん 性的少数者、まず支援を(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230212/ddl/k23/040/070000c
抗議…秘書官「LGBT嫌だ」同じ考えの人が少数になる時代へ オープンにしてこなかった当事者が語る根拠(埼玉新聞)
https://nordot.app/997397436345745408?c=724086615123804160

人口カバー率、6割超え 「パートナー制度」導入自治体―同性婚、国の議論に期待も(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023021100356

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