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立憲民主党や公明党の代表がLGBTQ団体と懇談し、差別禁止法を目指すことで合意しました
同性婚やLGBTQ差別発言をめぐる2月11日のニュースをお伝えします。
前首相秘書官の差別発言を受けて今国会の焦点に浮上しているLGBT理解増進法案をめぐって与野党で議論が交わされています。自民党は保守派の理解を得るため、2021年に与野党合意を見た(この一文が入らなければ意味がない)「差別は許されない」という文言すら修正を求め、この法案を骨抜きにしようと画策しており、立憲民主党は受け入れられないと反対しています。立憲民主党の泉健太代表は10日の記者会見で「妥協に妥協を重ね、ようやく理解増進法案ができた。今の法案にも満足していないのに、さらに趣旨を弱めようという動きを許せるわけがない」と述べました。同党の長妻昭政調会長は9日の会見で「理解増進法案は入り口にすぎない。本丸は差別解消法案だ」と強調しました。与党公明党の山口那津男代表も同日、記者団に「差別を禁止する仕組みに最終的には至るべきだ」と語りました。
泉代表をはじめ立憲民主党「SOGIに関するプロジェクトチーム」の方々は10日、公益社団法人Marriage For All JapanやLGBTQ団体の方たちと面談し、性的マイノリティ差別解消法、同性婚の実現に向けて取り組んでいくことを確認しました(詳細はこちら)。面談の後、泉代表は会見で「G7の中で日本だけが制度化されていない同性婚を実現していく国会にしなければならない」と述べました(同党の西村智奈美代表代行は9日の衆院予算委員会で同性婚に関して「衆院法制局が憲法は少なくとも同性婚の法制化を禁止していない。すなわち、認めているとの許容説は十分に成り立ち得ると答弁していた」と述べていました)。また、「憲法改正がなければできないことではない。同じ意見を持つ人とは連携しなければならない」とし、公明党に協力を呼びかける可能性も示唆しました。
公明党の山口代表も10日、プライドハウス東京レガシーを訪れ、意見交換しました。LGBTQコミュニティのメンバーは「私たちが隣に住んでいては嫌だ、見るのも嫌だ、というような言葉を聞かなければならないのはあまりにも酷だ」として、超党派議連がまとめたLGBT理解増進法案の成立に加え、差別禁止法や同性婚法の整備を要望しました。山口氏は「理解増進法をしっかり作って、その先を目指していきたい」と応じたそうです。
理解増進法を作って終わりとするのではなく、あくまでも差別解消法を目指すとの立場が両党から示されたのは心強く、評価に値します。(田亀さんも指摘していますが)LGBTの権利を擁護する法を作ろうとすると差別主義者の口撃も増大し、若い当事者の方などが傷ついてしまうという問題もあります(今回の件でも、こちらのようなひどい発言が上がり、問題視されています)。そういう意味でも、早く差別禁止法が制定されることが望まれます。
同性婚やLGBTQ差別禁止法の必要性を訴える記事も引き続き、多数上がっています。
プライドハウス東京の松中権代表は、日テレのインタビューで前秘書官の発言について「どんな人に言ってもダメな言葉」人権を理解していないどころか、本当に大丈夫ですか?と言いたくなりました」と答え、「社会が変わる」発言について「変わっていないのは、国会や岸田さんの身近にいらっしゃる方だけだと思います。差別をしてもいいと思っている方々を守るための発言に聞こえます」と語りました。今国会で議論されているLGBT理解増進法案については、「法律が無いこと自体が問題なので法律ができたら大きな一歩だとは思います。でもその議論は2年前にやっていて、この2年で社会は変わった。議論の中に当事者が不在で、何のための法律かわからないという気持ちです」と、岸田政権に望むこととして「差別禁止法、選択的夫婦別姓、同性婚、望むものは全部望みます。人権課題として差別的な状況を解消するものは望みます。岸田さんが「当事者の声を聞く」とおっしゃっていたのでぜひ当事者の声を聞きに来てほしいです」と語りました。
小島慶子さんは『mi-mollet(ミモレ)』で、首相が6日「国民に誤解を生じさせたことは遺憾だ。不快な思いをさせてしまった方々におわびを申し上げる」と謝罪した件について、「要人などの差別発言が批判された際のお決まりの弁明です。どうも発言を「誤解」して「不快な」気持ちになっている人がいるようだから、お詫びしますと。差別しておきながら、姑息な言い換えで誤魔化す。そうさせないためには、LGBT理解増進法という曖昧な法律ではなく、性的少数者に対する差別を明確に禁ずる差別禁止法が必要です」と指摘し、「岸田政権にLGBTQの人権を守る法整備を求める」署名への賛同を呼びかけました。
荒井元秘書官の発言についても「同性カップルに対する嫌悪感を露骨に表しています。“差別的なことを思ってい”ないと出てこない言葉です」「人権は、相手に対して好感を持っているかそうでないかに関わらず、尊重しなくてはならないものです。友達でなくても、家族でなくても、何一つ自分と共通点がない人でも、その命と尊厳は自分の命と尊厳と同様に等しく大切にされなければならないという基本的な認識に立つことが、人権を尊重するということです」「政権中枢の人物が報道陣を前にして「人の命は大事だけど、あいつは嫌い」とあなたを指差したら、どうですか。身の危険を感じるでしょう。あいつはいじめても構わないというルールができるかもしれない、あの言葉を聞いた誰かが自分に危害を加えにくるかもしれない、殺されそうになっても誰も助けてくれないかもしれないと恐ろしくなるでしょう。あれは、そういう発言なのです」「荒井氏は性的少数者を直接に名指ししたのですから、それがどれほど深刻なことか分かりますよね。差別そのものであり、暴力を助長しかねない発言です」と厳しく追及しました(本当にその通り!と拍手したくなります)
「首相は荒井氏を更迭しました。しかしその発言が差別であったとは明確に認めていません。党内からは「(性的少数者に対する)差別の禁止や法的な措置を強化すると、社会が分断される」と懸念する声が上がっています。
一体どんな分断を心配しているのでしょうか。性的少数者の人権を尊重することは、他の人の人権を軽んじることにはなりません。むしろ、どんな人の人権も等しく尊重されるということがより明確に示されるだけです。では、性的少数者が差別されない社会では、誰が排除されるのか。差別をする人です。差別禁止法は差別をする余地を残しておきたい人にとって不都合であるということを、如実に示す発言です」
金沢レインボープライド関連イベントや企業向けセミナー「work with Pride」で司会を務めるなどLGBTQコミュニティにも直接的な支援をしてくださっている小島慶子さん。このエッセイは本当に素晴らしいので、ぜひみなさん読んでみてください。
在英国際ジャーナリストの木村正人さんはYahoo!の記事で、英国でパートナーのトムさんと結婚したKanさんにインタビューしました。Kanさんは荒井前秘書官の差別発言について「国の制度に関わる仕事をしている政府の中枢からあのような発言が出てきてしまうことはすごく大きな問題です。それが容認されてしまうと職場で『LGBTQのような人は見たくない』とか、教室で同級生があのような発言をしていじめに発展する恐れもあります」と、同性婚について「多くの自治体でパートナーシップ制度が認められているのに国レベルで認められないのは、反対する人が政府中枢にいるからでしょう。国民の間ではだんだん理解が進んでいます。でもその声が国政に反映されていません。決定権を持っている人たちが明確な意思を持って“検討している”という言葉で判断を遅らせている、つまり反対しています。自治体も困っていると思います」と語りました。また、リナサワヤマさんのMVに出演できたことや、偶然ロンドンの地下鉄でサディク・カーン市長と隣り合わせ、「結婚おめでとう。今年は数年ぶりにプライドパレードがあるから楽しみだね」と祝福してくれた喜びを語りました。
南和行弁護士は『ABEMA Prime』に出演し、「社会が変わるという前に、当事者がいるわけだ。僕がこうやって公表できるのは稀なケースで、ほとんどの人が言いたくても言えなかったり、法律や制度がないという背景がある。制度ができることで困っている人が助かる、あるいは何らかの権利が保障されるところからスタートしないと結局、“みんなの議論を待とう”から進まない」と語りました。また、「自治体によるパートナーシップ制度は、要は単なる“祝福”でしかなく、法律では何の権利も保障されていない。1年ちょっと前に大きい交通事故にあって救急搬送された時、パートナーもついて来たのだが、お医者さんは『手術の説明に立ち会うのは血縁じゃないとあかん』『お母さんおらんのか』と。足の骨折で上半身はピンピンしている僕が『パートナーだ』と言っているのに、『血縁の人に説明せずに何かあって裁判されたら病院が負ける』と言われたので、他の病院へ移った。大けがをしても意思や会話が明瞭な場合、立会人は自分で決められるが、結局のところ判断はお医者さんの価値観にかかってくる。ただ、医療の現場でそう言われたらみんな我慢してしまうではないか。事実婚状態の方たちの公正証書を作るお手伝いをすることもあるが、お医者さんに言われたらそういうものを見せなくてはならないのは、差別や偏見があるということだ」と訴えました。
小林節慶応大名誉教授は『日刊ゲンダイ』で、松野博一官房長官が「憲法24条は同性婚制度を認めることは想定していない」「憲法が同性婚導入を禁止しているか、許容しているかについて、政府は特定の立場に立っているわけではない」と述べたことについて、「これでは要するに何も述べていないに等しい」としたうえで、「同性婚制度を法制化するためには24条の改憲が必要だとする主張は、科学の進歩と人権の本質を理解しようとしない者による暴論以外の何ものでもない」と述べています。
信濃毎日新聞は社説で「差別は人権侵害であり、許されない。これは、民主主義社会の根幹となる考え方だ。受け入れられないとすれば、政治に携わる資格はない」「人権は、思いやりや温情とは違う。人が人としてあるために、誰もが生まれながらに持つ権利だ。社会的少数者が踏みにじられていいはずがない」「今回の法整備を、全ての差別をなくす一歩にしたい。そのためには差別を禁止する一般法の制定も求められる。欧米では既にある。国会で論議を深めてほしい」と述べています。
山陽新聞は社説で「政権として「多様性を認め合う包摂的な社会を目指す」というのなら、岸田文雄首相自ら法整備を主導するなど行動で示すべきである」「問われているのは岸田首相の人権意識である」「(LGBT理解増進法について)法案は罰則などのない理念法だが、多様性への理解を進める一歩となる。早期成立に向け、党総裁として岸田首相は指導力を発揮するべきだ」と述べています。
荒井首相秘書官差別発言を受けて、誰もが簡単に意見を投票することができるサービス「Surfvote」が3回目の「同性婚を法制化すべきか?」投票を始めました。2021年9~12月に実施した1回目の投票では、「同性婚の法制化を急ぐべき」とした人がすでに78%に上っており、「法制化に向けた議論を進めるべき」が15%、「法制化をすべきでない」はわずか7%でした。翌2022年2~4月に実施した2回目の投票では、法制化を急ぐべきだという人が88%、議論を進めるべきという人が8%とさらに肯定的な人が増えています。私も意見を表明したいという人は、投票ページへ。締切は4月30日です。
参考記事:
「差別」文言で駆け引き激化 LGBT法案、成否不透明(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023021001165
山口公明代表、LGBT施設を訪問 当事者、岸田首相と面会希望(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023021001020
同性婚実現の国会にしなければならない 泉代表(エコノミックニュース)
https://www.excite.co.jp/news/article/Economic_000098781/
同性婚容認「同じ意見の人と連携」 立憲民主党・泉代表(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA103AJ0Q3A210C2000000/
LGBT当事者「変わってないのは国会や首相の周りだけ」首相の「社会が変わる」発言に(日テレNEWS)
https://news.ntv.co.jp/category/politics/cc9197bfcc8c42ba9f734949422cbb4f
繰り返される「誤解と不快への謝罪」。差別反対は政治的な好みの問題ではない【小島慶子】(mi-mollet)
https://mi-mollet.com/articles/-/40829
同性婚で「社会が変わってしまう」と国会答弁した岸田首相のどこが、どう間違っているのか(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20230211-00336601
結婚制度のアプデ “夫夫”の弁護士「“議論を待とう”から進まない」 “事実婚”の池澤あやか「一方だけが姓変更の手続きをするのは不平等」(ABEMA TIMES)
https://times.abema.tv/articles/-/10067203
ここがおかしい 小林節が斬る! 同性婚法制化に憲法改正は必要ない(日刊ゲンダイ)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/318559/3
〈社説〉LGBT法案 全ての差別をなくす一歩に(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023021100045
LGBT法案 首相は指導力を発揮せよ(山陽新聞)
https://www.sanyonews.jp/article/1361919/
同性婚の法制化に意見表明 SNSで3回目の投票スタート(OVO)
https://www.excite.co.jp/news/article/Ovo_1841612/