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国会の超党派LGBT議連が米国LGBT人権担当のジェシカ・スターン特使と意見交換しました
2月8日の国会で、総理秘書官の差別発言にもつながる、首相が発した「社会が変わってしまう」との発言について、野党がその真意を追及しました。
岡本あき子議員(立民):「『同性婚を認めると社会が変わってしまう』。この発言に対しても非常に大きな批判が出ております。この表現も、やはり当事者からは非常にネガティブな表現として受け止められております。この点も謝罪と撤回を求めたいと思います」
岸田文雄総理大臣:「すべての国民に幅広く関わる問題であるという認識の下に『社会が変わる』ということを申し上げたわけであります。これは決してですね、ネガティブなことを言ってるんではなくして、もとより議論を否定している、こういったものではありません」
岡本議員:「G7の中でLGBTに関するところ、それから同性婚の法制化、これ認めていないのは日本だけです。法務省の答弁のたたき台は『社会が変わる』というのはあったのかもしれません。ただ『変わってしまう』と、あえて重ねておっしゃいましたよね。そこの真意を伺っております」
岸田首相:「すべての国民に幅広く関わる問題であるということで『社会が変わる』ということを申し上げました。『変わってしまう』と言った、変わることになる、だから議論が必要であるという、このことを申し上げているわけでありまして、この同性婚ということについて、ぜひ幅広く議論をしていくことが重要だということは国民の皆さんにしっかりと、このご理解をいただき、この問題についてどのように考えるか国民全体で考えていきたいと強く思っております」
(中略)
岡本議員:「LGBTの理解増進法。前に議論を進める法律を作っていく、その覚悟はおありかお答え下さい」
岸田首相:「議員立法の法案であり、自民党においても引き続き提出に向けた準備を進めていくことを確認をしております。政府としては、まずはこうした議員立法の動きを尊重しつつ、見守っていきたいと考えています」
同日、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」が国会内で役員会を開き、米国でLGBTQの人権を擁護する外交活動を取り仕切るジェシカ・スターン特使と意見交換しました。議連の会長代理を務める自民党の稲田朋美議員をはじめ約10人が参加し、G7サミット前に「LGBT理解増進法」の成立を目指す方針を確認したそうです。
会合後、スターン特使は「性的少数者への差別や暴力は、アメリカを含め世界中に存在する」と述べ、だからこそ権利を守る法整備が必要だと強調しました。「性的少数者の権利が法制化されれば、彼らはより安全になり、国はより繁栄し、家族はより調和して強くなり、社会全体が恩恵を受けます」
議連は、15日にLGBTQ(性的マイノリティ)の当事者から意見を聞く予定だそうです。
上記の岡本議員の追及も、議連の会合についても、「LGBT理解増進法」の成立を進めると報じられていますが、野党は皆これに合意したのだろうか…と疑問を感じる方もいらっしゃることでしょう。少なくとも立憲民主党の福山哲郎議員は「理解増進法では足りません。差別解消を目指したLGBT平等法の制定を求めています」と、辻元清美議員も「指標にカウントされない、透明人間みたいな理解増進法を、国際社会はどんな目で見るのか」と述べ、LGBT平等法(差別禁止法)を推しています。また、社民党の福島みずほ党首も8日の会見で「今国会でまさにLGBT差別禁止法を成立させるべく、たくさんの人と力を合わせたい。同性婚の法律も実現したい」と語っています。
追記ですが、立憲民主党の泉健太代表は9日の泉「次の内閣」第17回閣議で「理解増進法すら党内でまとめられない自民党に対し、われわれ立憲民主党は差別解消法を立案している。当事者の皆さんに寄り添い、だれもが生きやすい社会をつくるために、引き続き差別を解消する取り組みを進めていく」と決意を述べました。
昨日の3団体による会見で、LGBT法連合会事務局長の神谷悠一さんも「仮にG7広島サミットまでにLGBT理解増進法ができたとしても、国際社会から差別禁止法と見なされることはないと思う」と指摘しているように、「LGBT理解増進法」は罰則規定がない理念法で、LGBTへの理解を推進する啓発の内容にとどまるものであり、実質的な差別の解消にはつながりません(むしろ罰則がないことによって差別行為が見逃され、差別したい人に都合のよい法になりかねない、との懸念もあります)
青山学院大学の谷口洋幸教授(国際人権法)も「国内でも、人権教育・啓発推進法に基づき、性的少数者に対する理解を増進する施策は、既に20年にわたって実施されている。それでも、首相秘書官という公務員が差別的な発言をした。「理解増進」を進めるだけでは不十分だということが証明されたといえる。法整備は次の段階に入り、当事者が差別されたと感じた時に差別を救済できる制度を作るべきだ」と述べています。
5万筆をうかがうオンライン署名もLGBT平等法(差別禁止法)、婚姻平等(同性婚)、性同一性障害特例法の見直しを求めています。
SNS上では今、#理解増進ではなく差別禁止をとの運動が展開されています。
そして来週、2月14日には緊急院内集会が開催されます。度重なる差別問題は差別禁止法がないことの帰結でもあり、必要なのは「理解を深めること」ではなく「差別がない社会を構築する」ことだと確認し、理解増進法ではなく差別禁止法を!と国会議員の皆様に訴える会になるはずです。
日々、大量のニュースが届き、情勢が刻々と変化していく今日この頃ですが、引き続き、この問題をできるだけわかりやすくお届けしていきます。
参考記事:
同性婚“社会が変わる”発言追及 岸田総理「ネガティブではない」(テレ朝)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000286809.html
超党派LGBT議連が米国特使と意見交換 「少数者の権利の法制化で社会全体に恩恵」(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/319209
超党派議連、LGBTの人権協議 米スターン特使と意見交換(共同通信)
https://nordot.app/995977764434460672?c=768367547562557440
LGBT法案、サミット前成立を=超党派議連(時事通信)
https://news.livedoor.com/article/detail/23675700/