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台湾・高雄で2025年開催予定だったワールドプライドが中止となることが発表されました
8月12日、Taiwan WorldPride 2025(世界同志遊行在台灣)が声明で、2025年開催予定だったワールドプライドのプロジェクトを中止することを発表しました。ライセンサーであるInterPride※との合意に至らなかったことが理由だそうです。
※ワールドプライドは、世界各地で開催されているプライドパレードとは別に、世界レベルでLGBTQの平等や権利回復をプロモートするべく、2000年にInterPrideという欧州の団体がイタリアのローマで初開催したものです。以後、数年に1回のペースで世界中のいろんな都市で(持ち回りで)ワールドプライドが開催されています。開催のライセンスはInterPrideが保有し、毎回、五輪のようにコンペが行なわれ、ホストシティが決定されます。
Taiwan WorldPride 2025(世界同志遊行在台灣)のFacebookに上がった声明は以下の通りです。
《WorldPride台湾2025開催プロジェクト終了に関する声明》
「WorldPride2025台湾準備委員会は、台湾でのWorldPride2025開催の入札以来、多大なご支援をいただきましたことに心から感謝申し上げます。数ヵ月の準備と政府幹部、企業との連携を経て、WorldPride Taiwan 2025のプロジェクトが終了したことを発表するのはたいへん残念です。
イベント契約の条件を協議・交渉した際、WorldPride2025台湾準備委員会(台湾プライドと高雄プライドで構成)は、イベントライセンサーであるInterPrideとの合意に至りませんでした。イベントの名称、台湾の文化の理解、WorldPrideイベントがどのようなものかという期待に大きな違和感がありました。
一進一退の議論のなかで、InterPrideは、私たちのチームがアジア最大のプライドイベントのいくつかを成功させてきたプライドの主催者で構成されているにもかかわらず、台湾にWorldPrideのような国際的なイベントを開催する能力、経済的、それ以外の能力があるかどうかについての懸念と疑問を繰り返しました。私たちはイベントの記録の証明として過去のデータや関連統計も提示しましたが、InterPrideは納得しませんでした。私たちも協力しようとしましたが、その努力はInterPrideとの平等で信頼できるパートナーシップにはなりませんでした。
交渉が行き詰まった最後の一打は、イベント名を「ワールドプライド台湾2025」から「ワールドプライド高雄2025」に変更することを要求するInterPrideからの突然通知でした。入札申請や入札案評価から開票プロセス、当選発表まで入札全体で「ワールドプライド台湾2025」という名称が使われていたにもかかわらず、です。
私たちは「ワールドプライド台湾2025」という名称を使用する重要な理由があることをInterPrideに伝えました。まず、「台湾プライド」という名前は、2003年の初版以来、現在も続く台湾のLGBTIQ+コミュニティにとって象徴的な意義です。 それは都市ではなく国民全体にちなんで名付けられたということ、 第二に、「ワールドプライド台湾2025」は、高雄のほか、多くの都市が参加する台湾全土でいくつかのプライドイベントや活動をつなぐために企画されました。
当選発表の後、2021年11月16日、台湾外務省、Interpride、高雄プライドとの三者会合の場で、InterPrideは台湾を国ではなく地域と名指す祝辞を読みました。会合で、三者は、すべての関連イベントや活動の名称として「ワールドプライド台湾2025」を使用することで合意したのです。しかし、最近の契約交渉で、突然、「ワールドプライド台湾2025」は国ではなく開催都市にしか名前を付けられないという条件をつけてきました。この予期せぬ要求は、実質的に以前に結ばれた合意を裏切るものです。
InterPrideのイベント名称への一貫しない態度や、私たちのチームや台湾マーケットへの疑問など多くの不確実な出来事に直面したため、私たちは、台湾のLGBTIQ+コミュニティの最善の利益を追求するためにも、WorldPride2025開催のプロジェクトを終了するという痛ましい決断をしなければなりません。WorldPride 2025準備委員会も、開催できなかったことの責任を取って辞任します。
私たちを支えてくださった皆様に深く感謝申し上げます。特に台湾の大統領府と外務省による継続的な支援とリソースの提供に感謝しています。
WorldPride Taiwan 2025の開催を終了することによって、LGBTIQ+コミュニティに奉仕するモチベーションを損なわないことを約束します。私たちは台湾のLGBTIQ+カルチャーを世界中でプロモートし続けます。
WorldPride 2025台湾準備委員会
2022/08/12」
台湾の外務省も同日、声明を発表しました。
InterPrideがWorldPride 2025 Taiwan準備委員会に、2025年のワールドプライドをキャンセルすることを要求したことを受けて、台湾外務省は以下のように応答する:
「8月12日、高雄プライド(KHPride)と台湾同志遊行(Taiwan LGBT Pride)によって構成されるWorldPride 2025 Taiwan準備委員会は、WorldPride 2025をキャンセルするよう要求されたことを示唆する声明をリリースしました。準備委員会とInterPrideは以前、「ワールドプライド台湾」という名称で合意に達していました。しかしながら、委員会による忍耐強い努力もむなしく、InterPrideは合意を破り、頑なに都市名しか使用が許されないため「ワールドプライド高雄」という名称に変更するようにと主張しました。外務省は、委員会がキャンセルを余儀なくされ、この結果を深く遺憾に感じている状況をよく承知しています。
2021年、高雄プライドはコンペに勝って、2025年ワールドプライド開催の切符を手にしました。そして台湾外務省が仲介し、InterPrideは、台湾についての不適切な位置付けが書かれたプレスリリースを修正しました。両者は「ワールドプライド台湾」という名称で合意に達しました。
「ワールドプライド台湾」は東アジアで初めてのワールドプライドとなるはずでした。それはアジアと世界の多様性と平等の前進にとって意義深いものとなるはずでした。台湾は、政治的な思惑によって、InterPrideが一方的に合意をひっくり返し、協力関係や信頼を壊してしまったことに対し、深く遺憾を表明します。この決定は台湾の権利や真摯な努力への敬意が感じられないだけでなく、アジア地域での広範なLGBTQコミュニティを傷つけ、InterPrideによって信奉されてきた前進の原則に反することにもなります。
外務省は台湾がアジアで初めて同性婚を法制化し、台湾の多様性、平等、包摂を追求するコミットメントが広く国際社会の賞賛を集めてきたことを強調します。ここ数年、台湾は大規模なプライドパレードやイベント、デモを開催してきており、アジアでワールドプライドを開催する能力が最も高い国であることは間違いありません。今回の結果は残念ですが、台湾の人々の自由と平等の追求への情熱がくじかれることはありません。
外務省は準備委員会の、台湾の権利と関心、国家の安全保障のための闘いの原則を守ろうとする努力に対し、敬意を表します。外務省はこの先も、台湾の平等に関する団体を支援し、台湾の平等の権利のプロモーションについての経験と成功を世界的に認めるようなアウェアネスの多様なチャンネルを展開していく所存です。」
名指しはされていませんが、中国との関係で、何らかの政治的圧力が働いたことが、InterPrideが突然、台湾という名称は使えないと態度を翻したことにつながっていると推測されます。
2018年、パリで開催されたゲイゲームズでも、台湾の初参加にあたり、登録時に「台湾」で登録を行なうことや、台湾の国旗の使用も認められ、選手団は台湾代表として出場することができると期待していたにも関わらず、開催直前に主催者が「Taiwan」を「Chinese Taipei」に変更し、台湾旗の使用にも難色を示したことから、台湾の活動家らが「中国政府から主催者に対して圧力がかかっている」と非難する出来事がありました(なお、台湾勢は金10、銀5、銅3の計18個のメダルを獲得するという活躍を見せました。詳細はこちら)
ゲイゲームズの開会式では、対立している国の選手どうしが一緒に歩き、LGBTQが国境を越えて連帯する姿が感動を呼んできました。まだInterPrideからの声明(言い分)が発表されていないので、はっきりとは言えないものがありますが、今回、国と国との対立(国際的な政治状況)がワールドプライドという平和の祭典の開催を中止に追い込んだのだとしたら、とても残念なことです。