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学校教員用の手引書「生徒指導提要」の改定で、「性的マイノリティの児童生徒の良き理解者となるよう努める」との文言が盛り込まれることになりました
文部科学省が、近く改訂する学校教員用の手引書「生徒指導提要」にLGBTQ(性的マイノリティ)の児童生徒への対応に関する項目を盛り込む議論を進めていることが明らかになりました。
文科省は2015年、初めてLGBTQの子どもへの配慮を求めるよう全国の学校に通知を出しており、子どもが相談しやすくするために、教員の性的マイノリティについての心ない言動を慎むことや、子どもの服装や髪形を否定したりからかったりしないよう明記しました(詳細はこちら)
一方、LGBTQを対象にした2017年の調査で、半数以上が学校生活でいじめを経験し、うち7割近くが「先生はいじめの解決に役立たなかった」と思っていることが明らかになっており、学校現場に正しい知識や情報が広がらず、教師も対処しきれていない状況が浮き彫りになっていました。
同年の学習指導要領改訂の際、「思春期になると、だれもが、遅かれ早かれ異性に惹かれる」という誤った(同性愛を無いものとする)記述を変えようとする運動が起こりましたが、残念ながら採用されませんでした。この決定に対し、初めてwork with Prideを開催したことで知られる人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、「LGBT生徒への支援の絶好の機会を逸した」と指摘しました(詳細はこちら)
こうしたなか、教育現場では、いまだ先生方の間でのLGBTQへの理解度にばらつきが大きく、学校での指導や接し方が原因で傷つく子どももいるのが現状です。2010年に策定された「生徒指導提要」には性的マイノリティについての記述はありませんでしたが、今回、社会的認知度の高まりから、有識者らがまとめた改訂案に「教職員が悩みや不安を抱える児童生徒の良き理解者となるよう努める」などと明記されることになりました。新たな流れに、支援者から「一歩前進」と期待の声が上がっています。
日本大学教授で内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議構成員である末冨芳氏は、「重要な方針です。LGBTの子ども若者はいじめ被害経験が高いことも、当事者団体の調査から把握されています。教員の理解は重要です。担当する児童生徒に当事者がいた場合に、多忙な中でも積極的に学び、できる限り必要なサポートをしようとする教員もいます。一方で教員だけに負担を負わせることも、酷です。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを常勤化し、心理面や相談支援につなげる体制も重要です。当事者や家族が、学校を卒業しても継続して相談できる体制の整備は、国と自治体の役割になります。当事者団体への助成を手厚くし共助の仕組みを整えることも必要になります。LGBT差別発言をした簗副大臣の就任で、今後こうした動きが妨げられないか、関係者は注視しておく必要があるでしょう」とコメントしています。
参考記事:
LGBT理解、手引書刷新へ 教員向けに文科省(共同通信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/7ecca349347b76b9fbb2fb2fbb46aba10c75dc67