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　今年4月、元世界ボクシング評議会（WBC）女子フライ級王者で、2017年に性別適合手術を受けて戸籍性も変更したトランス男性の真道ゴーさん（34歳）が男性としてプロボクサーに復帰する意向を表明しました。国内では初めてのケースです。真道選手は日テレの取材に対し、「世の中で初めての取り組みなので、賛否両論いろいろある中で、いろんな意見が飛び交う。そういうものと向き合っていかなあかん」「自分がどのような世界に挑もうとしているのか、それがどれだけイバラの道なのか。自分自身、リングに上がれることを願って、とにかく日々トレーニングに挑もうと思っています」と語りました。

　4月12日、日本プロボクシング協会は理事会で真道さんを男子選手として日本ボクシングコミッション（国内のプロボクシング競技を統轄する機関）に推薦することを決め、男子プロテストの受験を認めるよう嘆願書を出しました。満35歳になるとプロテストの受験資格を失うため、目指すのは7月のテスト合格です（真道さんは7月18日で満35歳になります）。真道さんは「ワクワクだけではなく不安もあるが、1勝という目標に向かっていく」と、日本ボクシング界では前例のない挑戦を実現させようとしています。
　
　2008年にプロデビューした真道さんは2013年に女子フライ級王座に就き、2度防衛しました。現役の時から性同一性障害であることをカムアウトしており、2017年に性別適合手術を受けて戸籍も男性に変更し、長年支えてくれた女性と結婚、同年10月に引退を発表しました。現在は妻、3人の子どもと和歌山市内で生活し、障害のある子を支援する放課後等デイサービスなどを運営する会社を経営しています。引退記者会見では男性としてのリング復帰に意欲的でしたが、日々の仕事に忙殺され、「いばらの道へ中途半端に挑戦するのは難しい」と次への一歩を踏み出せずにいました。
　しかし、昨年夏、知人の試合を観戦しているときに3歳の長男が発した「なんでパパはボクシングせんの？」という何気ない一言をきっかけに、また、職場のスタッフから「最近、悩んでいませんか」と声をかけられ、日頃「子どもたちに『大人って素敵だな』と思ってもらえるよう、輝いている姿を見せよう」と伝えてきたのに、自らが輝けていないと痛感し、「まだボクサーとしてやり残していることがある」と昨年9月、リング復帰を決意したそうです。
　所属するグリーンツダジム（大阪市）の本石昌也会長も「誰も開けなかった新しい扉を開こうとする勇気ある行動」と応援し、週に数回の練習を再開。4月には男子プロ選手とのスパーリングを西日本ボクシング協会の理事5人に披露し、全員から「力量は申し分ない」とのお墨付きを得たそうです。本石会長は「彼を男子のリングに上げられる自信がある。我々は本気だ。早ければ年内に試合をさせたい」と語りました。
　ただ、プロライセンスを管理する日本ボクシングコミッション（JBC）が財政難により3月末に解散したことが影響し、5月のテストに間に合いませんでした。JBCは医学の専門家や有識者も交え、安全性や男性ホルモン投与の影響などを協議してプロテスト受験の可否を判断することになっています。もし35歳という年齢の期限までに受験できなかった場合、本石会長はライセンスの再交付を要求する選択肢も考えているそうです。真道さんは「周りから無謀と言われることに挑戦する姿が（同じ境遇にある）その人たちの勇気にもなれば幸いです」と練習に打ち込んでいました。
　
　読売新聞が「男として再挑戦のリング…元女子ボクサー、真道ゴーの葛藤」という連載を組んだり、スポーツ新聞各紙も応援するスタンスで記事を書いているように、ただでさえ危険が伴うボクシングという格闘技の世界で、女性から男性にトランスしてプロテストに臨むという前代未聞のチャレンジをしている真道さんの姿は、世間に少なからず感動を与えているようです。
　



参考記事：
元女子世界王者・真道ゴー（34）、男子選手として再びリングへ（日テレ）
https://news.ntv.co.jp/category/sports/d8f4aac309744daf96cbdae052ce474d
真道を男子選手として推薦　ボクシング（朝日新聞）
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15264152.html
ボクシング元世界女王の真道ゴー　男性でリング復帰挑戦（日経新聞）
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF292XT0Z20C22A5000000/
男として再挑戦のリング…元女子ボクサー、真道ゴーの葛藤〈１〉　スポーツストーリー「LIFE」（読売新聞）
https://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/20220628-OYT1T50086/