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日本と台湾のゲイカップルの婚姻を認める判決が出ました
昨年末、日本と台湾の同性カップルが台湾での婚姻届の受理を求めて提訴しましたが、7月21日、台北高等行政法院が不受理は違法であるとの判決を下しました。これにより、有吉英三郎さんと盧盈任さんの婚姻が認められることになりました(おめでとうございます!)
有吉さんは30代半ばまで日本で暮らしていましたが、その頃は「そもそも日本に同性婚の制度がなく、職場もカミングアウトできる環境ではなかったので、結婚に対して希望を持ったことはなかった」といいます。36歳で台湾に移住し、現在のパートナーで心理カウンセラーの盧盈任さんと出会い、おつきあいが始まり、人生が変わりました。盧さんのご家族も有吉さんのことを迎え入れ、「自分たちの息子にとって大切なパートナーだから、大切にしよう」と思ってくれているのが伝わってくると、「これほど良い関係を築けているのに、結婚していないから法律上は家族と言えない。お互いの家族のつながりを公的に認められることで得られる幸福がある」と感じ、「大好きな夫の家族と法的にも家族になりたい」という思いを強くするようになりました。
そして2017年5月、台湾の最高裁が同性婚を認めないのは憲法違反だとして立法院(国会)に同性婚法の制定を求める、法律が制定されない場合は2年後に自動的に同性婚を認めるという判決が出たとき、国会前に集まった数百人の人々がうれし涙を流しながら抱き合っていたのは、有吉さんにとっても忘れられない光景になりました。「同性愛者の人たち自身が、婚姻制度を求めて公の場で声を上げることを誇りに思い、素晴らしいこととして活動していました。彼らと出会い、同性愛者の自分も結婚を望んでいいんだと感じられるようになりました」
二人は同性婚法の施行を見越して、2019年の5月に結婚式を開く予定を立て、高雄の会場を予約して日本の家族・友人ら約200人を招いていました。しかし、同性婚法が成立する数日前、外国人との同性婚が認められるのはパートナーの出身国・地域が同性婚を承認している場合に限られる(日本人である有吉さんは台湾でも婚姻届は受理されない)ということがわかりました。結婚式は予定通り行ない、とても幸せな式になりました。しかし、婚姻届は受理されず、有吉さんは「私が日本人だから、パートナーに婚姻関係を結ぶという安心を与えてあげられないことが悲しく、悔しい」と感じたそうです。
有吉さんの在留資格は就労ビザで、2年ごとに更新が必要です。勤務先の都合やけが、病気など、何らかの事情で仕事を続けられなくなった場合、ビザの更新が認められず台湾からの退去を迫られる可能性があり、「もしものことがあったら夫と離れ離れになるしかなく、その不安は常にあります」といいます。
こうして有吉さんと盧さんは、同性婚が認められていない日本の法律を台湾に適用するべきでないなどとして、処分を取り消し、自治体に婚姻届を受理するよう求める訴えを、昨年12月23日、台湾の裁判所に起こしました。日本人が台湾でこうした訴えを起こすのは初めてです。有吉さんは「日本にいるときは同性婚が認められず、結婚をあきらめざるをえなかった。台湾ではパートナーと結婚するという夢を実現したい」と語っていました。
そうして本日、7月21日、台北高等行政法院で判決が下され、婚姻届の不受理は違法であるとする全面勝訴の判決が出ました。
裁判を傍聴した方によると、判決後、裁判所の前でお二人と支援者の方たちが並んで立ち、有吉さんがマイクでこのようにコメントしました。
「私にとって結婚というのは、自分にはないものだと思っていました。それが、台湾に来て、同性婚が成立する瞬間とか過程をずっと見てきて、自分にも結婚ができるとわかったとき、光が差すような嬉しい気持ちになりました。3年間、長くて、なかなか二人の結婚できないということだったんですけど、いつも前向きに何ができるか考えていました。私は自分の人生をもって、同性愛者と異性愛者が変わらないよと証明したかった。今日それができたと思っています。ありがとうございます」
「私にとって結婚とは、自分の人生には無いものだとずっと思っていました。」(有吉さん) pic.twitter.com/0DvEwLbxuw
— 山中肇/台湾新移民/ 就業金卡 (@hyx_hajime) July 21, 2022
『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』の著者である鈴木賢明治大教授は、「日本法の遅れが在台日本人とそのパートナーを苦しめてきましたが、台湾の裁判所がそれを救いました。マイノリティに寄り添う台湾の裁判所には尊敬しかない。有吉、盧カップルの勇気、伴侶盟の努力に感謝します」とコメントしました。
すでにお伝えしているように、台湾人とマカオ籍のゲイカップルが婚姻届不受理の処分の取消しを求めて裁判を起こして訴えが認められ、昨年、初めて同性婚を認めていない地域の人との国際同性結婚が成立しました。同様に、台湾人女性とシンガポール人女性のカップルなど3組の婚姻が認められています。台湾人と日本人の婚姻は今回が初めてです。
今のところ、こうして個別に裁判をしていかないと、同性婚を認めていない地域の人との国際同性結婚は認められない状況です。昨年1月には、台湾の司法院が渉外民事法律適用法第46条の「結婚の方式は、それぞれの当事者の本国の法律に従う」との規定を「すべて有効」と改正し、母国で同性婚が認められていない国の人とも同性結婚できるようにする案をまとめました。この法改正案が立法院(国会)で承認されれば、母国で同性婚が認められていない国の人との国際同性結婚が実現します(まだ審議が進んでいないようですが、きっとそのうち…)