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学校用水着では初の男女共用水着が開発され、反響を呼んでいます

 東京都墨田区のフットマーク株式会社は、男女ともデザインが同じジェンダーレス水着「男女共用セパレーツ水着」を開発しました。これが学校で導入されればトランスジェンダーの児童・生徒も安心して水泳の授業に臨むことができるとあって、大きな反響を呼んでいます。すでに今年度は3校が導入予定で、来年に向けて10校が検討中です。指定制ではなく、従来の水着と男女共有水着を選択できる形にする学校が多いそうです。

 
 「男女共用セパレーツ水着」は、上下が分かれたセパレーツ型で、上着は長袖になっており、ボトムスはハーフパンツを採用、体のラインが出にくい形状になっています。 

 開発の背景には、昨今、制服の選択制など、学校現場においてもトランスジェンダーの児童・生徒のことを念頭においたジェンダーニュートラルな(男性/女性という既成のジェンダー枠組の強制やバイアスを取り払おうとする)取組みが広がりを見せていること、そして、「数年前から『トランスジェンダーの生徒がいて、その生徒が着用できる水着はないか』という問合せが年に数件、寄せられていた」ことがあります。しかし、スクール水着においては、依然として男女別のデザインが根強く、性差による違いが露わになるようなものが多いのが現状です。他社でも体型を隠すような水着は販売されていますが、性別ごとに違う形で男女で兼用できる上下セット水着はありませんでした。そこで今回、男女とも同じ形にすることで、トランスジェンダーの生徒も迷わずに着ることができるジェンダーレス水着を開発したそうです。
 
 男女共に身体的な違いが表れる部位(胸、腰、お尻など)はゆったりしたシルエットになるよう素材を変え、パターンを微調整。体型の違いが目立たないデザインにしました。上着は一枚で着て泳げます。またファスナーの引き手部分にはガードを付けています。
 パッドが必要な生徒には、パッドが差し込めるポケットをつけていますが、裏地を黒にし、パッと見てパッド用ポケットと分からないような仕上げにしています。パンツは布帛(ふはく)素材を使い、体に密着しない生地を使用。パンツの内側はインナーパンツ付きなので安心感があります。また左右に抜け穴を付け、水中で膨らみにくくくしています。

 以前は学校生活における制服や水着などは「指定されており着用を強制されるもの」という認識が当たり前でしたが、近年はスクール水着においても自由化が進み、地域や学校によって「自由に選べるもの」へと認識も変わりつつあります。実際、紺色であれば指定はないという学校も全体の半数くらい存在しており、「選択肢」が増えているそうです。
 時代の変化とともに、形も女子生徒はワンピース型からセパレーツ型へ、また男子生徒の水着も股下が長くなり、デザインの変化が見られます。2015年に実施した中学生との商品企画では、男子生徒がデザインしたのは上下分かれておりパンツは足首まである肌の露出を控えた、まるでダイバーが着るような形の水着でした。実は男子も肌を隠したい、体型が見えてしまうのは恥ずかしいという思いからでした。
 2010年頃から発売を始めた長袖や半袖型の上着「シャインガード」は、主に紫外線対策を目的としていますが、露出を軽減したいという理由で着用する生徒も増えています。またすでにジェンダーレス水着としてシャインガードを導入している学校もあるそうです。

 開発担当者は、「この水着を着ることで水着に対する不安を払拭し、水泳授業に前向きに取り組めるお手伝いができればと願っております。そして本来の目的である水泳技術の習得つながれば、これ以上の喜びはありません」と語っています。
 

 「男女共用セパレーツ水着」のことがニュースになるや、ネット上では「素晴らしい!ジェンダーレスの観点だけではなく、多方面でメリットのある試みだと思います」「皮膚が弱くて水泳の授業が嫌でした。「自分の時もあったらよかったなー」と思います」「日焼け対策にもこれはいい!着衣水泳の訓練にもなりそうですね」など、好意的な意見が多く上がる一方、「泳ぎにくいのでは」と懸念する声も見られたそうです。この点についてねとらぼが開発元に取材したところ、「実際にある中学校の水泳指導を担当されている先生が着用されて泳いだところ、全く問題はないとの評価をいただきました。屋外の授業の場合、寒さ対策にもなるということで梅雨時の少し肌寒い時期の授業でも安心感があるとのことでした」との回答があったそうです。
 また、ジェンダー平等が進んでいる国で教育に携わっている方からは「ふだんから自分が使っている水着を持ってきて自由に着れるようにしたほうがよいのではないか」との意見が上がっていました(本来はそれが理想ですよね。「紺色」と色が決められていること自体も不自由ですし、ハーフパンツではなく上記の中学生が提案したような足首まであるタイプの水着を着たい方も、大人がプールで着用しているような水着が着たいという生徒もいることでしょう)。制服や学校指定の体育着を廃止するというところまでは進めない日本の学校においては、今回の「男女共用セパレーツ水着」と従来の水着を選択できる形が現時点での最善の方法ということになりそうです。
 LGBTQの子供や若者の支援に取り組む一般社団法人「にじーず」代表の遠藤まめたさんは、「性差を意識しない水着があることで、性別違和のある子を含めた水泳の時間が憂鬱である生徒にとって救いになるのでは」と評価しつつ、「個人的には、ですが、男女同一の型にするというよりは、さまざまな選択肢がある中で好きなものを選べるようにするのが、多様性尊重の上では良いのではないでしょうか。全員が同じでなくてはいけない、という発想をなくすことが、多様なニーズに合理的配慮を行う上での前提になると思います」と語っていました。
 
 
 
参考記事:
学校用水着では初。男女同じデザインのジェンダーレス水着「男女共用セパレーツ水着」取り組み開始(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000062.000012937
男女同じデザインの“ジェンダーレスなスクール水着”はこうして生まれた 開発のきっかけや泳ぎやすさ、開発元に聞いてみた(ねとらぼ)
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2206/10/news095.html
「これはいい」「自分も欲しかった」男女共用の『ジェンダーレス水着』が話題に(grape)
https://grapee.jp/1136163
露出控えたい…スクール水着もジェンダーレス 反映された生徒の悩み(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220610/k00/00m/040/147000c

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