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「結婚の自由をすべての人に」東京第1次訴訟の最終口頭弁論が行なわれ、11月30日に判決が言い渡されることになりました
「結婚の自由をすべての人に」裁判の東京第1次訴訟が5月30日に結審し、11月30日に判決が言い渡されることが決まりました。
東京地裁で5月30日に開かれた第1次訴訟最終口頭弁論(池原桃子裁判長)では、8人の原告のうち4人が意見陳述に立ち、差別を解消する判断を示してほしいと訴えました。
ハフィントンポストによると、原告の大江千束さんは、裁判を始めたらパートナーの小川葉子さんとともに働く職場で批判やいやがらせを受けたことを明らかにしました。一方、原告になってよかったと思える出来事もあったといいます。昨年3月の札幌地裁での「同性婚を認めないのは違憲」という判決の後、一人の中学生から「同性愛者の自分も、将来結婚ができるかもしれないと思い、嬉しくなった」というメッセージがSNSで送られてきたそうです。大江さんはその声を紹介し、「この裁判は、次世代の希望も担っている。ひとりひとりの当事者に、真っ暗な絶望ではなく明るい希望をもたらす、そんな判決を私たちは望みます」と訴えました。
原告のただしさんも同じように、若い世代のためにも、結婚の平等を実現してほしいと語りました。「結婚ができないことで将来が思い描けず、自分のことを他の人よりも劣った存在のように感じてきました」「これからの若い人たちには、僕と同じような思いを誰ひとり味わってほしくありません」
パートナーの西川麻実さんと3人のお子さんを育てている小野春さんは、法的な親子関係がない方の親が子どもの入院手続きができない、がんになった時にパートナーの扶養に入れないなど、実際に直面してきた困難を裁判で語ってきました。「子どもに将来パートナーができた時、相手やその家族に自分たちが受け入れてもらえるだろうか」といった不安があります。意見陳述の最後で小野さんは、「私たちは家族になりたいです。ただそれだけなのです」と訴えました。
パートナーの西川さんも、性的マイノリティが好きな人と家族になれない現状は「不平等ではない、差別はないと言えるのでしょうか、良心に従った公正な判決を心よりお願い申し上げます」と述べました。
この日に行われた最終口頭弁論では、原告側と国側の双方が最終準備書面を提出し、これまでの主張を総括するものでした。被告である国側は、「同性どうしの結婚は憲法で想定されていない」などとして、訴えを退けるよう求めています。
BuzzFeedによると、国側の主張の中で特に注目すべきポイントは次の5点です。
・憲法における「婚姻の平等」は異性カップルのみを対象としていて、同性カップルは「想定していない」
・同性カップルは「自然生殖の可能性が認めらないこと」や「社会的な承認が存在しているとは言い難い」ことから、異性カップルと同じようには扱えない
・現行の法律は、結婚の要件として「特定の性的指向であること」を求めているわけではなく、同性愛者も異性と結婚できるので、性的指向に基づく差別があるとは言えない
・男性でも女性でも異性同士であれば結婚ができて、同性同士であれば結婚できないので、性別に基づく差別があるとは言えない
・結果として、同性愛者が望む相手と結婚できなくても、それは「事実上の結果ないし間接的な効果」に過ぎず、差別的取り扱いとは言えない
こうした主張に対して、原告側は次のように反論しています。
・「婚姻の自由」とは、結婚を望むふたりがお互いの合意だけで結婚できる権利であり、「すべての人が個人として尊重され、その人らしい幸福追求をする上で不可欠」
・性的指向や性自認といった自らコントロールできないものを理由に「社会の重要な制度から排除することは、その人の人格そのものの否定」であり、個人の尊厳を著しく毀損するもの
・国が主張するように、結婚制度の目的は「子を産み育てながら共同生活を送るという関係に対して法的保護を与えること」ならば、同性カップルも子どもを産み育てながら暮らすことはでき、すでにそうした家族は存在し、これからも増え続けていく
原告側の東京弁護団共同代表の寺原真希子弁護士は、審理が終わった後の報告会で、国の主張は「非論理的」だと批判しました。
「国は自然生殖の保護を強調していますが、それであれば生殖の意思や能力のない異性カップルも結婚できないと主張するのが筋。でも国がそうした主張をしていないのは、それが異性カップルへの許されない差別と批判されることを理解しているからです」
「なのに同性カップルには躊躇なくそうした主張をできるということは、異性カップルは結婚で差別されることがあってはならないが同性カップルならいいという差別感情が根本に存在するからだと、私たちは主張しました」
「国があがこうとすればするほど、その主張は論理性が失われ、その根底にある差別感情があらわになる。その悪循環を断ち切るためには、同性カップルが婚姻できないことは憲法が認めない差別だと正面から認めるほかありません」
東京第1次訴訟の審理は30日ですべて終わり、11月30日に判決が出ることになりました。
「結婚の自由をすべての人に」は全国5ヵ所で行なわれていますが、昨年3月、札幌地裁で「法の下の平等を定めた憲法14条に反する」という初めての違憲判決が出ました。次は6月20日に大阪地裁で判決が出る予定です。見守っていきましょう。
参考記事:
同性婚めぐる訴訟 東京地裁での審理終わる 判決は11月に(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220530/k10013649541000.html
同性婚訴訟が結審 東京地裁で11月30日判決 婚姻の自由を主張(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220530/k00/00m/040/126000c
「家族になりたい ただそれだけ」 同性婚訴訟が東京地裁で結審 判決は11月(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/180456
同性婚裁判・東京1次判決は11月30日。「ただ家族になりたい」原告が最後の思いを伝える(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/marriage-equality-tokyo-1-10_jp_6292b9b7e4b0cda85dbf9f1c
「国の主張には差別感情が存在する」同性婚訴訟が東京でも判決へ。これまでの裁判のポイントは(BuzzFeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/marriage-for-all-20220530