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三重県が包括的差別解消条例案を可決、差別事案で県が当事者間の仲裁役として介入できるようにした条例は全国で初
三重県議会は5月19日、あらゆる差別の解消を目指す包括的条例であり、人権問題への対応を県の責務として規定した「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」案を全会一致で可決しました。県議会によると、差別事案で県が当事者間の仲裁役として介入できるようにした条例は全国で初めてです。
同条例は、すでに施行されている「人権が尊重される三重をつくる条例」をベースとしつつ規定の追加等を大幅に行なったもので(形としては、既存の条例の改定になります)、基本理念として「あらゆる不当な差別、人権侵害のない社会を実現することを決意する」と明記し(前文で世界人権宣言、人権に関する諸条約、日本国憲法をひもときながら「全ての人が不当な差別を受けることなく人権が尊重されなければならない」と謳われており、素晴らしいです)、感染症や性的指向・性自認、被差別部落の出身などを理由に排除、区別することを「不当な差別」と定義し、県が差別に関する相談を受けた場合は「応じなければならない」と規定しています。具体的には、市町などと連携して調査や助言(救済制度の紹介なども)、関係者間の調整をします。差別を目撃した人など第三者の相談にも応じます。問題が解決しなかった場合の紛争解決体制として、差別を受けた当事者や家族ら関係者が申し立てた場合、知事は必要に応じて「県差別解消調整委員会」の意見を聞いたうえで、相手に反省を促す「説示」や双方に解決案を提示する「あっせん」などを行ないます。それにも従わない場合、知事は、行政指導に当たる「勧告」を出すこともできます。しかし、対話を重視し、公権力の行使には慎重であるべきだとの方針から、罰則は設けません。また、いずれかの紛争解決措置を実施した場合、知事は事案の概要を公表するものの、氏名の公表は行ないません。
(条例案は、三重県議会公式サイトのこちらのページからダウンロードしてお読みいただけます)
昨年4月に施行された「性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例」は、性的指向や性自認にかかわらず全ての人の人権が尊重され、多様な生き方を認め合う社会の実現に寄与することを謳い、カミングアウトの強制やアウティングを禁じるものでした(罰則は設けられていません)
今回新たに制定される差別解消条例は、性的指向・性自認を含め、不当な差別を受けたという被害相談があった場合、県が被害者と加害者の間に入って調整を行なうことができると定め、その具体的な道筋について規定しています。例えばLGBTQの方が、学校や職場で差別やアウティングに直面したり、住所をネット上で公開されたりといったいやがらせにあった場合、県に申し立てると、(罰則はないものの)加害者にも働きかけ、反省を促したりなどの対応をしてくれるということになります。これまで泣き寝入りを余儀なくされていたような方も、この条例によって救われるのではないかと期待されますし、差別事案そのものが減っていくことにもつながるでしょう。
国もこのように包括的な差別の解消を目指す法制度を整備してほしいですね。
参考記事:
三重、差別解消条例を可決 人権問題対応は県の責務(共同通信)
https://www.47news.jp/news/7802427.html
差別解消条例、県議会で大詰めに 罰則はなし 三重(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ3H6VXFQ3GONFB00X.html