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【同性パートナーシップ証明制度】全国の約50自治体で制度がスタート、人口カバー率が総人口の過半数に

 2022年4月1日、全国のたくさんの自治体が同性パートナーシップ証明制度やファミリーシップ制度を導入しました。Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人にの調査によると、その数は50自治体にも上るそうです(過去最多です)。これで制度導入済みの自治体は全国で207となり、人口カバー率がついに総人口の50%を超えたと見られています。
 テレビや新聞で報じられた自治体を中心に、以下にピックアップしてご紹介します。
 

 福岡県は「性の多様性を認め合い、性的指向や性自認にかかわらず、人生を共にしたい人と安心して生活することができる福岡県を目指し」、4月1日から「県パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。
 この日、2組のカップルが県に宣誓書を提出して宣誓受領証(証明書)を受け取りました。1組目となった30代の同性カップルが県庁で記者会見し、カップルの一人は「宣誓のときは婚姻届を書いているような感じでした。宣誓してよかったです。本当に結婚できたらいいなと思っています」と喜びを語りました。もう一人の方は「率直にうれしいし、これからもっと充実した制度になることを期待しています。今ある婚姻届と変わらない効力、仕組みになればと思います」と語りました。 
 県によると、ほかにも10組のカップルが宣誓の予約をしているそうです。 
 今後、公営住宅への入居申請や病院での病状説明、治療方針の同意などが認められるようになります。
 県では、福岡県内で制度を導入している福岡市、北九州市、古賀市、そして同日に制度を導入した福津市、粕屋町の合わせて5市町と制度の相互利用を可能にする協定を結んだそうです。県の宣誓書受領証カードを提示すれば、それぞれの行政サービスを受けられるようになります。


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 秋田県は、あらゆる差別やハラスメントを禁止し個性を尊重し合いながら県民が安心して暮らせる社会を目指す「多様性に満ちた社会づくり基本条例」を4月1日に施行しました。信条や職業、性的指向、性自認、年齢、心身の機能の障害、病歴などを理由とした差別や権利の侵害の禁止を謳い、「すべての県民が個人として尊重され、平穏な生活を確保され、地域社会を構成する一員として、あらゆる分野の活動に参画できる権利が尊重されること」を基本理念に掲げています。秋田県では2020年、LGBTQの人権を否定するような内容の不審なビラが撒かれ、佐竹敬久知事が「狭い了見」「すべきでない」と苦言を呈し、ヘイトからLGBTQを守る姿勢を見せ、この条例の制定につながりました(詳細はこちら)。有識者会議の会長を務める山名裕子秋田大教授は、「有識者会議で報告された差別には衝撃的な内容もあり、想像以上に根深い問題があるという印象だ。障害者や性的少数者などが身近にいないことによる理解不足を原因とする差別も多いと感じた」と語り、この条例が差別的な言動を見詰め直す契機になることを期待すると語りました。

 この条例の施行と同時に、県は「パートナーシップ宣誓証明制度」も導入しました。都道府県での導入は、福岡県と並び、全国で7例目となります。宣誓して証明書を交付されたカップルは、県や県内22市町村の公営住宅などに入居できるようになるほか、パートナーが公立病院に入院した場合も家族として面会できるようになります。これまで性的マイノリティのカップルは、一方が病気やけがで入院した際、病院から「家族ではない」と面会を断られたり、一緒に住むアパートを探した際、二人の関係を告げると大家に入居を断られたりする事例がありましたが、佐竹知事は1日の記者会見で「地方でもそういうことで困っている方がいるので、今日からスタートできたことはよかった。これから県民に制度の趣旨や内容を知ってもらうための取組みを始める」と述べました。自治体や病院の窓口などでアウティングが起きたりしないよう、職員を対象にした研修も行なうそうです。秋田県では、(群馬県などと同様)新婚夫婦が協賛店の様々なサービスを受けられる結婚応援パスポートを導入していますが、パートナーシップ宣誓をしたカップルもこれを利用できるそうです。
 
 それから、秋田市も1日、「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。宣誓をして証明書を交付されたカップルは、市営住宅の入居申込みや市立秋田総合病院での面会、救急搬送証明書の交付などが認められるようになります。

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 北海道北見市も1日、「パートナーシップ制度」を制定、導入しました。宣誓受付けは6月1日からになるそうです。道内では札幌市、江別市に次いで3例目となります。函館市も同時に導入しています。
 北見市は市の公式サイト上に制度をPRする動画を上げ、「価値観や個性の違い、多様性を認めるなど、当事者の生き方を応援していく制度」と辻市長が紹介しました。制度の手引きもアップしたほか、本庁舎の総合案内などにレインボーフラッグを掲げました。
 市は宣誓の受付が始まる6月までに市民や企業へ、多様性の大切さや制度について周知啓発をしていく考えです。市民生活課は「性的少数者だけでなく、多くの人が制度や性の問題を自分事と捉えられるよう、PRしていく」と話します。
 地元の当事者団体「北見レインボー」の代表で、自身もゲイの横浜大志さん(仮名)は、「制度制定へ尽力してくれた方々へ感謝を申し上げたい。企業や病院へ周知が進み、(当事者の)カップルがもっと住みやすいまちとなることを期待している」と喜びをにじませました。 

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 兵庫県姫路市でも1日、「パートナーシップ宣誓制度」が導入されました。
 この日、市役所で清元秀泰市長が、1組目となる市内在住の61歳と58歳の男性カップルに宣誓受領証を渡しました。お二人は約18年間共に歩んできましたが、パートナーが手術を受けることになっても承諾書にサインすることができなかったといいます。「制度を利用すれば身内として認めてもらえる」と聞き、1年ほど前から市に相談していたそうで、「制度の導入を待ちわびていた。今日は二人のけじめをつけられた日」「街を歩いていると、男性2人だからか視線を感じることもある。公言するのは勇気がいるが、この日を迎えられてほっとしている」と語りました。
 清元市長は「制度導入を長い間待っていただいた。市民の多様な生き方を認め、応援したい」と祝福しました。

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 長野県駒ヶ根市でも1日、「パートナーシップ宣誓制度」がスタートしました(県内では松本市に次いで2例目です)。駒ケ根市は、今年度スタートする第5次総合計画の施策に「人権が尊重される社会の実現」を掲げており、LGBTQ(性的マイノリティ)に対する偏見や差別を解消し、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現を目指し、制度を設けました。市は「二人の思いを尊重し、市として応援するもの」と位置付けており、今年度から市営住宅の入居が認められます。
 制度開始に先立ち、3月31日に市役所で開いたセレモニーでは、庁舎壁面に制度をPRする懸垂幕を設置。伊藤祐三市長は「性別や年齢、障がいの有無、国籍など人を隔てる壁を越え、それぞれの能力を十分に発揮して活動してもらうことを目指す。宣誓制度もその一つ」「いろいろな制約のもとで生きづらさを感じている方がいらっしゃると思うが、市としても力になりたい、後押しをしたいという思いで始めた」と述べました。
 市は14日まで市役所市民ホールで長野美術専門学校(長野市)の生徒が手がけた人権啓発ポスターのデザインパネルを展示。8月23日には赤穂公民館でパートナーシップ宣誓制度に関する市民セミナーの開催を予定しているそうです。

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 神奈川県開成町、中井町、山北町も4月1日から「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。すでに同制度を導入している南足柄市、大井、松田町と相互利用の協定を結び、南足柄市+足柄上郡の「あしがら」地域の中で、転出先で新たな宣誓を行うことなく、交付済みの宣誓証明書または宣誓受領証を継続使用できるようになります。

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 連携といえば、佐賀県が福岡市と「パートナーシップ宣誓制度」の相互利用に関する協定を4月1日に結びました。佐賀県は唐津市、上峰町など「パートナーシップ宣誓制度」を導入した自治体との連携協定を結んでいるだけでなく、制度を導入していない市町村で、県でパートナーシップ宣誓を行なったカップルが市営住宅の入居の申し込みなどができるように個別に協定を結ぶという取り組みを地道に進めてきました(伊万里市、嬉野市、大町町、江北町、白石町、佐賀市、鹿島市、みやき町、有田町、太良町)。県外自治体との連携は初めてです。
 佐賀県と福岡市はそれぞれ「パートナーシップ宣誓制度」を設けてカップルに受領証を交付し、公営住宅の入居申込みなどで家族と同様の対応をしていますが、今回の協定締結により、県の受領証を持つ方が福岡市に転出する場合、県に継続使用を届け出れば福岡市でも引き続き使うことができ、福岡市から県への転入でも市の受領証を継続使用できるようになります。家族形態の多様化に合わせ、受領証に子どもの氏名の記載欄も設けるそうです。
 佐賀県人権・同和対策課の担当者は「転出先で新たに宣誓する負担を減らすことにつながる。今後も県外の自治体との連携を進めていきたい」と話しています。

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 京都府福知山市は4月1日から「市みんなの多様な性を尊重する条例」を施行しました。すべての人が多様な性を認め合い、誰もが尊重される社会を目指すものです。性別や性自認による差別、アウティング、カミングアウトの強制などの人権侵害を禁止しています。
 この条例に基づき「パートナーシップ制度」の運用も始めました。証明書にはレインボーカラーがデザインされ、証明カードは市の花・キキョウをイメージした2種類を用意しているそうです。
 市は職員に結婚休暇など同等の福利厚生が受けられるようにしており、民間にも同様の対応を呼びかけていくそうです。担当の市人権推進室は「全ての人が安心してパートナーと暮らせる福知山を目指したい」としており、今後は様々な啓発活動に力を入れるとしています。
 なお、令和4年度福知山市予算案の概要によると、福知山城のライトアップも予定されているそうです。

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 ライトアップといえば、岡山県笠岡市も、「市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」のスタートを記念して、人権推進課の庁舎をレインボーカラーにライトアップします。4月1日(金)〜10日(日)の10日間、19時〜22時の間に実施されます(詳細はこちら
 
 また、愛知県岡崎市も、「パートナーシップ制度・ファミリーシップ制度」の推進と活動のPRのため、殿橋及び明代橋をレインボーカラーでライトアップします(※ウクライナの国旗カラーのライトアップとあわせて行ないます)。4月7日(木)~22日(金)の日没~21時です。そのほか、関連図書展示やパネル展も実施するそうです(詳細はこちら
 
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 Marriage For All Japanの調査によると、4月1日から制度を導入した自治体は以下の通りです(Twitter上で情報提供を呼びかけ、度々の追加や修正を経て、ようやくできあがったリストです。もしほかにも導入した自治体があれば、教えてあげてください)
 
北海道:函館市、北見市
秋田県:秋田県、秋田市
埼玉県:熊谷市、富士見市、八潮市、吉見町、上里町、美里町、神川町、宮代町、鳩山町、横瀬町
東京都:荒川区、北区、武蔵野市
神奈川県:厚木市、海老名市、平塚市、二宮町、開成町、中井町、山北町
長野県:駒ケ根市
静岡県:静岡市、湖西市
岐阜県:関市
愛知県:高浜市、岡崎市、新城市、田原市
京都府:福知山市
兵庫県:たつの市、姫路市
岡山県:笠岡市
広島県:廿日市市、府中町
徳島県:阿南市
香川県:さぬき市、綾川町、宇多津町、まんのう町、琴平町、観音寺市
福岡県:福岡県、粕屋町
大分県:豊後大野市、竹田市
宮崎県:西都市、門川町
 

参考記事:
性的少数者カップルの「パートナーシップ宣誓制度」 県も導入(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20220401/5010015351.html
性的少数者カップル「福岡県パートナーシップ宣誓制度」スタート 公営住宅への入居申し込みなど可能に(テレビ西日本)
https://www.tnc.co.jp/news/articles/NID2022040113280
福岡県で「パートナー制度」開始…マイノリティ支援(RKB)
https://rkb.jp/article/97474/
「県パートナーシップ制度」導入 同性カップル「うれしい」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220402/ddl/k40/040/194000c

「多様性に満ちた社会づくり基本条例」施行(秋田放送)
https://www.akita-abs.co.jp/nnn//news93ksu5k2kakfu5g8wc.html
県の多様性条例施行 性的指向など差別禁止(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ416Q71Q30ULUC00D.html
差別やパワハラを禁止 県の「多様性条例」1日施行(秋田魁新報)
https://www.sakigake.jp/news/article/20220331AK0003/

北見市、パートナー制度制定 6月から宣誓受け付け(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/664375/

姫路市パートナー制度導入「待ちわびていた」 市長が1組目に宣誓受領証渡して祝福(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/himeji/202204/0015185111.shtml

「パートナーシップ宣誓制度」長野県駒ケ根市が4月1日から導入へ(SBC信越放送)
https://sbc21.co.jp/news/page.php?date=20220331&pid=0421835
パートナーシップ宣誓制度スタート 駒ケ根市(長野日報)
http://www.nagano-np.co.jp/articles/91712

開成、中井、山北町でパートナー制度 足柄上で相互利用へ(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-892599.html

性的マイノリティーの2人の絆を認める「パートナーシップ制度」 京都・福知山市が条例制定して運用開始(両丹日日新聞)
https://www.ryoutan.co.jp/articles/2022/04/93056/

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