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魔法使いアキットさんがトランスジェンダーであることをカミングアウト

 全国のイベントやテーマパーク、テレビ・ラジオなどのメディアでも活躍するマジシャン(マジカル・アーティスト)の魔法使いアキットさんが、トランスジェンダーであることをカムアウトしました。

 
 魔法使いアキットさんは10月19日、自身のYouTubeでトランスジェンダーであることをカムアウトし、今後は「アキット」としても、「愛樹」という女性としても生きていくと語りました。ステージに立つ時に頬に赤い丸を描いてきたのは女性のようになりたかったからだとも語りました。
 11月18日、SBC信越放送の情報番組「ずくだせテレビ」に出演したアキットさんは、中学の頃から性別違和を抱き、男子トイレに入れず、プールや体育の着替えの時間が苦痛で、次第に学校を休みがちになり、卒業式にも出席できなかったと語りました。そんなアキットさんの支えになったのは、4歳の頃に保育士が見せてくれて以来とりこになったマジックでした。トランプを操り、夜の公園でジャグリングに打ち込み、定時制高校を中退した後、マジックがライフワークとなりました。パーティに呼ばれたり、ショーを企画したり、テーマパークでのお仕事もするようになりました。しかし、マジックと共にあった充実の生活は、コロナ禍によって制限されることに…。気持ちが落ち込み自宅で過ごす日々のなか、女性の姿をすることで、気持ちが上向くのを感じられたといいます。
 思い切ってお母さんに「愛樹とアキット、両方生きるのはどうかな」と聞くと、お母さんは「すごく良いと思う」と応援してくれました。おかげでカムアウトする気持ちが固まったそうです。
 かつて自分を「化け物」だと感じて死を選ぼうとしたこと、自分の気持ちを悲しみを秘めたピエロのイメージと重ねたこと、女性になりたい気持ちを抑圧してきたこと…約40分のカミングアウト動画は5万回以上視聴され、1ヵ月余りで2500件以上の「いいね」がつきました。自身や家族が性的マイノリティだという人から「自分も生きていこうと決めた」「勇気をもらった」といったコメントが寄せられました。「動画をきっかけに、心を開いてくれる人が多くてびっくりした」そうです。
 番組収録後、女性の姿で楽屋を出た橋本さんの元に番組の女性スタッフが駆け寄ってきて、「愛樹ちゃんに会いたかった!」「今まで気が付かなくてごめんね」と言ってくれて、笑顔で「これからはたくさん“女子会”しようね」と答えたそうです。

 週プレNEWSのロングインタビューでは、もっと詳しく、これまでのことが語られています。
 小学生のとき、女の子のグループにひとり混じってゴム跳びや交換日記をしていた、篠原ともえさんの「シノラーファッション」を真似していた、学校の泊まりの行事でクラスメートと一緒にお風呂に入ることができなかった、中学に上がると性別違和がますます強くなり、教室に入れなくて廊下でトランプをやっていた、などなど。自分は異常者だと思っていた、「存在しているだけで自分を害虫みたいに感じてしまう。感染しちゃいけない病気にひとりだけ感染していて、みんなにうつしたらいけない」と感じていたそうです。学校のカウンセラーの方に初めて打ち明け、言った瞬間に涙がバーッと出てきたそうです。しかし、生活は変わらず、悩みが解消することもなく、教室の外でひたすらジャグリングをしていたこともあり、「それはリストカットのような、自傷行為の一種だった」と振り返ります。実際に自傷行為もして、腕に傷が残っているそうです。
 15歳くらいのときにお母さんに打ち明け、「私は愛樹(ご両親が、女の子につけようと考えていた名前)なんだよ」って伝えたところ、わりとすんなりと受け入れてくれたそうです。
 中村中さんの歌には何度も救われたと語ります。「今もずっと聴いています」
 密かな夢として、「大きい女性服を作れたら」と思っているそうです。「大きくて可愛い服、少ないので。これは内緒ですが、ものを小さくするってマジシャンの中では結構使う技術なんです(笑)。この技術を、そういうことに使えたら最高ですよね」
 インタビューの後編では、日中アキットとしてお仕事をして、夜は家で女性として過ごすようになったこと(女装ではなく、「ずっと私、これで生きてたような気がする」という感覚だったそうです)、LGBTQのチャットグループに女性として参加し、女性として接してもらえるのがうれしかったということ、それでも、女性として外出することはまだ慣れない、罪悪感のようなものを感じる、「どっちのお手洗いに入ればいいの?」という葛藤がある、性的マイノリティが生きやすい社会にはまだ程遠い、といったお話をされていました。「今まで自分に可哀想なことをしてきたなと思うんです。あまりにもいろんなことを飲み込みすぎちゃったので。だから今やっと、自分のことを大切にする番が来たのかなと思っています。それは、女性らしく生きていくことでもあり、中に私がいることを知っていただいたうえで魔法使いアキットとして舞台で表現することですね」
 

 学校にも通えなくなり、自傷行為もしてしまうほどつらい時期を経て、マジックという生き甲斐を見出したおかげで成功し、有名になり、しかし、コロナ禍で仕事が激減するなか、メイクして女性の姿になることで安らぎを得られ、お母さんの応援もあってカミングアウトすることができた魔法使いアキットさん(愛樹さん)のストーリーは、きっとたくさんのトランスジェンダーの方たちを励まし、希望を与えることでしょう。
 これからも活躍してほしいですね。いつかLGBTQのイベントにも出演してくれたら、きっと盛大な拍手と声援で迎えられるだろうなと思います。
 
 

参考記事:
マジシャン「魔法使いアキットさん」がトランスジェンダーを公表 TV番組出演後に見せた「私」と「強い思い」とは(信毎新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022120500068

「腕に自傷をしたことも」大人気パフォーマー・魔法使いアキットがトランスジェンダーを明かしたワケ(週プレNEWS)
https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2022/12/05/117880/
トランスジェンダーを公表し、女性として生活しても「罪悪感みたいなものが......」(週プレNEWS)
https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2022/12/05/117882/

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