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多くの新聞社が社説で同性婚実現を訴えています

 レポート:「結婚の自由をすべての人に」訴訟東京地裁判決と報告会でお伝えしたように、11月30日、同性婚実現を求める全国一斉訴訟のうち、東京での初の判決が下され、実質的に男女と異ならないような社会生活を送っている同性カップルを家族として認める法制度がない現状は「同性愛者への重大な脅威、侵害であり、24条2項に反する(違憲だ)」として、国会は(それが結婚かパートナー法かは議論するとして)制度を作らなくてはいけないとする判断が示されました。
 今回の東京地裁判決は、札幌地裁(違憲判決)、大阪地裁(合憲判決)に続く3例目であり、また東京での判決ということもあって、メディアの注目度も高く、(多すぎて紹介しきれないのですが)テレビ、新聞、雑誌、海外メディア、Webメディアなど合わせて50くらいの番組・記事が報道されています(おそらくこれまでのLGBTQのトピックの中でも最も多いと思われます)。そのなかでも、たくさんの(現在確認できるだけで17紙の)新聞社が同性婚実現を訴える熱い社説を掲載してくれているのは、世論形成にも貢献し、LGBTQコミュニティを勇気づけることにもつながる、特筆に値することではないかと思われます。以下にまとめてご紹介します(日付順です)
  

信濃毎日新聞
社説〉同性婚訴訟 判決受け止め立法措置を

 「婚姻の平等に向け、一歩前進する判決だ」「同性カップルの尊厳に言及した判決の意義は大きい」と判決を評価し、「政府、国会は合憲判決にあぐらをかくことは許されない。現状が同性愛者の尊厳を傷つけていることを重く受け止め、早急に立法措置に踏み切るべきだ」と訴えています。同時に、結婚ではない別制度の可能性が提示された件について、「法的な取り扱いが異性婚と同様でなければ「同性愛者の尊厳」は守られず、平等といえない。原告弁護団もこの点は「極めて不当」としている。当然の受け止めだろう」と釘を刺しています。私たちの思いに寄り添うような、素晴らしい社説でした。

 
東京新聞中日新聞
同性婚判決 社会の変化とらえねば

 なぜ同性カップルの婚姻が認められなくてはならないのかということから説き明かし、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の経緯にも触れながら、今回の判決について「人権や個人の尊厳といった憲法の中核をなす価値を重んじるのは当然で、その理解を示している以上、速やかな立法措置を求めていると解される」と評し、「もはや性的マイノリティーに対する社会意識が世界的に大きく変化しているのは明らかだ。人権の観点からも同性カップルを区別する理由はなく、法的利益の面で差別するのは不当である」「国は法整備を急ぐべきだ」としています。

 
京都新聞
社説:同性婚東京判決 早急に法整備の議論を

 「国会は早急に法整備を議論するべきだ」から始まり、「異性婚との比較では札幌が「生まれながらに持っている法的利益に差異はない」、大阪は「望み通りに同性と婚姻できないという重大な影響が生じている」と指摘した。今回は、憲法24条2項の「個人の尊厳」に照らして違反と断じた点で、大阪よりさらに一歩踏み込んだともいえる」「多様性を認め、性的少数者の権利を擁護するのは世界の潮流だ」「だが国会の議論は、自民党内の根強い反発から停滞したままだ。野党3党の民法改正案は一度も審議されずに廃案になった。同性婚反対は世界平和統一家族連合(旧統一教会)が自民議員に強く働きかけていたとされる。支援の見返りとして議論を封じているなら、言語道断だろう」「一連の判決は国会の立法措置を強く促している。自民は「司法判断を見守る」となお静観の構えだが、最高裁の判断まで待つようでは怠慢と言わざるを得ない」と述べられています。国会でなぜ議論が進まないのかというところも鋭く追及し、法整備の早期整備を求める、たいへん力強い社説でした。


沖縄タイムス
社説[同性婚否定は違憲状態]法制化へ動き出す時だ

 こちらも「婚姻の平等を保障するための法整備を急ぐべきだ」という書き出しで、「これまでも当事者たちは、同性婚を認めるよう国に求めてきたが、自民党内に根強い「伝統的家族観」を背景に、国会での議論も遅々として進んでこなかった」と指摘し、「政府は同性婚について「慎重な検討を要する」との見解を繰り返すが、先送りは許されない。現状が尊厳を傷つけていることを重く受け止めるべきだろう。国会も早急に立法化に着手すべきだ」と結論づけています。
 

河北新報
同性婚訴訟判決 「違憲状態」解消へ立法急げ 社説 
 
 「同性カップルの結婚を認めていない現行の法制度が「人格的生存に対する重大な脅威、障害」になっているとの指摘は極めて重い」と書き始め、「「慎重な検討を要する」(岸田文雄首相)と従来の答弁を繰り返すだけだった政府、自民党は思考停止を脱し、立法措置に向けた議論を早急に始めなくてはならない」と続けています。また、「広島修道大の河口和也教授らが2020年11月に公表した「性的マイノリティーについての意識」全国調査では、同性婚に「やや賛成」「賛成」の合計は15年の51.2%から19年は64.8%に増えた」と意識調査での同性婚支持率の高さにも触れながら(データを示しながら)、「結婚と似て非なる別制度」ではない、婚姻の平等を訴えています。


中国新聞
【社説】同性婚訴訟で「違憲状態」 権利保障へ法整備急げ

 こちらの社説も、「共同通信が5月に実施した憲法世論調査で、同性婚を「認める方がよい」とした人が若い世代を中心に71%を占めた」という事実を示しながら、「司法から「違憲」「違憲状態」などの指摘が相次ぐ事態を放置していては立法府の怠慢と言われても仕方がなかろう」「個人の幸福を最優先に考え、多様な家族を育める社会にしていくために、議論を先送りしてはならない」と述べています。


南日本新聞
[同性婚訴訟] 国の「放置」許されない

 これまでの3件の判決を振り返りながら、「国会の動きは依然鈍い。もはや「放置」は許されまい。個人の幸福を最優先に考えた法整備を早急に検討する必要がある」と述べています。「「両性」「夫婦」の文言を用いた憲法制定から70年以上がたち、家族観や家族の姿は大きく変わった。同性婚について「慎重な検討を要する」との答弁に終始する政府の姿勢は終わりにすべきだ」


北海道新聞
<社説>同性婚訴訟判決 国会に法整備を促した

「同性婚を認めない現状に対しては札幌地裁が昨年3月、法の下の平等を定めた憲法14条に反するとの初の違憲判断を下している。
2つの司法判断はアプローチは異なるが、同性愛が本人の意思で変えられない性的指向である点を重視し、同性カップルに不利益を強いている現行制度の違憲性を指摘した点は同じだ」と、昨年の札幌地裁判決と比較しながら今回の判決を評しています(道新は昨年の札幌地裁だけでなく、札幌での同性パートナーシップ証明制度導入や、パレード関連の記事なども多数掲載し、応援してくれていました)。そのうえで、「立法府である国会が対応を迫られている。判決を重く受け止め、法整備に早急に動くべきだ」「自民党保守派を中心に反対は根強いが、性的指向にかかわらず全ての人が同じ権利を享受できるようにするのが時代の要請だ」と述べています。


西日本新聞
「同性婚」判決 国会の立法措置は急務だ

 「「婚姻」という社会の制度の在り方に、大きな一石を投じる判決となった。個人の意思と尊厳を最大限に認めようという内容とも言える」と書き始め、「同性愛者は国際的にも長い間、差別と偏見にさらされ、多くは口をつぐみ、職場や地域で苦しんできた」と、当事者の苦しみに寄り添いながら、「同性婚を認める仕組みがないことは「同性愛者の人格的生存に対する重大な脅威、障害だ」と踏み込んだ。国民の多くも許容できる判断ではないか」と訴えています。「全国で起こされた同種訴訟で3件目の判決だが、流れはできつつあるのではないか」「結婚や恋愛は人によって大きく価値観が異なる時代だ。重要なことは、一人一人の判断を否定せず、相手に押しつけず、尊重することだろう。多様な価値観を認めることこそ、時代の要請である。国会の立法措置は急務だ」
 

読売新聞
同性婚訴訟判決 憲法解釈の論争になじむのか

 今回の各紙社説のなかで唯一、違憲判決に疑義を呈したのが、読売新聞です。「現行の憲法が、同性婚を想定していないことは明白だ。同性カップルをどう支援するかは、憲法解釈とは別の問題として考えるべきである」「憲法制定時、同性婚は議論すらされていない。合憲の判断は当然で、その解釈を巡って議論の余地があるとは思えない」などと述べられています。(MFAJの「憲法と同性婚」を読んでいただきたいですね…。また、これまでの3件の判決のいずれもが、24条は同性婚を禁止するものではないとしていることも踏まえていただきたいです)
 

神戸新聞
同性婚訴訟判決/違憲状態の解消は急務だ

 これまでの3件の判決を「3判決とも結婚を巡る現行制度を疑問視した点では共通する。憲法の理念にそぐわないと司法が示唆した意味は大きい」「3判決は立法措置の必要性を強調したことでも一致し、東京地裁は「立法府で十分に議論、検討がされるべきであり、立法裁量にゆだねられている」とした」と整理し、国会での議論が要請されていることを示したうえで、「ところがこの判決に対し、自民党幹部は「最高裁を含めた今後の司法判断を見守りたい」と述べるにとどめた。違憲状態の解消は急務であり、見守る猶予はない。政府と国会は司法判断を重く受け止め、これまで性的少数者の権利を巡る議論を停滞させてきた責任を痛感すべきだ。できるだけ早く同性カップルに関する法整備の検討を始めねばならない」と追及、論旨の明快さが光っています。「国内外を見渡せば国の対応の遅れが際立つ。判決は、婚姻や家族についての国民意識は変化するとの認識も示した。国会は旧習に縛られず社会の現状を直視してもらいたい」
 

日経新聞
(社説)同性婚の議論促す地裁判決

 比較的短い文章のなかで、今回の判決のポイントを押さえながら、「国レベルの対応がない現状では、互いの法的相続人になれず、共同で子どもの親権を持つことができない。税や社会保障でも不利な状況に置かれる」「多様性を認め、だれもが暮らしやすい社会を実現することは喫緊の課題だ」として、「同性カップルに家族手当などを支給する企業も増えている。国会や法務省の法制審議会のような場で幅広く議論することを、避けるべきではない」と結論づけていました。


愛媛新聞
同性婚訴訟「違憲状態」 法制化の議論 停滞は許されない

 「同性カップルであっても法的に保護されるべきだと司法が認めた意義は大きく、見直しの契機としたい」と判決を評価したうえで、「司法から投げられたボールを真摯(しんし)に受け止め、法整備の議論を進めなくてはならない」としています。「そもそも、政府、与党が伝統的家族観にとらわれ、政治が動かないために裁判で争うしかない事態となっている」とも指摘し、「岸田文雄首相は「極めて慎重な検討を要する」と従来の答弁を踏襲するだけである。多様性、包摂性のある社会の実現を掲げるならば、先頭に立って取り組むべきだ」と結論づけています。


毎日新聞
同性婚の法制化 実現に向けた議論加速を

 冒頭、「人間の尊厳に関わる重要な問題だと明確に認めた判決である」と述べているところが「さすが」という感じです。今回の判決はどういう意義があったのかということをたいへん的確にまとめています。そのうえで、「同性カップルも家族になる権利を持つのは当然である。それならば婚姻が認められるべきだ」「さまざまな人たちの人権が尊重される社会の構築は、政治の責務である。同性婚の法制化に向け、議論を加速すべきだ」としています。素晴らしい社説でした。


高知新聞
【同性婚訴訟】法的保護へ議論を急げ

 高知新聞も、河北新報と同じ意識調査の結果を引き合いに出しながら、「国民と国会の意識の乖離(かいり)は、一層広がっているといわざるを得まい」と指摘し、「繰り返される司法の要請に、いつまでも現状を放置することは許されまい。法整備へ議論を急がなければならない」と訴えています。「同性婚や同性カップルの法的保護を認めていないのは先進7カ国(G7)で日本だけだ。対応が遅れるほど、不利益を被り続ける人がいることを認識する必要がある。日本の国会、政府の人権意識が問われる」


秋田魁新報
社説:同性婚訴訟判決 国会、法整備へ議論急げ

 他の多くの社説と同様、「同性愛者がパートナーと家族になるための法制度がない現状については「違憲状態」と指摘した。これを重く受け止め、国会は法整備を急ぐべきだ」「同性カップルの法的利益を保護する制度をどう構築していくのか。国会の責任は大きい」「異性婚を前提とした旧来の価値観を乗り越え、議論を深めることが求められる」「性的指向によって差別を受け、個人の幸福が損なわれることはあってはならない」といった主張でした。



 このように、多くの新聞社が社説で同性婚の早期実現を訴えてくれていることは、たいへん心強いです。地方紙の多くが当事者に寄り添う支援的なスタンスで書いてくれているのも素晴らしく、地方にお住まいの当事者の方も勇気づけられることと思います。同性パートナーシップ証明制度もそうですが、制度が設けられることで、公に承認された、守られたと感じ、前向きに生きようと思える方も多くなることでしょう。悩みがちな思春期世代の方や、現に職場や学校で差別やいじめに直面している方、孤立無援状態に置かれている方などを救うためにも、同性婚制度の構築に向けた議論が始まることを望みます。
(一方、今回の判決が、合憲を結論としているとか、はっきり違憲と判断するものではなかったと書いているところもあり、そうではなく違憲判決だったのだということがもっと理解されてほしいと思いました。また、判決で示された、同性婚なのか別制度(同性パートナー法)なのかわからないが国会で議論を、という話について、シビルユニオンなどの同性パートナー法と日本の自治体の同性パートナーシップ証明制度を混同する記述も散見されました。新聞社で同性婚についての社説を書くような方が、そのような誤解をしてしまっているという現実…結構深刻じゃないでしょうか。こちらにも書いているように、同性パートナー法と同性パートナーシップ証明制度がしっかり区別されるように周知を徹底していく必要があると思います。そういう意味でもやはり、みんなが「パートナーシップ制度」と言ってしまっている現状を見直し、これはただの「証明」制度であり、欧米の同性パートナー法とは全く異なるのだということをきちんと伝えていったほうがよいのではないでしょうか)
 

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