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カミングアウトデーに”カミングアウト”の意味を理解しない自社製品宣伝ツイートを行なった企業が謝罪しました
カミングアウトデーに当たる10月11日、日本有数の大手消費財化学メーカーである花王の公式Twitterアカウントが「○○○ってどんなシャンプーなのか知らんし。というあなたに話しかけています。実は…#ノンシリコーン シャンプーなんですよ。#国際カミングアウトデー ということで、みなさんが知らなそうなことをカミングアウトしてみました。。。」(原文ママ)という自社製品宣伝投稿を行ないました。
この投稿には、アライでありドラァグクイーンでもあるブブ・ド・ラ・マドレーヌさんの「カミングアウトは強制されるものではありませんが、カミングアウトしたくても出来ないまま亡くなった人、カミングアウトしたことが原因で亡くなった人、そしてカミングアウトするか否かで苦しむ人が居ます。命に関わる事です。商品の広告?あり得ない。強く抗議します」というコメントをはじめ、「お願いだから知ってください。きちんと理解してください。なぜ今日が存在するのかということを。社会から見捨てられ、死んで行った人達のために、自由にありのままに生きたい自分達のために、闘い勝ち得た日だということを」「不見識にも程がある。タグに込められた人々の苦しみや悩みや思いを、「ちょっと知らなかったお得な知識を教えちゃう」程度に貶めて商業利用するとは」「この言葉遊びで、傷ついている人が存在します。人の心を削いでいます。きちんと謝罪して反省して、学ぶ機会としてください」といった、単に言葉の意味を理解していないことへの批判というよりも、LGBTQにとってカミングアウトがどれだけの重みを持った行為であるかということを訴える切実なコメントがたくさん寄せられました。
こうした声を受けて、12日、花王は「このたびは、『国際カミングアウトデー』を正しく理解せず、思慮に欠けた投稿をしたことについて、深くお詫び申し上げます。 昨晩より多くのご意見をいただいており、それらを真摯に受け止め、社内の教育啓発を一層強化し、再発防止に取り組んでまいります。 大変申し訳ございませんでした」との謝罪文を投稿しました。(「誤解を与えた」「不快な思いをさせた」ではなく、思慮に欠けていたことを反省する真摯な謝罪だったことは評価されています)
なお、元の投稿は削除されていませんが、同社の広報部は「ツイートそのものに多くのご意見が寄せられているので、こちらの投稿を削除するとそれごと削除されてしまいます。削除については、追って状況を見ながら検討していきます」としています。このまま保存されることに意味があるだろうという意見もLGBTQコミュニティから上がっています。
実はこの日、花王だけでなくたくさんの企業・団体による同様のツイートがありました。
銀のさら(ライドオンエクスプレスホールディングス)公式Twitterアカウントは、「銀のさらは、実はサンドイッチ店から始まった。#カミングアウトの日(原文ママ)」と投稿。のちに謝罪しています。
ほかにも、株式会社サンケミカル、株式会社明豊、いしカバくん \勝手に/石川ディスカバリーなどが(すでに元ツイートが削除されているのでどんな投稿だったかはわからないのですが)謝罪文を投稿しています。
こちらやこちらの企業は、投稿を削除しただけで、なかったことにしようとしていると指摘されています。
このように、今年のカミングアウトデーは、これまでなかった(あったのかもしれませんが表面化していなかった)”カミングアウト”の意味を理解しないまま自社製品やサービスの宣伝に利用するようなツイートが多数、見受けられました。これらはLGBTQ差別というよりも、もともとLGBTQコミュニティにとって「カミングアウト」がどのような重みを持っているかということや「カミングアウトデー」の意味や歴史を全く知らないまま、間違った意味で使っている、しかも企業のPRに利用しているという点で批判されることとなりました。
その背景には、いつの頃からかテレビのバラエティ番組で「ちょっとした秘密を打ち明ける」といった意味合いで”カミングアウト”という言葉が用いられてきた、そのために世間でこのような意味合いだとの誤解が広まったということがあるのではないでしょうか。
今回、多くの企業が「失敗」したことによって、世間に「カミングアウト」の本来の意味や「カミングアウトデー」の意義などが知られるきっかけになったということは言えそうです。今後もっと「カミングアウト」の本来の意味が浸透することを期待します。そして来年は、上記のような企業・団体もLGBTQのカミングアウトを祝い、前向きに支援するようなコメントを発してくれたらうれしいですね。
参考記事:
カミングアウトデー「便乗ツイート」後に謝罪相次ぐ 企業、自衛隊…(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQBD6J9BQBDUTIL033.html
「花王」が国際カミングアウトデーにLGBTQへの無理解ツイートで謝罪。「銀のさら」も(BusinessInsider)
https://www.businessinsider.jp/post-260499
花王メリット公式Twitterが「国際カミングアウトデー」の“宣伝利用”で炎上 当事者から「言葉の重みを奪わないで」(BusinessJournal)
https://biz-journal.jp/2022/10/post_322003.html
花王「国際カミングアウトデー」便乗で批判の商品ツイート謝罪 広報「単語にのみ紐づけて投稿してしまった」(J-CASTニュース)
https://www.j-cast.com/2022/10/12447852.html
花王が「国際カミングアウトデー」で自社製品宣伝ツイートを投稿し謝罪 「正しく理解せず、思慮に欠けた投稿」(ねとらぼ)
https://news.biglobe.ne.jp/it/1012/nlb_221012_0971037114.html