NEWS

10代LGBTQへの調査で、この1年に「自殺を考えた」人が48%、「自殺をしようとした(自殺未遂)」人が14.0%にも上ることが明らかになりました

 認定NPO法人ReBit(リビット)が「スピリットデー」に当たる20日、全国の12〜34歳のLGBTQ2623人にオンラインで行なった調査の結果を発表し、この1年に「自殺を考えた」人が48%、「自殺をしようとした(自殺未遂)」人が14.0%にも上ることが明らかになりました。

※スピリットデーは毎年10月第3木曜日に行なわれていて、LGBTQの若者を支援し、いじめに反対する気持ちの表明として紫の服を着たり小物を身に着ける日です。2010年、タイラー・クレメンテをはじめ同性愛者が学校でいじめられて自死するケースが急増し、社会問題となったことを受けて、カナダのティーンエイジャー、ブルターニュ・マクミランによって始められました。


 この調査『LGBTQ子ども・若者調査2022』は、LGBTQ(性的マイノリティ)の子ども・若者(12歳~34歳)の学校や社会での現状を知り、行政やメディアなどに届けることで、社会の状況を改善することを目的として、9月4日~30日にインターネット上で実施され、2670名から回答を得ました(うち、有効回答2623名)
 有効回答のうち2割(616人)が10代、4割(1040人)が学生で、中学生が3%、高校・高専生が12%、大学・大学院生が22%などでした。性的指向におけるマイノリティの方たちと、性自認におけるマイノリティの方たちが半々でした。
 10代のうち、この1年に「自殺を考えた」が48.1%、「自殺をしようとした(自殺未遂)」が14.0%に上り、自傷行為をした人も38.1%と高い割合になりました。全国平均(昨年の日本財団の「自殺意識調査」)と比べると、この1年で自殺を考えた割合、自殺未遂をした割合は、いずれも性的マイノリティの方が3~4倍高くなっています。
 孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた10代は29%。昨年の内閣官房の「人々のつながりに関する基礎調査」で同様の質問に同じ回答を選んだ10代(16~19歳)は3%でしたので、9.7倍にも上ります。
 学生の7割が、この1年で「学校で困りごとを経験した」と回答しており、93.6%が「教職員に相談できない」と回答、そのうちの3割は「先生がLGBTQをネタや笑いものにしていた」「先生にセクシュアリティを受け入れてもらえなかった/否定された」など教職員が要因だと回答しています。(以前から指摘されていましたが)学校の教職員の理解のなさや、学校としての支援の体制ができていない実態が浮き彫りになりました。
 「セクシュアリティが周囲と違うかもしれない」と初めて気づいた年齢の平均は14.3歳であり、「誰かに初めてカミングアウトした年齢」の平均は18.5歳でしたので、中高生の時期に誰にも話せず、孤立無援状態に陥っている方が少なくないと想像されます。
 また、自由記述欄には「『おかま』『ホモ』などの侮蔑的な言葉が自分に向けられる恐怖と日々闘い、疲弊して高校生の頃に精神疾患を発症。高校を中退せざるを得なくなった」(31歳)、「親に『お前そっちじゃないよな』などと探りを入れられる度に『そんなわけない』とうそをついて笑うことがつらかった。家の中でさえ、自分が自分でいられない」(18歳)、「自認する性で生きられないことが死にたくなるくらいつらいことだとわかってほしい」(15歳)など、深刻な体験談や長文の悩みが多数寄せられたそうです。
(アンケート結果の詳細は時事通信の記事をご覧ください)

 ReBit代表理事の薬師実芳さんは「保護者との関係や学校で困難を抱える10代は多い。周囲の大人が理解を深め、若者が暮らしやすい環境づくりに取り組んでほしい」「政府の自殺対策や孤独・孤立支援でも、性的少数者は取り上げられているが、都道府県や市区町村のレベルではまだまだ浸透していない。支援の手をきめ細かく広げていく必要がある」と語っています。
 薬師さんによると、「性のあり方について親など周囲から否定され、うつなど精神疾患になり、その影響で働くことができず、そのため実家を出ることができない」といった複数の困難が絡まり合ったようなケースが多く見られるそうです。

 コロナ禍が始まって以降、職を失って実家に戻った方が、理解のない親のもとでしんどい思いをしているとか、外に出てコミュニティの友人たちと会ったりすることができず、孤立感を深めているというケースも伝えられています。そうしたなかで、議員によるLGBTQ差別発言や、SNS上でのトランスジェンダーバッシングなども追い打ちをかけ、今回のアンケート結果に表れているような若い当事者の方たちのメンタルヘルスの悪化にもつながっているのではないかと見られます。これ以上、自死へと追い詰められる方たちが増えないよう、LGBTQ差別解消法の制定や、学校での支援体制の確立など、国や自治体の取組みが急務であると言えるのではないでしょうか。
  
 
 
参考記事:
【調査速報】10代LGBTQの48%が自殺念慮、14%が自殺未遂を過去1年で経験。全国調査と比較し、高校生の不登校経験は10倍にも。しかし、9割超が教職員・保護者に安心して相談できていない。(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000031.000047512
10代性的少数者の48%「自殺を考えた」 NPOが若者2千人調査(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQBN3PXHQBMUTFK00K.html
2人に1人「自殺考えた」 10代LGBTQの深刻な今(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20221019/k00/00m/040/271000c
この1年で「自殺考えた」48% 10代LGBTQ、同年代の3.8倍、NPO法人調査 14%は自殺未遂(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/209178

ジョブレインボー
レインボーグッズ