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北九州市人権推進センターが製作したLGBTQの啓発アニメが素晴らしいです

 北九州市人権推進センターがLGBTQについて3部作のアニメーション動画を製作してきましたが、この1月、完結編がリリースされました。モモマルくんというゆるキャラをはじめとする森の動物たちが、トランスジェンダーであるオオカミちゃんとどのような関係性を結んでいくのかを描いた、小学生でもわかるように作られた作品で、各回に的確な解説も盛り込まれていて、たいへん素晴らしいコンテンツになっています。



 北九州市人権推進センターは6年前からYouTube上に様々な人権啓発の動画やラジオ番組などを掲載してきましたが(ラジオ番組のなかには性の多様性について語る回もありました)、LGBTについて、市民によりよく理解してもらえるようにということで、2020年3月に、本格的な3部作のアニメーション動画のシリーズがスタートしました。
 同センターのモモマルくんというゆるキャラが主人公で、森の中で様々な動物たちが仲良く遊んでいるという世界観のなかで物語が進行していきます。各回に、森の図書館のフクロウじいさんによるLGBTの解説が盛り込まれています。

 第1話は、みんなが遊んでいるところにオオカミちゃんが加わるというシーンから始まります。オオカミちゃんは体の性別は男の子なのですが、花の冠や人形や、かわいいものが大好きで、ほかのみんなが女の子みたいとからかうなか、ウサちゃんとモモマルくんが友達になってあげます。オオカミちゃんは花の冠をくれたウサちゃんに、お礼としてかわいいポーチを作ってプレゼントします。しかし、オオカミちゃんが家に帰ると、男らしくしろ!と怒鳴るお父さんが…。
 第2話では、こっそりスカートをはいていたことがみんなにバレたオオカミちゃんが、「あのね、実はボク…わたしね、本当は女の子なの。お花摘みやお人形遊びがしたくて」とカミングアウトします。モモマルくんとウサちゃんが助け舟を出してくれて、やや乱暴だったブタくんなども受け入れるように。そして、草花に詳しいオオカミちゃんに、いろいろ教えてもらうことにします。
 第3話では、オオカミちゃんがお父さんに家を追い出されます。どうしたらいいか、みんなで考え、図書館でフクロウじいさんに相談したりします。そこに、オオカミちゃんを探していたお母さんがやってきて、オオカミちゃんは「草花に詳しくなったのもお裁縫も、お母さんが教えてくれた」「わたし、ファッションデザイナーになりたい」と語り、みんなが拍手。そして二人は、もう一度お父さんに話してみようと言って、家へと帰っていくのでした…。

 お父さんが果たして受け入れてくれるかどうかはわからない、明確にはされない終わり方なのですが、理解してくれるかも…と思えるエピソードが少し描かれていて、希望が持てる感じになっています。
 市の担当者の方は、「現実には、簡単に周囲の理解を得られない人もたくさんいる。前向きな予感をさせつつ、あえてはっきりとハッピーエンドにしなかったのは『明るい未来にするにはどうしたらいいか』を見た人に考えてもらいたかったから」と話しています。
 
 かなり本格的な、テレビで放送されてもおかしくないようなクオリティのアニメーションです。ウサギやリスなどではなく(『ぼのぼの』ではシマリスがゲイっぽいキャラクターでした)、森の動物たちのなかで最も荒々しいイメージのオオカミがトランス女子として描かれている(それでいてとてもラブリーに描かれている)ところも素晴らしいです。トランス女子じゃなくゲイだったとしても、きっと同じように素敵なお話になっていたことでしょう。
 また、各回の解説の部分も、たいへんよくできています(第1話はフクロウじいさんが解説するのですが、第2話ではカミングアウトしたオオカミちゃんが、当事者として解説に加わるところが胸熱です)。特に第3話の解説が秀逸です。LGBTに生きづらさを感じさせる4つの壁がある、それは自分自身の壁(当事者がなかなか自分自身を受け入れられない)、身近な人たちの壁、周囲の壁、社会の壁である、そして、この4つの壁を乗り越えられる社会とは「多様性を楽しむ社会」だと言うのです。世の中には様々なLGBTQ教育のツールがありますが、このような視点はほとんどなかったのではないでしょうか。一般向け、企業向けのLGBTQ教育の今後の発展・進化においても、このような視点が重要になってくるような気がします。
 
 北九州市は約3年かけて、北九州市や福岡市で活動する当事者団体の意見を聞きながら動画をつくってきたそうですが、そのなかで、小学4~5年生の頃から性別違和を抱いたという話があり、子どもたちが理解しやすく、身近に感じられる内容を心がけたといいます。
 第1話、第2話の動画はすでにDVD化され、北九州市内の公立・私立小中学校や特別支援学校などに配られ、授業で活用されているそうです。完成した第3話もそうなることでしょう。

 YouTubeに上がっていることで、北九州市民に限らず、全国どこでも、どなたでも視聴できるようになっていますので、この動画が広く拡散され、小・中学生や様々な学校の児童に届くといいな、と思います。
<文・後藤純一> 
 

参考記事:
LGBTへの理解求めてアニメ3部作作成 北九州市、結末にひと工夫(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ1D6W7YPDSTIPE00N.html


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