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同性パートナーの扶養を認めないのは憲法違反だとする訴訟の口頭弁論が開かれ、原告の方は「人が生まれながらにして持っているはずの権利を私にも与えてほしい」と訴えました

 内縁関係(事実婚カップル)も対象となっている扶養手当などを同性カップルに支給しなかったのは「法の下の平等」を定めた憲法に違反するとして、元北海道職員が道と地方職員共済組合に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が9月6日、札幌地裁で開かれました。元職員の方は意見陳述で「私を普通に取り扱ってほしい。個人として尊重され、人が生まれながらにして持っているはずの権利を私にも与えてほしい」と訴えました。 
 
 
 原告は札幌市の社会福祉士、佐々木カヲルさん。戸籍上は女性ですが、性自認については「男ではなく女ともいえない」としています。佐々木さんは女性のパートナーと同居し、自身の住民票に編入、札幌市の「パートナーシップ制度」に基づくパートナー宣誓も行なっています。結婚指輪をし、事実婚と変わりなく生活しています。
 佐々木さんは北海道職員だった2018~19年、パートナーシップ証明書なども提出し、内縁関係であれば支給される寒冷地手当の増額や扶養手当の支給を求めましたが、「同性間の内縁関係は認められない」と突っぱねられました。共済組合にも扶養認定を届け出ましたが、認められませんでした。(千葉市や世田谷区では異性婚夫婦と同様に結婚祝い金をもらえるようになったという実績があるにもかかわらず)道職員互助会からも結婚祝い金をもらえませんでした。「なぜ同性というだけで認められないのか、理解できない」と、佐々木さんは道に何度もかけあいましたが、「自治体のパートナーシップ制度を基に手当を認定した例は確認できない」「パートナーシップ制度は婚姻制度とは異なる」「公金の支出を伴う職員の手当の認定は、職員間の公平性の確保と道民の理解が必要」と言われ続けました。
 佐々木さんは2019年6月、約25年働いた道庁を去りました。退職理由には、扶養手当が支給されず、道の説明にも精神的な苦痛を受けたと書き添えました。
 佐々木さんは「やりがいのある仕事だなと思っていたけど、自分自身のアイデンティティを崩されることの方が大きくて、自分が壊れちゃうっていう状況になりました」「がくぜんとしたというか…。こんな差別的なことを当然とするところで働けないなと思いました」と語っています。「このことがなければ、辞めなかったと思います」

 佐々木さんは意見陳述で、「社会的に多数である人々、マジョリティの理解が得られない場合、公の機関こそが、率先して制度を柔軟に解釈・運用し、古い制度を改正し、民間の理解水準を高めていくことが求められる」「私を普通に取り扱ってほしい。個人として尊重され、人が生まれながらにして持っているはずの権利を私にも与えてほしい」と訴えました。
 弁護団は、道や共済組合が、性的指向によって取扱いを変えている根拠について「真にやむをえないといえるほどの理由はない」と主張し、異性カップルと同じ待遇を求めています。
3月の札幌地裁判決では、同性婚を認めない民法などの規定が「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反すると認められました。「性的指向など人の意思によって選択・変更できないものに基づく区別は、真にやむをえない区別であるかどうかによって、その合理性を慎重に検討されなくてはならない」とされています)
 他方、被告である道と地方職員共済組合は、請求の棄却を求めました。
 
 閉廷後、記者会見した佐々木さんは、「マジョリティが普通の生活の中で当たり前に与えられている権利が、マイノリティには与えられていないという事実を知ってほしい。マイノリティはあきらめることに慣れさせられていると感じる。多様性の尊重と公正な社会のあり方について一緒に考えてほしい」「道や共済組合に対しては『どうして訴えを理解してもらえないのだろう』という思い。裁判で勝訴を勝ち取りたい」と訴えました。
 佐々木さんは、今回の訴訟を「SOGIハラ訴訟」と呼んでいるそうです。

 異性のカップルであれば、婚姻届を出せば、(恒常的な収入が130万円未満、などの条件はありますが)どちらかが配偶者の扶養に入ることができ、年金や健康保険料を払う必要がなくなります。配偶者控除も受けられます。公務員も、会社員も(会社の場合は任意なのであったりなかったりしますが)扶養手当が支給されます。ですが、性別が同性になった途端、こうした制度上の恩恵が一切受けられなくなります。
 全国の何十万もの同性カップルのなかにも、どちらかが専業主婦/主夫だったり、パートタイマーだったりという方もいらっしゃいますが、異性カップルが当然のように生活面で楽をしている(下駄を履かせてもらっている)ところを、同性であるという理由だけで、年金も保険料もきっちり二人分取られ、扶養手当などももらえないなんて…あまりにも不条理ですし、ひどい差別ですよね。コロナ禍の影響で収入が激減したり、生活が苦しくなっている世帯(カップル)も少なくないのではないかと思いますが、佐々木さんが今回、こうして声を上げてくれたおかげで、扶養が認められる道が拓けるかもしれません(世界中の同性婚裁判もそうですし、3月の札幌地裁判決もそうでしたが、異性と同性で取扱いを変える(差別を容認する)ための正当性・根拠が論理的に導きえないため、勝訴の可能性は十分あるはずです)
 そういう意味でこの訴訟は、いま全国で行なわれている「結婚の自由をすべての人に」訴訟(同性婚訴訟)と同様、すでに暮らしているたくさんの同性カップルの生活上の権利や、これから大人になって同性パートナーを見つけるLGBの子どもたちの未来にも関わる大きな意義を持っているのです。
 
 次回の口頭弁論は11月24日だそうです。応援していきましょう。
 
 

参考記事:
同性の扶養認定めぐる裁判始まる 被告の道は争う姿勢(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20210906/7000037983.html
同性パートナーの扶養を認めないのは憲法違反か 全国初の訴訟 道と組合は争う姿勢 札幌地裁(北海道放送)
https://www.hbc.co.jp/news/70a6e505a35feb99814ace321c2a41af.html
「権利を私にも与えて」同性カップルに扶養認定を 元北海道職員が訴え(札幌テレビ)
https://www.stv.jp/news/stvnews/u3f86t00000bofhd.html
「性的指向による不公平なくして」 札幌・SOGIハラ訴訟(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP966F71P96IIPE02F.html
同性カップルに扶養手当なしは「憲法違反」訴え 札幌地裁で初弁論(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210906/k00/00m/040/241000c

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