NEWS
『クィア・アイ in Japan!』出演のKanさんが英国に移住し、パートナーのTomさんと結婚しました
『クィア・アイ in Japan!』をご覧になった方は、第2話に出演していたKanさんのことをご存じでしょう。カナダや英国に留学していた時は自分らしくいられたのに、日本に帰って就職してからはゲイを取り巻く環境の違いに戸惑い、生きづらさを拭えず…ファブ5に相談したのでした。番組出演後もSNSで発信を続け(SNSのフォロワー数は4万人を超え)、メディアにもたびたび取り上げられていたKanさんですが、今年の夏に英国に移住し、9月にパートナーのTomさんと結婚しました(おめでとうございます!) しかし、KanさんとTomさんには複雑な思いもありました。テレビ朝日がKanさんに密着し、結婚式の模様や、お二人の声を届けてくれました。
KanさんとTomさんがつきあいはじめたのは5年前。Kanさんの英国留学がきっかけでした。Kanさんが帰国した後も、お二人は、お互いの国を行き来しながら交際を続け、結婚を考えはじめます。Kanさんは家族にもTomさんを紹介します(『クィア・アイ in Japan!』でもその様子が映し出されていました)。Tomさんも日本を気に入っていて、本当は日本で結婚して二人で暮らしたいと思っていましたが、日本では未だに同性婚が認められていません。お二人は「日本で結婚したい」と、同性婚が認められるよう、SNSなどで声を上げ続けてきました。
そんななか、コロナ禍が始まり、英国から日本への入国は“家族”に限られてしまいます。日本では“家族”と見なされないTomさんは来日が許されず、二人は1年半以上、会うことができなくなってしまいました。
「国際結婚できている異性カップルなら何とか行き来はできます。でも僕たちは絶対に会うことができません」。Kanさんが最愛の人と一緒に暮らすためには、日本で結婚できない以上、英国に行って結婚するしか方法がありませんでした。
出発の空港で、Kanさんは日本のお友達と涙の別れをしていました。
「パートナーと会えるのはうれしいけど、友だちとお別れしないといけないのは悲しいし、自分の人生の決断のなかに選択肢がないのは、どうしてもおかしい。それは僕だけではなくて、日本に残されている人たちもいて、その人たちも同じ気持ちでいるし、こうやって密着していただいて、お伝えをしないと届かない。何でだろうな」
ロンドンの空港に迎えに来てくれたTomさんと、Kanさんは固く抱き合います。こうして新しい生活が始まりました。
Kanさんは、ロンドンのほうがデートしやすいと語ります。「誰も気にしない。手をつなごうと思えば簡単につなげるような環境です」
渡英から2ヵ月が経ち、いよいよ結婚式の当日を迎えました。Tomさんのご家族や友人のあたたかな祝福を受けて、KanさんとTomさんは晴れて家族になることができました。
Tomさんは「結婚することができて、とても幸せ。でも、日本では、同性婚が全面的には認められていない。いつか日本でも結婚式を挙げたい」とスピーチしました。
Kanさんも「これからも、僕たちだったり、日本で結婚したい人たちが日本で結婚できるように、その選択肢が得られるように、一緒に声を上げていけたらいいな」と語りました。
英国行きを決意した際、ハフィントンポストのインタビューでKanさんはこう語っています。
「日本は、暮らしていて「なんだかな」と思うことはありますが、「いいな」と思うところもたくさんある。日本のことを好きじゃなかったら、「なんで選択肢がないんだろう」なんて思わないです。
なので、日本に選択肢がないということについては、悔しいという気持ちが一番強いです。好きな人と、自分が生まれ育った場所で住みたいだけなのに。僕が何をしたって言うんでしょうか。
法律婚の実現は、やろうと思えば「すぐ」にでもできることだと思います。それを「許可」しない、状況を変えようとしない政治家がいることに、悲しさを感じます。
婚姻の平等は、1日でも早く実現しないといけない。人は、1日ずつ老いていきます。今、生きている人の選択肢が狭められているんです。パートナーと生きることを諦める人も多くいると思います。自分自身も、1日も早い婚姻の平等の実現に貢献するために、自分のやれることはやりたいと思っています」
「LGBTQについての認知が広まるなかで、「みんな違っていいよね!」「性別なんてないよね!」といった言葉を耳にします。悪意がないケースが多いのはわかっていますが、そういった言葉が、今ある差別を覆い隠してしまうこともあると思います。
また、「楽しげな場所」には企業などが集まるのに、デモや署名などの場面になると、参加する個人や企業が減ってしまうというのも課題だと感じています。
自分の結婚にあたり、「結婚するためにイギリスに行く」と報告したら、「渋谷に行けば結婚できるじゃん」と言われたことが、すでに数回ありました。日本では同性婚ができないということが、実はそこまで知られていないのだと実感しています」
「僕が目指しているのは、誰もが自分の人生を、自分らしく、主体的に生きられることなんです。結婚に関して言えば、結婚する・しないの選択に、社会からの圧力があってはいけないと思う。そして、当事者たちが結婚したい場合には、同性でもできるようになってほしいし、名字も選択できるようになってほしい。
そういうふうに、その人の選択がより尊重される社会・仕組みに変わっていってほしいと思っています。そのために、イギリスに行っても、日本の変化に向けた取り組みに参画していきます。「僕の一歩」を発信することで、誰かが「自分も一歩を踏み出してみよう」と思ってくれたら嬉しいです」
「好きな人と、自分が生まれ育った場所で住みたいだけなのに。僕が何をしたって言うんでしょうか」。本当にその通りですよね。Kanさんの悔しさがにじんでいます。
日本で暮らす大勢の当事者たちもまた、「好きな人と結ばれ、家族になりたいだけなのに。私が何をしたって言うんでしょうか」という思いでいるはずです。コロナ禍で、もしかしたら最愛の人と離れ離れのまま、会えなくなってしまうこともあるかもしれません(病院で家族として扱ってもらえない可能性があるためです)。婚姻の平等を1日でも早く実現しないといけない(間に合わなかった方もいます)、そのために裁判などで奮闘してくださっているLGBTQやアライの方たちもいます。
インフルエンサーとしてメディアにたくさん登場し、説得力のある言葉で私たちの思いも代弁してきたKanさんは、少なからず「世間」の見る目を変えることに貢献してきた方です。そのことに感謝するとともに、あらためて「ご結婚おめでとうございます」と申し上げたいです。
参考記事:
選択肢ないのおかしい…英国で同性婚の日本人に密着(テレビ朝日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000229834.html
結婚するため海外に行く、日本に選択肢がないから「好きな人と、自分が生まれ育った場所で住みたいのに」(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60cc5623e4b01af0c26ec2b5