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性別変更した看護助手が職場で性別に関する侮辱を受けて精神障害を発症、「SOGIハラ」に該当するとして初の労災認定が下りました

 性別変更した看護助手が精神障害を発症したのは、職場で変更前の性別で扱われ続けたことが原因であり、「SOGIハラ」に該当するとして、大阪府の茨木労働基準監督署が(おそらく全国で初めて)労災認定したことが明らかになりました。


 労災認定をめぐる調査書などによると、この看護助手の方は、出生時に割り当てられた性別は男性でしたが、幼い頃から自認性は女性で、性同一性障害特例法に基づいて2004年に戸籍性を女性に変更しました。2013年から大阪府の病院で働きはじめました。しかし、職場の病院で、男性のような名前で呼ばれるようになり(トランスジェンダーであることへの侮辱、ミスジェンダリング)、半年後に精神障害を発症しました。彼女は病院を辞めました。
 茨木労働基準監督署は、こうした言動は「SOGI(性的指向・性自認)に関する侮辱的な言動」で、パワハラにあたるとしたうえで、人格や人間性を否定するような攻撃が執拗に行なわれたケースに該当し、心理的負荷は3段階で最も上の「強」と判断し、今年2月5日付で労災認定しました。
(病院側は「職員の発言で精神障害を発症したとは考えられない。職場外にストレス原因が存在した可能性も否定できない」などと反論していたそうです)
 SOGIハラは、昨年6月に施行された「パワハラ防止法」でパワハラに該当すると明記されましたが、実際に労災認定されたケースが明らかになるのは珍しく、おそらく初めてのケースです。
 看護助手の代理人弁護士は「抑止の意味で意義は大きい」と語っています。

 
 パワハラ防止法ではSOGIハラと並んでアウティングもパワハラに当たるとされています。
 昨年、上司のアウティングでうつ状態に陥ったゲイの方が職場のある豊島区に救済申立てを行ない、結果、会社側が謝罪し、和解が成立していましたが。今年4月、この方を支援していたNPOが、「広くアウティング問題を社会に問い、改善するため、被害を労災として国が認めるよう」労災申請をすることにしました。署名も集められ、6月に厚労省に提出されました(詳細はこちら
 労災申請ではないのですが、こちらの記事でフィーチャーされているトランス男性の方は、職場でトランスジェンダーであることを勝手に暴露され、苦しんできましたが、労働組合にアウティングについて相談し、団体交渉をして和解に至ることができたといいます。彼は「相談できる場所があること、労働環境を改善できることを知ってほしい」と語っています。

【追記】2021.9.15
 勤め先の上司から「彼」と呼ばれたり、身体的特徴について尋ねられたり、「女として扱われたいなら手術をうけたらどうだ」などと言われ、うつを発症したトランス女性が、神奈川の労基署に労災申請しました(詳細はこちら
 
 
 このように、パワハラ防止法の施行によって、あらゆる企業※はSOGIハラやアウティングの防止策を講じることが義務づけられ、職場がそれを怠った場合、従業員が各都道府県の労働局に訴えたり、労災申請することもできますし、実際に訴えによって会社側が慰謝料を支払うケースや、労災も認められるようになってきているのです。
 LGBTQの従業員にとっては朗報で、「これからは泣き寝入りせず、組合や労働局に相談してください」ですし、企業にとっては「早急にSOGIハラ・アウティングの防止策を講じてください」ということなのです。(御社におかれましては、すでに対策済みかとは思いますが、もしSOGIハラ・アウティングの防止策について不安がある場合、OUT JAPANにお問い合わせください→こちら
 
※パワハラ防止法は、昨年6月に施行された時点では大企業が対象でしたが、中小企業も2022年4月から対象となります。つまり、来年度からは、日本中すべての企業で、SOGIハラ・アウティングの防止策を講じることが義務づけられるようになります。




参考記事:
「SOGIハラ」で労災認定 性別変更した看護助手が精神障害を発症(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP9C66KDP9CPTIL00C.html

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