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三重県が9月から同性パートナーを持つ県職員に法律婚と平等な福利厚生を適用、東海三県初
三重県は同性パートナーシップ証明制度が始まる9月から、同性パートナーがいる県職員にも結婚休暇や扶養手当などを付与する方針を固めました。都道府県としてはこれまで茨城県や鳥取県が同様の施策を行なってきましたが、東海三県では初です。
三重県は今年4月、アウティングの禁止やLGBTQ差別の禁止を盛り込んだ「性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例」を施行しましたが、これを踏まえ、県職員の休暇や給与の見直しに着手しました。これまではパートナーが同性である職員を想定していませんでしたが(人事課の方は「仮に申請があっても認めることは難しかった」と語っています)、同性パートナーも婚姻関係と同等であると見なし、事実婚と同じ扱いとする対応を実現しました。
結婚休暇のほか、忌引や育児参加休暇、家族看護休暇もパートナーを配偶者と位置づけて付与し、給与では単身赴任手当に加え、県外に赴任する職員に同行するための引っ越しにかかる費用も支給します。これにより、法律婚と同性パートナーシップの差が全て解消されるそうです。
「パートナーシップ宣誓」を行なった県職員が宣誓書受領証(同性パートナーシップ証明書)などを上司に提出して申請することで、適用されます。
人事課は「新たな条例の趣旨を踏まえ、職員の休暇や給与に関する制度も明確にする必要があると考えて見直しを決めた。活用されるかどうかはわからないが、全職員に通知を出して周知を図る」としています(これを機に、カミングアウトする職員が現れるかもしれないですね)
全国の自治体で同性パートナーシップ証明制度を導入しているのは、都道府県から市区町村まで合わせて110に上っていますが、同性パートナーがいる職員に法律婚と同等の福利厚生(慶弔休暇や結婚祝い金の支給など)を認めている自治体は、千葉市、渋谷区、福岡市、大阪市、奈良市、世田谷区、国立市、豊島区、鳥取県、茨城県などで、それほど多くはありません。
2019年、パートナーが同性である東京都職員が福利厚生の平等を求めて都に措置を要求したり、今年6月には、元北海道職員が、事実婚カップルに支給される扶養手当等が同性カップルに認められないのは憲法違反だとして道と地方職員共済組合を提訴するなど、当事者の自治体職員も声を上げはじめています。結婚が認められず、配偶者控除も受けられないなか、せめて扶養手当や慶弔休暇などの福利厚生だけでも平等にしてほしい(パートナーが亡くなっても忌引きが認められないのはあまりにも不条理です)という訴えは、今後も増えていくと思われます。自治体の対応が急がれます。
三重県は、2016年に県議会が「性的少数者に対する差別の解消と共生社会を実現するための法整備を求める意見書」を全会一致で可決したり(全国で初めて)、2017年には県内の高校生およそ1万人を対象にジェンダーやセクシュアリティに関する調査を実施したり(このような大規模な調査を都道府県レベルで実施しているのも三重県だけです)、2019年には都道府県として初めて職員や企業に向けた多様なSOGIについてのガイドラインを策定、今年4月には都道府県で初となるアウティングの禁止も盛り込んだ条例を制定、というように、LGBTQに関する先進的な動きを見せてきました。また、2016年初開催のみえレインボーフェスタにも後援し、鈴木県知事が登壇するなど、LGBTQコミュニティに親身に寄り添う姿勢を見せています。一貫してLGBTQの味方(アライ)となり、その公正と平等の実現に努めてきた結果、今回の職員の待遇の平等化の達成にもつながりました。素晴らしいと言うほかありません。
参考記事:
三重県 性的少数者「事実婚」扱い 県職員に休暇や手当 来月から 東海3県で初(伊勢新聞)
https://www.isenp.co.jp/2021/08/04/63147/