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まるでプライドパレードのよう…ハンガリーの反LGBTQ法への抗議としてドイツ各地がレインボーカラーに染められました
ハンガリーが導入した反LGBTQ法への抗議として、ユーロ2020(UEFA欧州選手権)が開催されているドイツの各地がレインボーカラーに染められています。
ドイツのミュンヘンは23日の第3戦ハンガリー代表戦の会場「アリアンツ・アレナ」をレインボーカラーにライトアップする意向を示しましたが、UEFAは「政治的」な行為に当たると判断し、これを拒みました。これに対抗するかたちでミュンヘン市は、ミュンヘン市庁舎に巨大なレインボーフラッグ6枚を掲揚したほか、会場近くの大型風力タービンや高さ291メートルのオリンピア塔もレインボーカラーにライトアップ、駅や街頭など市内のあちこちにもレインボーフラッグが掲げられました。23日の試合の際は、試合会場の外で小さなレインボーフラッグが配られ、大きなレインボーフラッグを身にまとった観客やドラァグクイーンなども登場しました(キックオフ直前にフィールドに乱入した人もいましたが…)。また、ベルリンのオリンピアシュタディオンや、フランクフルト、ケルン、ウォルフスブルクの主要サッカー競技場もレインボーカラーにライトアップされました。
(こちらで動画をご覧いただけます。まるでプライドパレードのようです)
試合が行なわれるフィールドの中にも、LGBTQへの支援を示すレインボーカラーが見られます。
オランダでは、28日のユーロ2020の決勝トーナメントにおいてオランダ代表のキャプテン、ジョルジニオ・ワイナルドゥムが「OneLove」という文字が刻まれた特別なキャプテンマークを着用することになりました。「このアームバンドを着けることで、僕らオランダ代表は多様性の受け入れと結束を支持していることを強調したい。僕らはいかなる排斥や差別にも反対する。このやり方で世界中で差別を感じている全ての人を支援したい」
ドイツ代表のキャプテン、マヌエル・ノイアーも、LGBTQへの連帯を示し、レインボーカラーのキャプテンマークを着けています(UEFAは一時「公式の腕章を着けるべき」との態度を示していましたが、正式に認められました)
ハンガリーの反LGBTQ法をめぐってEU内で批判が強まっています。
ベルギーやドイツ、フランスなどEU加盟国のうち16ヵ国が22日、同法に対する「深刻な懸念」を表明する共同声明を発しました。
EUのウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は23日、「法案は恥だ。性的指向に基づく明らかな差別でEUの基本的価値観に反する」「EUでは自分が望む人を自由に愛することができる」「全てのEU市民の権利が守られるよう欧州委のあらゆる権限を行使する」と述べ、法的措置に着手する方針を示唆しました。ハンガリー政府に法的な懸念を示す書簡を送付し、十分な回答がなければEU司法裁判所への提訴につながる可能性があるそうです。(ハンガリー政府は23日、「子どもの権利を守るもので、差別的要素は含まれていない」と反論しました)
EUは24日、ブリュッセルで首脳会議を開きました。席上、ハンガリーの反LGBTQ法をめぐり、各国首脳から懸念の声が上がりました。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は「間違っており、私の政治に対する理解と相反している」と批判しました。ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)は自由や寛容といった価値観の重要性を改めて訴えたということです。
オランダのマーク・ルッテ首相はEU首脳会談の前に記者団に対して「私見では、ハンガリーの居場所はもはやEU内にない」と主張。他の加盟国が同意するなら、実際にハンガリーを非加盟国とする措置にも踏み切らなくてはならないとの考えを示唆しました。
自身もゲイであるルクセンブルクのグザヴィエ・ベッテル首相は、EU首脳会議を前に、このように語りました。
「ゲイであることは選択ではない。私の場合、何かの広告や『モダン・ファミリー』を見た翌日、目覚めたらゲイになっていたわけではない」「人生はそんなものではない。人生は……元から私の中にあったものだ。選んだ結果ではない」
「自分自身を受け入れるだけでも、非常に難しいことだ。さらにスティグマを刻印されるようなことがあったら……とても手に負えない」
「私にとって最も難しかったのは、同性のこの人を好きだと気付いたとき、そんな自分を受け入れることだった。そのことを両親に言うのも、家族に言うのも、難しいことだった」
「それを受け入れることができず、多くの若者が命を絶っている」
「私は以前、若い同性愛者だった。今も同性愛者だ。今の私はそれほど若くはないが、自分を危険な存在とは思っていない」
「国中から非難されること、普通ではないと思われること、若者にとって危険な存在と見なされること。それはゲイが『選択ではない』と、気がついていないことを意味する。しかし、不寛容であることは『選択』だ。私は、不寛容に対して不寛容であり続ける。それはこれからも、私の戦いになるだろう」
参考記事:
UEFA、独スタジアムの虹色ライトアップ認めず 欧州選手権(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3352956
ハンガリー、反LGBTQ法でEUと対立 独各地で虹色ライトアップ(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3353218
反LGBT法は「恥」 ハンガリーに法的措置示唆 欧州委員長(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021062301237
欧州各国、ハンガリー「反LGBT」法に懸念 EU首脳会議(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210625/k00/00m/030/063000c
反LGBTQ法成立のハンガリー、「EUに居場所ない」とオランダ首相(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35172940.html
オランダ代表、EUROで特別なキャプテンマーク着用へ ノルウェー代表は虹色に(Qoly)
https://qoly.jp/2021/06/23/netherlands-norway-armband-iks-1
ノイアーのキャプテンマーク問題、UEFAが「正しい」と評価(kicker)
https://kicker.town/deutschland/2021/06/162562.html
LGBT擁護に立ち上がったルクセンブルク首相「同性愛は『選んで』なるものではない」(ニューズウィーク日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/lgbt-18.php