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「変化は必ず起きます」「心を強く持ってください」ニュージーランド国会で同性婚賛成の名スピーチをしたモーリス・ウィリアムソン元議員が日本の私たちにメッセージ
先月、与党国会議員から様々な差別発言が出たのち、モーリス・ウィリアムソン氏がニュージーランド国会で同性婚賛成スピーチをした動画が再び注目され、再生回数が1200万回近くに達し、モーリス・ウィリアムソン氏を日本からフォローする人も爆増し、ご本人が「日本の報道機関の取材を希望しています。 ここニュージーランドの同性婚法が私たちの社会に害を及ぼすことはなく、影響を受けた人々に大きな喜びをもたらしたことを説明する機会があれば幸いです。 日本のすべての政治家がこのような結果に満足してくれることを願っています。 本当に明らかです」と日本語でツイートしたことを受けて、TBSとBuzzFeed Japanがモーリス・ウィリアムソン氏にインタビューを行ないました。とても明快で、力強く、LGBTを守る法案が成立を見なかった今の日本のLGBTQコミュニティを勇気づけるようなメッセージが届けられました。
TBSの取材に対し、モーリス・ウィリアムソン氏は、「反対の多くは穏健派からのものでした。この法案が社会にどのような影響をもたらすのか心配している人たちでした。その気持ちはわかりますし、尊重もします。彼らは自分たちの家族に『何か』が起こることを心配していました。そこで、繰り返しになりますが申し上げます。今、私たちがやろうとしていることは、『愛し合う二人の人が結婚できるようにしよう』ただそれだけです。外国に核戦争をしかけるわけでも、農作物を一掃するウイルスをばら撒こうとしているわけでもありません」と語りました。
「反対派は大惨事になると思っていました。これは道徳に反していて、同性愛者の総攻撃が始まり、全員が同性愛者になる。でも何も起きませんでした。この法案で誰かが離婚したり、家族が被害を受けたりすることはありませんでした」
それから、「LGBTQ差別は許されない」と謳う法案の審議に際して自民党議員から「道徳的に認められない」「種の保存に背く」などの問題発言が飛び出したことについて、氏は、このように語りました。
「怒りを覚えるのは、一部の人は同性愛は『選択』だと言うのです。成長する中で、同じ性別の人に魅力を感じ、別の性別の人に魅力を感じなかったら、なぜダメなんでしょうか? ただそのように生まれたというだけでしょ? ぜひ日本にも現代社会の一員であることを示してもらいたいです。早く法案を通して下さい。後悔はしませんから」
また、BuzzFeed Japanのインタビューでは、モーリス・ウィリアムソン氏は、ニュージーランドで(アジア太平洋地域で初めて)同性婚法が採択された当時のことを振り返りながら、こう語ってくれました。
「当時は高齢者層やキリスト教信者を中心に反対が根強くあり、私の選挙区の有権者にも「同性婚を認めることで『普通の結婚』が損なわれるのではないか」などと懸念する人が少なくありませんでした。
そうした声があるたびに、私は必ず「なぜ?」と問い返しました。「もし今日、同性婚が認められたら、40年近く連れ添った私の妻も急に『荷物をまとめて出て行け』と言い始めるのですか?」と。
すると彼らは私を見て、「いや、そんなバカなことあるわけない」と言うわけです。「では、何が問題なんですか?」と改めて問い返すと、「何となく間違っている気がする」と言うのです」
「しかし、時代が進むにつれて訪れる変化は、避けることができません。私たちはただ前に進むだけなのです。
同性婚が議論されていた時も、反対派は「認めたら社会が崩壊する」などと恐ろしい「未来予測」を唱えていました。
もちろん私は、そんなことは起こらないとわかっていました。どれも人々に恐怖を与えることで、何とか言い負かそうとしていただけなんです。
法案が採択されて8年経ちましたが、こうした「未来予測」は何も現実になっていません。やっぱり同性婚を廃止するべきだという議論が起きたこともありません。
愛する人と結婚できるようになる人が増えただけで、それ以外の人には変わらぬ毎日が続いています。私たちはもう前に進んだのです」
「つい先日も、当時、同性婚に反対票を投じた議員が、31年間の議員生活を終える引退スピーチで、「私は間違っていた」と正式にLGBTQコミュニティに謝罪をしました。
彼は数年前に自分の長男がゲイだと知り、法案を提出した議員に向けて「私の息子をはじめ、何千人ものニュージーランド国民の生活を改善してくれた、そのリーダーシップに敬意を表したい」と語りました。
ほかにも複数の議員が、当時の決断は間違いだったと認め、謝罪しています。
しかし、当時から多くの議員が裏では「本当は同性婚を認めるべきだと思っているんだけど、議席を失いたくない」と言っていたんです」
「私も同性婚への賛成を表明した際には、支持者から「次の選挙では絶対に落選するぞ」「お前はもう終わりだ」と脅されました。しかし実際には、次の選挙で私の得票率は上がりました。
選挙では、国の経済や教育、気候危機、外交問題など、多くの重要な課題が争点となります。
有権者が何百票と持っていて、課題ごとに個別に投票することができるなら別ですが、実際には自分の生活を大きく左右する重要な政策をもとに投票先を決めることになります。
同性婚は当事者以外の人の生活を変えるものではない。同性婚に反対はしても、それだけを理由に投票先を決める人はいないのです。
なので日本の政治家に伝えたいのは、自分の議席を守るためという理由で反対しているのであれば、それは杞憂だということです。
そして、政治家の責務とは、社会全体のための決断を重ねていくことです。「世論の51%がこう考えているから、自分もこうしよう」と動くことではありません。
だから日本の議員には、政治家の仕事はマジョリティの代弁者になることではない。正しいことをすることだと伝えたいです」
また、「日本では、与党の国会議員が「LGBTは種の保存に反する」という趣旨の発言をして、強い批判を浴びました。もし今、ニュージーランド議会で同様の発言をする議員がいたとしたら、何が起きるでしょうか?」との質問に対し、氏は「もう間違いなく、その議員の政治生命は終わるでしょうね。所属政党に辞任を迫られるか、そんな恐竜時代のような発言をする議員なんてと、次の選挙で確実に落選するでしょう」と答えました。
「でもそれ以前に、そんな発言をする議員が出てくること自体が、考えにくいです。メディアで批判され、馬鹿げていると散々笑われることがわかっているので、そんなバカなことをする議員はいないと思います」
「まず彼の発言が間違っているのは、まるで同性愛が選択できるものであるかのような前提を示唆していることです。
様々な科学的根拠を参照してみても、異性を愛する人も、同性を愛する人もみな、性的指向は生れながらに決まっているものです。「そういう気分だから今週末はゲイになろう」なんてものではありません。
かつて私も同様の議論をしたことがあって、異性愛の人に対して「あなたは今から同性と愛し合えと言われたらできますか?」と聞きました。すると彼は「そんなこと想像もできない」と答えました。
私が「同性愛者の人も、異性愛について全く同じように感じていますよ」と答えたら、相手は沈黙していました。
「種の保存に反する」と発言した議員の人に言いたいのは、確かに同性同士で子どもを産むことはできないかもしれません。でもそれは、同性婚を禁じても認めても同じことです。「同性婚が禁止されているから、じゃあ今日から異性愛者になろう」と選択できるわけではありません。
あなたがしていることは、当事者を陰に追いやり、閉じ込め、蓋をしているだけです。かつてアメリカなどでは、同性愛を「治療」するという考えもありましたが、それも間違っていたと証明されています。
一方で、同性婚が認められたことによって、結婚し、子どもを養子に迎え、素敵な家族を築くことができたゲイカップルは数多く存在します。それこそ素晴らしいことではないですか?」
最後に、同性婚を求めて声を上げている日本の人々に向けて、氏は「私が言えることは、いずれ変化は起きるということです」と語りました。
「ありえないことを恐れるバカな政治家のせいで今回は実現できなかったとしても、変化は必ず起きます」
「なので、心を強く持ってください。愛するパートナーと結婚できることがどれだけ喜ばしいものか、私は理解しています」
「若い世代が議会を掌握することができるようになれば、必ず変化は起きます。訪れるべき変化を避け続けることはできないのですから」
本国で8年も前に同性婚を実現させ、今は議員から退いているモーリス・ウィリアムソン氏が、こうして日本のLGBTQのために、熱い、素晴らしいメッセージを届けてくれたことには感謝しかありません。アライの鑑ですね。
「いずれ変化は起きる」という確信、信念を持って、氏のように、「同性愛者の権利を認めたら世の中が同性愛者ばかりになって社会が崩壊する」「トランスジェンダーの権利を認めたら『今日から私は女だ』と言って女性用トイレに男性が入ってくる」などといった無知・偏見に基づく「でたらめ」を言う人に対して毅然と「それは違う」と反論できるアライの方が日本中に増えたら、それこそが「変化」を起こしていくことにつながるのではないでしょうか。
参考記事:
1000万回再生“同性婚スピーチ”のNZ元議員に聞く(TBS)
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4292867.html
「同性婚を認めて8年、社会は崩壊していません」ニュージーランド元議員が日本の政治家に問いかけること(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/maurice-williamson-interview