NEWS

ハンガリーでLGBTQについて公に語ることを禁じる反LGBTQ法案が可決されました

 ハンガリー国会が、学校やメディアでLGBTQについて話すことを禁じる「反LGBTQ法」を可決しました。既存の「反小児性愛法」を修正したものです。
 先週、アンチLGBTQのビクトル・オルバン大統領率いる政権与党・フィデス党によって国会に提出され、14日には国会の前で数千人による抗議デモが行われ、10万を超える反対の署名が集まりましたが、15日の採決で、圧倒的多数で可決されました。反対した議員は1人しかいませんでした。

 新法は、学校で性の多様性について語ったり描写したりすることや、未成年が見るようなあらゆる広告やメディアにおいてLGBTQのコンテンツを配信することを禁止し、違法とするものです(映画『ボヘミアン・ラプソディ』なども深夜の時間帯しか放送できず、『モダン・ファミリー』のような全編にわたってゲイが登場するドラマは放送禁止になると見られています)
 また、学校で性教育を行なうことを政府から許可された組織のリストが作成されることになりました(政府の検閲が入ることになりました)

 人権団体アムネスティ・インターナショナル・ハンガリーのディレクター、デヴィッド・ヴィグ氏は声明で、「ハンガリーのLGBTQにとって暗黒の日になった…。この新法はLGBTQピープルとアライにさらに深刻なスティグマを与えることになるだろう」と述べました。「いま敵対的な環境に直面している人々を、さらに苛酷な差別にさらすことになるだろう」

 このハンガリーの反LGBTQ法は、ロシアの悪名高い「同性愛プロパガンダ禁止法」になぞらえられます。やはり学校や公の場でLGBTQの権利について語ること(パレードなどを含む)を禁じる抑圧的な法として国際社会から非難を浴び、ソチ五輪開会式を欧米主要国首脳がボイコットする原因となりました。
 
 この反LGBTQ法が成立したことを受けて、ハンガリーで最も歴史あるLGBTQ団体「ハッターソサエティ」は声明で、「この法は明らかに表現の自由や人間の尊厳、平等な扱いを脅かすものです」と語りました。「LGBTQのメンタルヘルスを悪化させ、必要な情報や支援にアクセスすることを妨げます。LGBTQはスティグマや抑圧を受けることなく、平等に尊厳をもって社会の一員として生きる権利があるはずです」
 
 ブダペストのカラーチョニ・ゲルゲイ市長は「この恥ずべき日、反対する人の居場所は国会にはなく、ただ路上にあった」とFacebookにコメントしました。

 反対する議員、アンナ・ドナースは、EUに対して速やかな抗議の行動をとることを求めました。「この法は、ハンガリーだけでなく欧州の民主主義社会の基本的な価値観と相容れないものです。オルバン政権はこの法だけでなく、数々の恥知らずな攻撃をLGBTQへ行なってきました」「私たちはロシアではなく、EUの受容的な事例をもっと必要とします」
 今後、ポーランドと同様、EUがハンガリーに対しても何らかの制裁措置をとっていくのではないかと見られます。

 
 ハンガリーでは2010年に保守派フィデス党(ハンガリー市民同盟)のビクトル・オルバンが大統領になり、LGBTQの権利を抑圧する動きが強まりました。オルバン大統領は「キリスト教徒の家族の価値観」を盾に、「西側諸国の新たなイデオロギー形態に対抗し、イデオロギー的あるいは生物学的な妨害から子どもを守る必要がある」と述べるようなアンチLGBTQの人物です。2011年には首都ブダペストでのプライドパレードが警察によって中止に追い込まれました。昨年5月にはトランスジェンダーやインターセックスの人々が出生証明書の性別を変更することを禁止し、12月には同性カップルの養子縁組を禁止する憲法修正案を可決、国際社会から非難の声が上がっていました。
 
 

参考記事:
Hungary passes chilling anti-LGBT+ law putting the UK’s Section 28 to shame(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2021/06/15/hungary-anti-lgbt-homophobia-propaganda-law-ban-fidesz-viktor-orban-section-28/


 

ジョブレインボー
レインボーグッズ