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歴史あるマラソン大会でノンバイナリー部門が設立へ、全米初

 『COSMOPOLITAN』誌によると、歴史あるマラソン大会「フィラデルフィア・ディスタンス・ラン」(以下PDR)が、今年の秋からノンバイナリー部門を設立することを発表しました。これまで男/女別に分けられてきたマラソン大会(ロードレース)において、アマチュアからエリートまでノンバイナリー部門が設けられたのは全米初。男性・女性・ノンバイナリーの3部門において、それぞれの勝者に同等の賞金が授与されるそうです。主催者は、今回のノンバイナリー部門の設立によって、ランニングコミュニティがジェンダー・インクルージョンの先例となることを期待しています。
 
 
 1978年から2009年まで米国で人気を博したロードレース「PDR」。30年以上にわたり、アマチュアからプロまでの幅広い層に愛されてきました。ハーフマラソンの世界記録がこのレースから7つも誕生しています。
 PDRは2010年に「ロックンロール・フィラデルフィア・ハーフマラソン」としてリブランディングされ、その後も名前と所有権の変更が繰り返され、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年と2021年のレースがキャンセルと発表された後、権利がPDRのもとに戻ってくることになりました。
 この発表を受けてわずか数時間のうちに、「Philadelphia Runner」のオーナーであるロス・マーティンソン氏、「Runhouse」の社長であるライアン・キャラハン氏、そして「Student's Run Philly Style」のエグゼクティブ・ディレクターであるアンディ・クーサー氏というフィラデルフィアのランニングコミュニティのリーダー3人がPDRの新しいディレクターを務めることになりました。3人は、PDRをかつてのようなイベントに復活させるだけでなく、そのコア・バリューに公平性とインクルーシヴィティ(包摂性)を据えることを考えました。
 クーサー氏はまずはじめに、「Students Run Philly Style」のLGBTQ+プログラミング・ディレクターであるC.C.テレズ氏に、LGBTQ+のアスリートをより包括的に受け入れるイベントにするためのアイデアを求めました。
 テレズ氏は2013年、LGBTQ+のアスリートに安全で協力的なランニングスペースを提供することを目的としたフィラデルフィアのランニングチーム「Lez Run」を設立した人です。トランスジェンダーやノンバイナリーを自認するアスリートたちが、チームが毎週行なうランニング以外の場所でも歓迎されていると感じてほしいと考え、2018年にテレズ氏と「Lez Run」の役員は、「DVLF’s FundRACE 5k」や「HOPE Nation STOMPS Cancer 5k」などの地元のレースディレクターに連絡を取り、ノンバイナリー部門の設立を依頼しはじめます。いくつかの団体は、ノンバイナリーまたは「性別なし」というカテゴリーを作ることに合意したものの、これらのレースにはエリート部門がありませんでした。さらにテレズ氏は、「Lez Run」を代表して、「ブロード・ストリート・ラン」と「フィラデルフィア・マラソン」といった、フィラデルフィア地域のより大きなレースに問い合わせたのですが、責任者からの返事はなかったそうです。両方のレースを担当するフィラデルフィア市長室の広報担当者は、『ランナーズ・ワールド』に「どちらのイベントも2021年に開催されるかどうかは確認していない」「もしレースが開催された場合は、設備などの問題から今年はノンバイナリー部門の設立は難しいが、将来的に検討する」と語りました。
 クーサー氏から連絡を受けたテレズ氏は、すぐにエリートレベルに至るまでPDRにノンバイナリー部門を導入することを提案。「ノンバイナリー部門がエリートの部に導入されるのは何年も先のことだろうと思っていました。このような変化を目の当たりにするのに苦戦していましたから」
 3人のディレクターは、ノンバイナリー部門の設立は実際はそれほど難しくないと考えていたようです。登録フォームに性別のオプションを追加するのは簡単で、すでにいくつかのスポンサーが新しい部門を支持してくれていたそうです。ディレクターたちは、ノンバイナリー部門についての議論に入るとすぐさま賞金の予算組みをはじめ、たとえスポンサーがつかなかったとしても必ず成功させるという覚悟を持っていたといいます。
 『ランナーズ・ワールド』の取材に応じたキャラハン氏は、「ノンバイナリーコミュニティの包摂は人権であり、レース業界の多くの人々がその意見に同意すると私は信じています」「しかし、ほとんどのレースディレクターやオーガナイザーは『複雑すぎてお手上げだ』なんて言うのです」
 
 2013年、作家で元アスリート、そして初めてノンバイナリー・コミュニティを捉えたドキュメンタリー映画『We Exist: Beyond the Binary』http://weexist.co/のプロデューサーも務めたローレン・ルビン氏は、「ニューヨークシティ・マラソン」のディレクターにノンバイナリー部門の設立を求めましたが、実現しませんでした。「they/them」の代名詞を使用するルビン氏は、2016年に同レースに参加した最初のノンバイナリー・アスリートです。レースに登録する際は男性/女性のカテゴリを選択する必要があり、ルビン氏は、出生時に割り当てられた"女性"として登録することを余儀なくされました。
「平等な賃金やTitle IX(アメリカで公的な高等教育機関における、性別による差別を禁止した法律)の保護など、女性のスポーツには本当に多くの脅威があります。けれど、トランスジェンダーやノンバイナリーの人たちは、このなかに含まれてすらいないのです」
 2021年春、「ニューヨークシティ・マラソン」を担当する「ニューヨーク・ロードランナーズ(NYRR)」は、アスリートのプロフィールの性別選択欄にノンバイナリーを追加し、2021年6月26日からNYRRのレース結果に3部門が表示される予定です。ただしエリート部門のノンバイナリー・アスリートがNYRRの大会で賞金を受け取れるかどうかは未定です。
 
 テレズ氏は、ノンバイナリー部門の設立の必要性について「これはアイデンティティの問題です」と語ります。
「私たちは社会としてジェンダーの規範を作ってきました。もしイベントに参加する際、登録欄にあなたを示すものがなければ、イベントに参加することすらできません。体を動かしたり、何にでも参加できるということも知る機会がなくなってしまうのです」
 プロの中距離ランナーであるニッキー・ヒルツ氏は、最近ノンバイナリーであることをカミングアウトしました。現在は「they/them」と「she/her」の代名詞を使っており、はっきりとしたジェンダー・インクルージョンの必要性を主張しています。ヒルツ氏は、性別を意識させない若者のスポーツ文化に感謝したいと述べました。「グラウンドでは、自分が女の子か男の子かは関係ありませんでした。私は走るのが速かったし、性別に関係なく子どもたちは足の速い子を尊敬するものです」
 テレズ氏とヒルツ氏は、自分らしく競技に参加できないからという理由で、どれだけのノンバイナリーアスリートがスポーツから離れているのかということを改めて考えるよう問いかけました。
 
 「PDR 2021」の登録は4月19日(現地時間)に開始され、ルビン氏は最初の数分で登録を済ませ、その瞬間の重みを振り返りました。
「レースに登録するとき、初めて性別の選択肢にノンバイナリーがあるのを見て、その重大さに驚きました。その日がいつか来ることはわかっていたけど、『ランナー情報を適切に入力する』という、その小さな瞬間の重要性は非常にパワフルなものでした」
 LGBTQ+コミュニティにとって記念碑的な意義を持つ「PDR 2021」は、2021年9月19日(現地時間)に開催される予定です。レースディレクターは、すべての性別のアスリートがこの歴史的なイベントへの登録を検討することを望んでいるそうです。




 なお、この記事を掲載した『COSMOPOLITAN』誌では、PRIDE MONTH特集を展開しています。以下の記事もぜひご覧ください。
 
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参考記事:
全米初!歴史あるマラソン大会が「ノンバイナリー部門」を設立(COSMOPOLITAN)
https://www.cosmopolitan.com/jp/trends/trend-news/a36612286/philadelphia-distance-run-nonbinary-division/#:~:text=%E5%A4%9A%E6%A7%98%E3%81%AA%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%84%E3%82%BB%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3,%E8%A8%AD%E7%AB%8B%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%80%82

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