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「差別は許されない」と記すLGBT法修正案をめぐる自民党内の会議が紛糾、「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」などの差別発言も
先日のLGBTQ議連の話し合いで基本理念に「差別は許されない」と記すことで与野党合意をみたLGBT法修正案について19日、自民党内で会議が開かれ、元拉致問題担当相の山谷えり子議員が、性自認をめぐって「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを獲るとか、ばかげたことがいろいろ起きている」などと発言し、批判を浴びています。
続いて20日に開かれた党本部での会合では、異論が相次ぎ、法案に反対する議員が大勢を占め、了承が先送りされました。このとき、「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」といった深刻な差別発言があったことから、さらに非難の声が高まっています。
19日午後、山谷えり子議員の「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを獲るとか、ばかげたことがいろいろ起きている」といったトランスジェンダーへの誤った認識に基づく発言があったことが報じられると、多方面から批判の声が噴出しました。
(なお、トランス女子の女子スポーツへの参加については、ぜひこちらの記事をお読みください)
「当事者の実態を把握せず、国会議員がこの発言。性自認による差別を容認するというのでしょうか」
「国会議員としてあるまじき発言です。このような偏見にトランスジェンダー当事者は日々苦しんでいます」
「まず最低限、当事者の実態を見てから発言してほしい、それを無視して極端なデマを拡散させることは非常に悪質」
TBSのニュースによると、20日の党本部での会議では、性的指向・性自認に関する特命委員会の稲田朋美委員長が「日本がちゃんと多様性を認める、そして寛容な社会を作っていく」と述べ、与野党合意をみた案を審議にかけました。しかし、出席した議員の中からは「法を盾に裁判が乱発する」とする意見が相次いだほか、「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」などの声も上がり、法案に反対する議員が大勢を占めたということです。法案の了承は見送られ、来週、改めて法案審査されることになりました。
(【追記】毎日新聞の取材でも、「LGBTは種の保存を考えたら望ましくない」という趣旨の発言が出席議員からあったことを確認。法案に賛成するある議員は「あまりに感情的な反対意見ばかりで聞くに耐えなかった」と話したそうです)
どの議員さんかはわかりませんが、杉田水脈衆議院議員の「LGBTには"生産性"がない」発言や、足立区白石区議の「LやGばかりになったら足立区が滅びる」発言と同質の差別発言があったことが報じられると、再び、批判の声が噴出しました。
「ひどくて涙出た…。性的マイノリティが受ける差別は「不条理なこと」じゃないんですか? 種の保存とかいう概念の犠牲になれば満足ですか? 差別をやめるのはそんなに嫌ですか?」
「これを「差別」と言わずに、何を「差別」と言うのか。しかも与党の国会議員。どこが「差別のない寛容な国」だよ」
「これだけでオリンピックを返上しなければいけないのでは? だって政府与党の代議士たちの見解なんでしょ?」
などなど…(本当にたくさんの声が上がっています)
基本理念に「差別は許されない」と記す修正案だけでこのように紛糾したことや、そもそもの理解増進法案の趣旨に対し、ロバート・キャンベルさん、三橋順子さん、田亀源五郎さんら有識者の方たちからも批判の声が上がりました。
そして20日の深夜24時頃、差別発言の重大さ・深刻さに鑑み、松岡宗嗣さん(一般社団法人fair代表理事)、長村さと子さん(一般社団法人こどまっぷ代表理事)、畑野とまとさん(トランスジェンダー活動家)ら差別禁止法の実現を目指してきたコミュニティ有志の方たちが、発言の撤回と謝罪を求める署名を立ち上げ、2時間で5000人を超える方々が賛同し、「発言の撤回と謝罪」がTwitterのトレンドとなりました。
LGBTQコミュニティの方もアライの方も、本当にたくさんの方が、この署名への賛同を呼びかけています。杉田水脈議員の「生産性がない」発言や、白石区議の「足立区が滅ぶ」発言の時のムーブメントに続く、大きなPRIDEのうねりが始まったのを感じさせます。署名が何万、何十万と集まれば、きっと差別発言した議員の方たちも見方を改め、与党内のスタンスも変わってくるのではないでしょうか。
今国会ではない(理解増進法ではない)かもしれませんが、一日も早く、世界80ヵ国で認められているようなLGBT差別禁止法と言える、実効性を持った法律ができることを期待します。
参考記事:
自民・山谷氏「ばかげたこと起きている」 性自認めぐり(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP5M52GTP5MUTFK004.html
自民・山谷氏「ばかげたこと」 LGBT議論巡り(共同通信)
https://this.kiji.is/767723106316271616?c=39546741839462401
LGBT差別解消やゆ=自民・山谷氏(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021051901054&g=pol
「いろんな副作用も」LGBT理解増進法案 自民部会で紛糾 了承見送り(TBS)
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4272640.html
【ノーカット】山谷えり子議員コメント LGBT理解増進法案に慎重な意見(TBS)
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4272613.html
LGBT法案了承見送り 自民内で慎重意見(日テレ)
https://www.news24.jp/articles/2021/05/20/04875266.html
自民部会で反対論続出 “LGBT法案”了承されず(テレ朝)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000216656.html
「LGBT法案」了承見送り 自民内で慎重論(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/184924