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電通「LGBTQ+調査2020」の結果が発表され、同性婚への賛成が82.2%に上った一方、50代男性で反対が多い傾向が明らかになりました
3年ごとにLGBTQの人口割合やLGBTQに関する意識を調査してきた電通が8日、最新の調査結果を発表し、人口割合は3年前と変わらず8.9%、同性婚に賛成する人は82.2%と、3年前より3.8ポイント上昇したことが明らかになりました。
電通は2012年、2015年、2018年と3年ごとにLGBTQの人口割合やLGBTQに関する意識を調査してきており、今回が4回目となります。今回の調査は2020年12月、インターネット上で行なわれました。全国20~59歳の6万人を対象に事前調査を実施し、その中から6240人を対象に本調査を実施しています。調査名を「LGBT調査」から「LGBTQ+調査」とし、多様なジェンダー、セクシュアリティの内訳や、シスジェンダー・ストレートのLGBTQに対する意識についても詳細な分析を行なっています。
まず、「日本のLGBTQは人口の何%か」に関して最も頻繁に参照されてきたLGBTQ人口割合ですが、2012年は5.2%、2015年は7.6%、2018年は8.9%と毎回少しずつ増えていましたが、今回、3年前と全く変わらず8.9%となりました。内訳は以下の通りです。
<性自認について>
トランスジェンダー0.64%
Xジェンダー1.20%
性自認のクエスチョニング0.62%
<性的指向>
ゲイ1.94%
レズビアン1.33%
バイセクシュアル+パンセクシュアル2.94%
アセクシュアル・アロマンティック0.81%
性的指向のクエスチョニング1.63%
こうした当事者のうち、70.2%は依然として「カミングアウトしづらい」と回答しており、前回の69.5%とあまり変わらない結果になりました(世間のLGBTQへの態度(寛容度)があまり変わっていないと感じている方が多いのではないかと考えられます)。一方、住んでいる自治体で同性パートナーシップ証明制度が認められている場合、「カミングアウトしづらい」との回答が47.7%と劇的に減っていることも明らかになりました。
それから、LGBTQに関する意識調査です。
「LGBT」という言葉の認知度は、前回から11.6ポイント上昇して80.1%に上り、広く浸透していることが明らかになった一方、Xジェンダーやアセクシュアル・アロマンティックなどについては約8割の人が言葉自体も聞いたことがないと回答していることがわかりました。
同性婚の法制化については、「賛成」が31.0%、「どちらかといえば賛成」が51.2%で、計82.2%が賛成と回答、前回から3.8ポイント上昇しました(82.2%が同性婚に賛成しているというのは世界的に見ても高い数字です)
回答者の内訳を見ると、シスジェンダー・ストレート5685人のうち、307人(5.7%)の「生理的嫌悪があり、社会への影響を気にする層」を除くすべての層において、過半数が同性婚に賛成しています。同性愛者が出てくる映画やドラマ、ドキュメンタリーを観たり、当事者によるSNSの発信を通じて意識が変わった・理解が深まったといった意見がありました。
反対と回答した層は、男性50代の正社員(管理職、総合職)比率が高く、「LGBTQ+が増えると日本の少子化につながる」「普通に異性と結婚して、子どもを産むのが正しいあり方だと思う」「同性愛は生理的に嫌だと感じてしまう」とする比率が他の層と比較して圧倒的に高いことがわかりました。
学校教育で「性の多様性」について教えるべきかについては、「教えるべき」「できれば教えるべき」と回答した人が88.7%に上りました(こちらもかなり高い数字です)
一方で実際に学校で「教えてもらったことがある」と回答した人は10.4%にとどまりました。
それから、「社会全般において自分の人権が守られているか」という設問については、シスジェンダー・ストレートでは73.4%が「自分の人権が守られていると感じている」と回答したのに対し、LGBTQでは54.8%と大きな開きがあることがわかりました。同性パートナーシップ証明制度が認められている都市に住むLGBTQの場合は「守られていると感じている」との回答が59.8%になっており、5ポイント上昇しています。
LGBTQへの課題意識を問う5つの質問の回答をスコア化し平均点を算出したところ、最もLGBTQへの課題意識が強いのは沖縄県、次いで京都府、山形県となりました。
沖縄県では那覇市や浦添市がいち早くLGBT支援宣言を発し、那覇市で同性パートナーシップ証明制度が実現した際はピンクドット沖縄でゲイカップルの結婚式が行なわれるなどして注目を集め、地元紙の琉球新報や沖縄タイムスもかなりLGBTQ支援に力を入れた記事を発信してきたこと、つい先日は沖縄県で「美ら島 にじいろ宣言」も出されたことなど、他県に比べて支援的な風土になっていることが幸いしていると考えられます。
電通は「100以上の自治体まで広がりをみせているパートナーシップ制度ですが、人権保護や地域の意識改善のためにも一定の効果があると考えられる」と分析しています。
それから、今回の調査では初めて「異性愛者かつシスジェンダー」に該当するマジョリティの人々のLGBTQに対する知識と意識を分析し、いくつかの「層」に分けて論じているのが新しいところです。
LGBTQを知ってはいるものの自分事化できていない「知識ある他人事層」が34.1%と最も多く、課題意識が強く積極的に支援をする「アクティブサポーター層」(アライの方たちです)が29.4%と次に多い結果となりました。
『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで スッキリわかる!』の著者である石田仁先生は、「マイノリティの問題はつねにマジョリティの問題と関連しています。マジョリティ層のどのような人がLGBTQの問題を自分と地続きであると考えて、どういう層の人たちがそうではなく他人事だと考えているかが明らかになっています」「インターネットでは言説が二極化されているように見えることが多いですが、実際はどちらでもない層が多くいます。これは調査の持つ強みです」「マジョリティ層も一枚岩ではないという、素朴だけれども重要な事実を、私たちは再確認する機会を得ました」と語っています。
参考記事:
「LGBT」認知度8割 同性婚法制化賛成も 電通調査(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021040801059
性的少数者7割 「公言は難しい」 電通調査(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210409/ddm/012/040/067000c
同性婚の法制化「賛成」は82.2%、反対派は男性50代が多い傾向に――電通「LGBTQ+調査」(All About News)
https://news.allabout.co.jp/articles/o/28238/
LGBTQ非当事者、「知っているけど自分事化できない」が最多 電通がマジョリティ層を分析(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60741020c5b6a74b3bde325a