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厚労省が、性別欄に男女の選択肢がない履歴書の様式例を作成しました
厚生労働省は、就職活動などで使う「履歴書」について、トランスジェンダーなどの方たちの要望を踏まえ、性別欄に男女の選択肢を設けず、記載を任意とする様式例を作成しました。国として履歴書の様式例を示すのは初めてのことです。
履歴書をめぐっては、これまで日本規格協会が性別欄に男女の選択肢を記載したものをJIS(日本産業規格)の様式例として提示し、市販の履歴書の多くはこの様式例に基づいて作られてきました。しかし、トランスジェンダーの方たちが履歴書記載の性別と外見が異なることを理由に内定を取り消されるなどの不利益を被るケースがあるため、性別欄をなくすことを求める運動が行われ、日本規格協会は昨年7月、様式例自体を公式サイトから削除しました。その後、コクヨが性別欄のない履歴書を発売しています。
厚労省は、これまで推奨してきたJISの様式例がなくなったことで、求職者が、どの履歴書を使えばよいか迷ったり、企業が履歴書やエントリーシートにどんな項目を記載すればよいか判断に支障をきたしたりするおそれもあるとして、今回、国として初めて様式例を作成しました。
様式例では、性別欄にあらかじめ男女の選択肢は入れず「記載は任意」としていて、「未記載とすることも可能です」とも注記しています。
16日午後に開かれた企業や労働組合のメンバーを含めた専門家による分科会で報告されたあと、正式に決定しました。
厚生労働省就労支援室の矢野誇須樹室長補佐は、「女性活躍推進の観点などから、性別欄を削除することは難しいが、性の多様性を考えて任意記載の性別欄を作成した。今後、性別欄に記載しなかった求職者が不利益を被ることがないよう、事業者には周知徹底を行っていきたい」と話しています。
厚労省は全国の労働局を通じて今回の様式例を企業に周知します。法的拘束力はなく、様式例の通りにするかどうかは企業が判断できます。
厚生労働省が示した履歴書の様式例について、性別欄の削除を求めて署名活動などを行なってきたNPO法人「POSSE」の佐藤学さんは、「性別欄を任意回答としたことについては『一歩前進』」と評価しています。しかし、任意であっても性別欄が残ったことは「当事者にとっては苦痛」「強制的なカミングアウトにつながる」としています。書かない場合、記入を求められることもあり、性的マイノリティであることがわかるような記載をした場合にも不利益が生じるおそれがあります。その情報を複数の採用担当者、入社後も上司ら不特定多数の人が見られる状況があればアウティングになるおそれもあります。そうしたことから「性別自体を問わないようにするため、引き続き国や企業に働きかけていきたい」と語っています。
また、性別欄の削除を求める運動を行なってきたトランスジェンダー活動家の遠藤まめたさんは、Twitterで「性別を書かせることは『当たり前ではない』という国の見解が示された今、それでもあえて採用時に性別を尋ねる合理的な理由があるのか、ということが今後それぞれの企業に問われていく」とコメントしています。
参考記事:
履歴書の性別欄に男女の選択肢設けず 厚労省が案作成(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210416/k10012977991000.html
履歴書の性別、任意記載(共同通信)
https://this.kiji.is/755733984036651008?c=39546741839462401
履歴書の性別、記載任意(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/p?id=20210416203627-0037590626
履歴書の性別記入を任意に、厚労省が様式例を提示(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA168KL0W1A410C2000000/
履歴書の性別、任意記載に 厚労省が様式例 「未記載可」と付記(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210416/k00/00m/040/327000c
履歴書、男女の選択肢なくす様式 厚労省「記載は任意」(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP4J6F92P4JULFA017.html