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ドイツのLGBTQ俳優185人が一斉カミングアウトし、映画・テレビ・演劇業界の変革を求めました
ドイツで185人のLGBTQ俳優が一斉にカムアウトし、映画・テレビ・演劇業界の変革を求めました。
2月5日、『Sueddeutsche Zeitung(南ドイツ新聞)』紙上に185人のLGBTQの俳優が顔写真と名前を掲載して一斉にカムアウトし、共同で#ActOutのマニフェストを発表しました。長年カミングアウトを抑圧してきた映画・テレビ・演劇業界が、その姿勢を改め、共に社会の多様性を反映させるために立ち上がることを呼びかけました。
(なお、ドイツ在住のゲイの俳優の方が指摘していましたが、AFPの記事では「LGBTの登場人物を増やすよう呼び掛けた」とありますが、新聞記事もマニフェストにもそのような表現はなく、「LGBTQ俳優がLGBTQの役を増やせと言っている」という誤解を生む可能性が懸念されます)
以下、#ActOutのマニフェストの全文訳をお伝えします。
「私たちはどこにでもいます。
私たちはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、ノンバイナリーと自認しています。
今まで、私たちは職を失う恐れなしにプライベートの生活をオープンに話すことができませんでした。みんな、しょっちゅう、マネージャーやエージェント、同僚、プロデューサー、エディター、ディレクターなどからSOGIについて口を閉ざすように警告されてきたのです。キャリアを危険にさらすことを避けるために。
私たちは一致団結してこれを終わらせようとしています!
私たちは可視化を達成するため、共同で公的なステートメントを出すことに決めました。
勇敢な何人かは、カミングアウトのリスクをとってきました。そして私たちは今、それをしようと思います。私たちのことはだいたい皆さん知っていることでしょう、知らないにしても名前を聞いたことくらいはあると思いますが、そんな私たちがカミングアウトの新参者となるのです。私たちのある者は同性愛が違法だった時代に育ち、ある者はエリオット・ペイジよりも若いです。ある者は村で育ち、ある者は大都市で育ちました。有色人種だったり、移民だったり、障がいを持っている者もいます。私たちは同質な集団ではありません。
もし、性的指向や性自認など私たちのアイデンティティのある面を公にしたら、私たちは突然、あるキャラクターや関係性を演じる能力を失うだろうと言われてきました。まるで私生活でのありようが、役柄を説得力を持って具現化する能力を無効にするだろうと言わんばかりに。
この事実からは何も生まれません。
私たちは演じる者です。私たちが演じるキャラクターそのものである必要はありません。私たちはまるで……それが私たちの職の真髄そのものです。
私たちは妻を、父親を、恋人を、政治家を、ヒーローを、嫌な奴を演じます。そして時には、決してその考えには共感できないようなキャラクターを演じます。誰も殺してないのに殺人者を演じられるのはそういう理由です。私たちは医学の知識なしに人の命を救うことができます。私たちは自分とは違う性的指向の人物を演じることができます。私たちの職業の性質ゆえに、実際に私たちがずっとやってきたことです。
さらに、ここ数年、映画やテレビシリーズにおける慣例が拡張し、変化してきているのを見てきています。中産階級の白人の異性愛者ばかりが登場し、祝福されるのではないストーリーがより多く見られるようになりました。ドイツにおいて、多様性が生きた社会的現実になってきました。しかし、悲しいことに、まだまだ私たちの文化的な物語がほとんど反映されているわけではありません。
私たちの社会は、ずっと前から用意ができていました。視聴者のみなさんもそうです。
映画・テレビ・演劇産業は、この多様な社会を反映させるために一緒になって立ち上がるべきです。
私たちは自由にオープンに働き、生きることへの責任がある。私たちは障害者差別、年齢差別、ユダヤ人差別、階級差別、人種差別ほかあらゆる差別によるステレオタイピングと周縁化に直面している人たちと連帯します。私たちはまだ一歩を踏み出せていないようなそうした仲間たちと繋がっていると感じています。
私たちの産業の枠を越えて、あらゆる人々に支援してほしいと願います。これはそういう連帯のアクトでもあるのです。
私たちは、これから私たちが新たに物語ることができるストーリーや新たに演じることができるキャラクターを楽しみにしています。
世界は変わろうとしているし、私たちはみんなそこに参加しているのです!」
『南ドイツ新聞』の記事では、さらに、6人の俳優へのインタビューが掲載されました。
ドイツで最も長く続くテレビドラマ『Tatort(タートオルト)』や映画映画『Home for the Weekend』に出演してきたことで有名なエーファ・メクバッハは、「リアリティは、現実世界そのままでスクリーンに多様に反映させるべきです」と語りました。「社会はディシジョンメーカーが考えるよりもっと広く、もっと多様です」
黒人の舞台俳優ラミン・リロイ・ギバは、「もちろん私は白人や異性愛者が書いたキャラクターを演じたいです。でも、同時に、こう尋ねたいです:黒人でクィアのキャラクターが物語の中心にいる作品が今まであったでしょうか?」
ベルリン在住のKawachiさんというライターの方によると、レズビアンの俳優(たぶんエーファ・メクバッハ)が『Tatort』に出演する際、あまりチェックのフランネルシャツを着ないように、と注意されたとか(チェックのネルシャツは、同性愛嫌悪者がレズビアンに抱くステレオタイプの象徴なんだそう)、ロケ現場に同性パートナーを連れて行くのはOKでも、世間に広くカミングアウトするなら、もっと有名になってからじゃないと、と言われた、といったことが書かれていたそうです。「でもカミングアウトせず、自分の存在を見えないようにし続けていたら、クイア嫌悪が横行する、自分が生きていたくない世界に貢献することになってしまうと思った」
一人ひとりの勇気あるカミングアウトは、尊くもあり、業界や社会を変える力にもなってきたことでしょうが、ホモフォビア・トランスフォビアが強い業界の圧力に負けてしまうことも多々あったと思います(ホン・ソクチョンもカミングアウト後、テレビから干されていました)。こうして大勢で一斉にカムアウトすることにより、業界や社会に大きなインパクトを与え、圧力に負けない力を持つこともできるのではないでしょうか。ドイツの映画・テレビ・演劇産業が今後どう変わっていくか、世界が注目しています。
参考記事:
185 German Actors Come Out at Once to Demand LGBTQ+ Diversity(Advocate)
https://www.advocate.com/film/2021/2/05/185-german-actors-come-out-once-demand-lgbtq-diversity
独LGBT俳優185人が一斉カミングアウト、多様性の促進訴え(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3330504